番外5. 王太子からの贈り物(間諜視点)
パタンと閉まる寝室の扉を見つめながら、俺は恥ずかしさに顔が赤くなっているのを感じながら大きくため息を吐いた。
口元の布のことなんか、気づかないでくれよ。自分で自分が気持ち悪くなってきたじゃないか。
ここまでくると、無条件に自分に好意を寄せてくれている彼女につけ込んで、俺は彼女に無理をさせているんじゃないだろうかとさえ思えてくる。
“魅力的で素敵な人”だと! そんな言葉は、社交界にいる貴公子や王太子のためにあるものだろう。
「彼女はお前にべた惚れだな」
突然後ろから声がしたのでがばっと振り返ると、ベッドの上にいる男がこちらを向いていた。王太子の身代わりを引き受けていたリュークだ。
「お、おお、起きていたのか!?」
嘘だろ、どこから話を聞かれたんだ……レリアが俺を褒めてくれていたところか?
リュークは静かに答えた。
「目が覚めたら、お前たちが抱き合っていた。起きるタイミングなどなかった」
最初からじゃないか……! 恥ずかしくて死んでしまうかもしれない。項垂れた俺に、リュークは言った。
「そう気を落とすな。俺は誰にも話さないし、他人の色恋には興味がない」
全然慰めになっていない。
彼はベッドから出て棚の上に置いていた自分の服を着始めた。ちらと見えた彼の身体はやはり引き締まっていた。はあ。
その視線に気づいたのか、リュークは「俺の名誉のために言わせてもらうが」と言った。
「俺は女性を強引にベッドに連れ込んだりしない。そんなことのために身体を鍛えているわけではないからな」
ぐうの音も出ない。
「……悪かったよ、あんな言い方をして」
小さい声で謝ると、リュークは服を着ながら言った。
「妻を心配するのは当然だ。まあ、侍女であるなら寝室に入るのは仕方ないと思うがな……それで、事はうまくいったのか? 殿下は無事であろうな、状況を聞きたい」
そうだった。俺は彼に今回のあらましを伝えた。王太子の作戦通り令嬢たちを捕らえることができたことを聞くと、リュークはほっとしたように笑みを浮かべた。
「……それでは殿下は今、ランベルト候と会っているのだな」
「ああそうだ。親衛隊以外にも護衛が二人、謁見の間にいる。俺はこれから牢を見てくる」
リュークはふむと頷き、これからどうしようかと考えているようだった。俺は言った。
「王太子からあんたは寝かせてやれって言われてる。身代わりを務めたんだ、ゆっくり休めよ」
しかしリュークは首を振った。
「私は薬のおかげでじゅうぶん寝た。殿下はお休みになられていないのだろう……謁見の間に行って様子を見る」
忠義を尽くす男だな。俺は肩をすくめて「好きにするがいいさ」と言うと天井裏に戻ろうとした――そのときリュークが突然「ちょっと待て」と強い力で俺の腕を掴んで引き戻したので、勢い余って俺はしりもちをついてしまった。
「いって……なんだよ、急に」
「その、さっきの説明を聞いて気になったんだが、殿下はその間諜の女を本気で雇うおつもりなのか?」
リュークは真面目な顔でこちらを見ている。俺は強く打ったしりをさすりながら立ち上がった。
「……わからない、でも王太子はずいぶん気に入っていた。薬を調合できるし変装もできる、おまけに動物並みの耳を持ってるから、多分雇うんじゃないか」
俺がそう答えると、リュークはぎゅっと眉を寄せた。
あれ、気に食わないのかな。俺がそう思っていると彼は不満げに言った。
「一度でも殿下に危害を加えようとした者など信用できない。大体ランベルトのような家で雇われる者は素性が知れない。何をするかわからない者をお雇いになるなど……」
俺は苦笑いを浮かべた。俺も前にあそこで働いてたなんて言えないな。
俺は言葉を選びながら言った。
「……間諜やってる人間にちゃんとした素性がある奴なんて代々王族に仕えてるあんたくらいだろ。それに王太子ならちゃんと見極めてから判断するさ」
「そうだと良いが……お前も良く見張ってくれ、頼むぞ」
俺は目を細めて「御意」と言うと、今度こそ天井裏に上がった。
牢はすっかり静まりかえっていた。あれ、騒いでないのかな。
天井から令嬢たちがいる牢の様子を見に行くと、二人とも寝台代わりの板の上で横になって眠っていた。騒ぎ疲れたらしい。
彼女たちのいる独房の前には牢番が立っていたが、少し離れたところには見知った男が腕を組んで立っていた。
いつか俺を宮殿に連れてきた間諜親子の息子の方だ。ええと名前は確かリオルといったな。
俺は彼の横にすっと下り立った。
「ジャンか」
リオルは少しだけ目を見張ったが、俺だとわかると安堵の表情になった。
「二人は眠っているようだな」
「ようやくだ。さっきまでずっとわめきっぱなしだったんだぞ」
リオルはうんざりしたように言った。
だろうな……しかもこの牢だと反響しそうだ。
「何か気になることは?」
「特には。ランベルトの方が父親に会わせろとうるさかった。もう来ているらしいな」
「王太子と謁見中だ。リュークが起きて様子を見にいった」
リオルは頷いてから俺の目をじっと見てきた。な、なんだ。
「昨日の夜一番よく眠れたのはきっとあの男だろうが、一番休んでいないのはお前だろう。まだ殿下から仕事を命じられているのか?」
「あの間諜の女の様子を見ることは許可されてる……二時間眠ってから」
リオルは目を細めた。
「命令には従え。今あの女は父が見ているから大丈夫だ……それにずいぶんとおとなしくしているらしい」
おとなしく? へえ、王太子の言葉を聞いて希望を抱いたんだろうか。うーん、気になるな。二時間も眠ってしまったらその間に王太子が来てしまうぞ。
俺はリオルに「わかった」と答えると、例の女の独房の方へ向かった。
令嬢たちが捕らえられていたところからやや東へ行ったところには、先ほどよりも頑丈な牢が並んでいる。逃げ出す可能性のある者はこちらに収容されるのだ。
例の女は、粘着性のある網は取り除かれていたが手足を鎖でつながれて、石の床の上に座っていた。さるぐつわもかまされたままのようで、独房の壁に寄りかかって虚空を見つめているようだった。
牢の前には牢番が立っており、少し離れたところにはリオルの言っていた通り彼の父ケリュスが彼女の様子を伺っていた。
俺の姿を見ると、彼は灰色の眉をぎゅっと寄せた。
「なぜお前が来た?」
そんな顔しなくたっていいのに。
「王太子殿下から許可はもらってる。彼女の様子が気になるんだ。何か変わったことは?」
「ない。最初は暴れていたが網を取ったらおとなしくなった……殿下はお前に仮眠を取ってから仕事しろとおっしゃらなかったのか」
さすがに長く王太子に仕えているだけあって、よくわかっているな。俺は肩をすくめた。
「二時間寝ろと言われた。でもそんなに眠っていたら、そのうち王太子が来て彼女のさるぐつわを……」
「私の懐には」
ケリュスが低い声で俺の話を遮った。
「私の懐には直伝の強力な眠り薬が入っている。眠れないのであれば私が飲ませてやっても良いのだぞ」
……こういうタイプは苦手だ。
俺は「寝るよ、寝るって」と言って彼から後ずさった。全く、大きなお世話なんだから。
俺が天井裏に上がろうとすると、ケリュスは「待て、ジャン」と引き留めた。
彼はまっすぐな黒い瞳でこちらを見つめた。
「此度の件、お前の勇気ある働きがあったからこそうまくいった。殿下もお喜びだった。私からも礼を言いたい」
俺は布の下で小さく苦笑いを浮かべた。
「危ないところだったけどな。それになんていうか、彼女を捕らえたのは俺の力じゃない。この宮殿の罠を使っただけで……」
「いいや、お前の機転のおかげだ。加えて香の匂いに気づいた功績は大きい。あのまま気づかなかったら皆眠っていたかもしれない。感謝している」
「へへ、仕事をしただけだよ……あ、でもその、そこまで言うなら、少しの仮眠くらい見逃してくれても……」
「そういう話をしているんじゃない」
俺の謙虚な提案を彼はぴしゃりとはねつけられた。まあ、そううまくはいかないか。
俺は今度こそ天井裏に上がり、彼女の牢内を見下ろせるところまで来ると座り込んで腕を組み、目を閉じた。
やれやれ、二時間か。
もちろんそんなに眠っているつもりはない。王太子が来たらあの女が話すのを聞こう。
そう決意して俺は眠りについた。
なにやらわさわさと話し声が聞こえる。なんだ。ぼんやりした頭のまま俺は薄目を開けた。
「ほう、ではやはりあの睡眠薬や香はお前が作ったのか」
あれは……王太子の声?
俺ははっとして天井の下にある穴を見た。鎖に繋がれたまま女の前には、格子を挟んで王太子が立っている。
しまった、寝過ぎた!
「私はイザークの薬師の家の生まれです。薬草の調合は子どものときからやっていました」
女が小さな声で話しているのが聞こえる。よかった、まだ話し始めたばかりらしいぞ。
「ただ貧しい家で兄弟も多かったので、すぐに娼館に売られました。八つのときです」
口が固いのではと心配していたが、案外大丈夫らしいな。
女の話し方は朗々としていて、感情は感じられない。まあ……よくある話だよな。
女は続けた。
「運が良いのか悪いのか、私が売られた先は高級娼館でした。線が細く、ちっぽけだった私はそこで娼婦ではなく、彼女たちのために動く隠密としての教育を受けました。娼婦たちからは睡眠薬や媚薬の類の作り方を探るように頼まれ、あらゆる情報を集めました。護衛や暗殺の技術もそこで身につけました。生きていくためにはどんなこともするつもりだったので……」
女は突然言葉を途切らせた。
どうしたんだろう。女は「殿下、話の途中で失礼ですが」と言った。
「ここの天井裏で何者かが盗み聞きしています。どうにかなりませんか」
……ほんとうに彼女は動物じゃないだろうか、それもねずみかこうもりみたいな。
女の言葉に、王太子はふっと笑って上を見上げてきた。
「下りてこい、ジャン」
こういう風に正体を気づかれてから出ていくのは忍びとしてなんとも情けない。俺は小さくため息を吐いてから、王太子の隣にすっと下りた。
彼女は俺の姿を見て驚いた表情を浮かべた。どうやら夜中に天井裏で対峙した相手だとわかったらしく、すぐにいかにも嫌そうな目でこちらを睨みつけてきた。
勘弁してくれ。
「彼は私の命で動いた。恨むならこの私の方だぞ、ゲルダ」
王太子がそう言うと、女は彼の方を向いて大人しく目を伏せた。
ゲルダというのか、この女。
というか、名前まで吐いたのか。
「実はな、ジャン」
王太子が俺に向かって言った。
「私は彼女と一度会ったことがあるのだ」
「え……?」
なんだって。俺は一瞬頭が真っ白になった。どういうことだ、彼女が王太子の知り合い? 知り合いなのに薬を盛ったというのか? そもそも彼女は隣国イザークにいたと言っていた。それなのにこの国の王太子と知り合いとはどういうことだ。それにここまで万全の態勢を組んで、苦労してこの女を捕らえたんだぞ。
明日隣国の王女と婚姻を結ぶ王太子と……どんな関係だったというんだ。
「ご説明ください」
俺は不審な目を自分の主人に向けた。
「殿下……俺が言うのもなんですが、この宮殿の者たちが殿下のためにどれだけの……」
「わかっている、わかっているとも。そんな目を向けるな」
王太子は苦笑いを浮かべて言った。
「ジャン、おそらくお前が想像しているような関係ではないから安心してくれたまえ。ゲルダ、それからのことを少し話してくれるか」
王太子がそう言ったので、俺はぐっと口を結んで格子の向こうの女を見た。女――ゲルダは小さく頷くと続きを話し始めた。
「高級娼館で隠密として生きていたとき、一番の売れっ子だった高級娼婦から暗殺を頼まれました。その標的がディートリンデ王女殿下でした」
ディートリンデ王女の暗殺!? この女、そんなことまで企んでいたのか。
ゲルダは目を伏せたまま続けた。
「事前の調べでは宮殿の警備は手薄のはずでしたが、私が侵入した日に限って急遽厳重な態勢になっていました。ふとした油断から私は捕らえられ、王女殿下の前に突き出されたところに……あなた様……アクセル・リンドレット・オジェ・レスダン殿下がおられました」
ああ、そういうことか。
俺は、以前レリアが、“王太子は王女に会いに隣国によく出向いている”という話をしていたのを思い出した。
王太子は公にはせず内密にやってきたのだから、宮殿の警備が突然厳しくなっていたのだろう。
ゲルダは続けた。
「王族への暗殺未遂ですから、私はその場で切り殺される覚悟でした。でも、周りにいた親衛隊たちが私に刃を向けたとき、王女殿下がそれを止めてくださって……それをアクセル殿下が擁護してくださいました。断罪すべきは私ではなく、黒幕の高級娼婦だと」
「聞いたか、ジャン。私の行いは正しかろう?」
王太子は鼻高々に言った。
「ゲルダはただ命令されたにすぎぬ、それよりも早く黒幕を突き止めた方が良いと言ったのだ」
わかった、わかった。やましい関係はないって言いたいんだろ。
俺はひとまず小さく頷いてみせた。
「安心しました。危うく信用できる雇い主を失いかけたかと思いました」
「……お前、だんだん皮肉が妻に似てきたのではないか。悪い影響を受けるでないぞ」
失礼な、悪い影響ってなんだ。
「軽口を叩けるのは信頼している証でしょう、ご安心ください」
「ふん、なんとでも言え……それで、あれからどうしたのだ、ゲルダ。なぜランベルトに仕えていた」
ゲルダは一瞬だけ顔を上げて、心苦しそうな表情になったが、すぐに下を向いて言った。
「……殿下たちのとりなしのおかげで死は免れましたが、国外への追放の命を受けました。殿下がレスダンにも隠密として生きる者がいるとおっしゃっていたので、私はこの国へ参りました。そして隠密を探していたランベルト侯爵を見つけました」
もちろん俺はこのゲルダという女を知らない。ということは、俺があの家の忍びを辞めた頃のことだろう。
ゲルダは続けた。
「彼は人の弱味を握ることに専念しており暗殺は要求しませんでした。それで私は侯爵のもとで働くことにいたしました」
へえ、俺と同じ理由だったのか。
「確かに、ランベルト侯は流血は好まんからな」
王太子はそれから少し声色を変えた。
「だがお前が単にランベルトの命令だからと宮殿に侵入したわけはなかろう。イザークでの恩も忘れたとは言わせぬ。断ることもできたはずだ。ほんとうの理由はなんだ」
その問い方は冷たく、鋭い刃を突きつけられているようだった。ゲルダの肩がびくりと震えたのが見えた。
王太子は突然こういう雰囲気を作り出すのがうまい。彼が持つ特技の一つなのだろう。
さすが王太子だなあ。
「……こ、怖かったからです」
ゲルダは下を向いたまま少し震えた声で答えた。
「わ、私は、イザークからディートリンデ王女がこの国に来ることが怖かったんです。イザークから追放されて、この国でやっと生きていく術を見つけたのに、王女がこの国に輿入れしたらと思うと夜も眠れませんでした。彼女が来なければ良いのにと……そう願っていました」
王太子はそれをきくと、すっと目を細めた。ああ、これは怒っているときの目だ、と俺は思った。
「なるほど。それでランベルト侯の話に協力したというのだな。それが私に対する裏切りだとは思わなかったのか」
「殿下の意に沿わぬことだとはわかっておりました。で、ですが……!」
ゲルダはばっと顔を上げた。
「もしランベルト侯爵親子に協力するのが私でなければーーもし薬に無知な者が睡眠薬を用意することになれば、アクセル殿下のお命が危なかったはず! 今回私が使った睡眠薬は強力ですが、決して身体に害のない量と配慮して調合し……」
「言い訳は良い」
王太子がぴしゃりと言ったのに、ゲルダははっと顔を強張らせて下を向いた。
王太子は囚人の頭を見下ろしながら冷たい声で言った。
「お前が保身のために恩人に薬を盛って罠に嵌めようとする人間であることはわかった。お前への処分は後に知らせることにする。それまでここでしばらく悔いているがいい……行くぞ、ジャン」
「え、あ、はい」
あれ、天井から行くつもりだったのに。
俺は王太子の後に従いながらちらりと牢の方を振り返る。
ゲルダは先ほどと同じ姿勢でぎゅっと口を結び、俯いたままのようだった。
王太子は少し離れたところに立っていたあのケリュスに「引き続き見張りを頼む」と声をかけてから階段を上っていく。その先の出入口にいた牢番に「面会は済んだ」と言い、彼が牢の方へ下りていくのを見届ける。
そして辺りに誰もいないことを確認すると、主人はこちらを振り返った。
「ジャン、お前はどう思う」
え……俺? 今俺にきいたよな。
「相手を間違えてますよ。殿下には側近や国王という良き相談相手がおりますでしょう」
「王族としての判断は求めておらぬ。間諜であるお前の意見が聞きたいのだ」
王太子は至極真面目な顔をしている。本気なのか?
「俺以外にも信頼できる間諜を雇っておられることをお忘れですか」
王太子は「連中はだめだ」と首を振った。
「皆私に仕えて長い。お前は一時でもランベルトの家にいたと言っていただろう。それにお前は外から来た人間で、私への忠誠心が他の連中と比べてほとんどないに等しい」
げ、ばれていたのか。どうしてクビにならないんだろう。
「……俺の意見を聞いてどうするのですか、何の参考にもならないと思いますが」
「いいや、大いに参考にさせてもらう」
王太子は青くきれいな目で俺をまっすぐに見た。
「聞け、ジャン。先ほども言ったように、私はゲルダを投獄したり追放したりするのには惜しいと思っている。技術を買っているのもあるがそれだけではない。ジャン……私は、彼女があの状況で自分の身を守るためにランベルトの策に乗ったことも仕方ないとも思っているのだ」
へえ……意外だ。恩だなんだと言ってたから、もう絶対に牢から出さないのかと思ってた。
彼の言葉に、俺はどこか嬉しさを感じていた。それはおそらく彼女に自分を重ねていたからだろう。あの網に絡まっていたのはかつてランベルトに仕えていた俺だったかもしれないのだ。
まあ、俺ならそんな依頼を受ける前に国外に逃亡するけど。
「お前に聞きたいのは……その、もし私が雇ったとして、今後彼女は裏切ると思うか?」
……そんなことを俺に聞かれても困る。占い師や預言者じゃないのに俺にわかるわけないだろ。
しかし、王太子はいつになく頼るような目で俺を見ている。自信のある光が弱まっているように見えた。これじゃ何かしら答えないわけにはいかないか。
俺は少し考えてから言った。
「保証はできません。ですが、隠密や間諜といった人間には基本的に雇い主が絶対的な存在です。俺なんかは金さえ積まれればどんな人間にも従いました。それに……これは俺の見解ですが、この国の中枢を担う人間を敵に回すのにメリットはありません。よほどのことがない限り、心配はないかと」
ギロー伯爵令嬢の件を棚に上げてどの口が言うかと自分につっこむのはなしだ。それに俺はあの娘の思惑を邪魔しただけであって、命令に従わなかったわけじゃない。
王太子は「そうか……そういうものか」と呟いた。
「ただし」
俺は王太子にしっかりと目を合わせると、言い聞かせるように言った。
「あのゲルダという女とわだかまりがあるのは、殿下というよりはむしろディートリンデ王女でしょう。でしたら彼女に許可なく雇うことは賢明とは思えません。ディートリンデ様は明日この国の妃殿下になられます。知る権利、判断する権利は彼女にも十分あります」
ディートリンデ王女はゲルダに殺されかけたのだ。それが原因でイザークからの国外追放を命じたのだから、輿入れしてくる身とはいえ彼女にもレスダン王家に仕える間諜を見定めることはできるはずだ。
俺の意見に、王太子は目を丸くして聞いていたが、瞳を揺らして「なるほど、その通りだ」と言った。
「ディートリンデの意見を聞かずして彼女を雇うことなどできまい……大事なことを忘れるところであった」
わかってくれたか。俺は少しほっとして目を細めた。
「礼を言うぞ、ジャン」と言った王太子は、もういつもの力強い瞳になっていた。
「ゲルダのことをきっかけに、この一連の出来事を、前振りを考えることなく話すこともできる。そうだ、これで私も自尊心が高いだけの尊大な男から一歩踏み出せるかもしれぬ。相手のことも思いやっているしな……おお、そうだそうだ」
彼の独り言の意味はわからないが、自信を取り戻した様子の主人を見て、俺は小さく笑みを浮かべた。
あとはディートリンデ王女次第だ。彼女にこれまでの出来事を話すのには骨が折れると思うが、このおしゃべりが好きな王太子には造作もないことだろう。それに、調べによればディートリンデ王女はこうした事に関しては王太子と思考が似ている。おそらく同じ結論に至ることだろう。
王太子が満足そうな表情を浮かべて再び歩き始めたので、俺はそれに従った。
歩きながら、廊下に並ぶ窓にちらと目をやる。もうずいぶん日が高いらしい。
そういえば、ランベルト侯爵は帰ったのだろうか。
「殿下、あの後すぐにリュークが謁見の間に向かったかと思うのですが」
俺がそう言うと、王太子はにやりと白い歯を見せて笑みを浮かべた。
「来たぞ。彼は今回の件で最後まで活躍してくれた」
最後まで活躍?
「謁見の間でランベルトを問い詰めたところ、あの男、なんと逃げ出そうとしたのだ。出遅れた親衛隊よりも早くリュークが現れて、奴を取り押さえてくれた」
「それじゃ侯爵は今……」
「西の牢に入れている。奴の処分も爵位剥奪の他におおよそ考えてはいるが、明日の輿入れが無事に済むまではしばらく牢には入ってもらう」
俺は頷いた。それが一番安全だろう。まだ権力を握るうちは何をしでかすかわからないからな。
「デュボワ公爵の方はどうなさるおつもりですか」
「ああ、メイドたちを夜明け前に帰したら、すぐに公爵自身が宮殿に出向いて謝罪してきた。娘の行いをどうか許してくれとな」
俺の知る限り、デュボワ公爵はあまり策略など考えない、いやその他のことにもあまり手が回らない不器用な人物だ。おそらくひたすら謝るしかないと考えたのだ。
娘の監督不行届きだが、公爵自身には罪はない。おそらくランベルトのように貴族の位を剥奪するまでには至らないはずだ。
「爵位は取り上げずとも、あのような娘は社交界で恥をかくのを一番恐れるものだ。よって、彼女は長期に渡って投獄してやろうと思う。牢から出る頃にはすっかり日陰者として生きるしかないという筋だ……イザークの王族のことを汚らわしい血と言ったあの侮辱は死んでも許さぬ」
そう呟くように言った王太子の顔は恐ろしく真顔だった。うわ、こりゃ口が裂けてもイザークの陰口は叩けないな。
それから少し王太子の靴音だけが響く、静かで気まずい沈黙が流れたが、突然彼が「ああそれから、以前のお前の主人……なんと言ったか、ジョゼフィーヌ嬢の所業への処罰だが」と口を開いた。
あれ、あの娘は何をしたんだっけ……ああ思い出した、毒入りお菓子だ。前の二人の印象が強すぎてすっかり忘れていた。
王太子は俺の方をちらと振り返って「あの一族は左遷が決まった」と言った。
「えっ……左遷、ですか」
てっきり宮殿出入りの禁止程度の処罰だと思っていた。
「昨日ギロー伯爵自らが左遷をと申し出たのだ。被害がなかったとはいえ、宮殿に毒を送り込むなどとんでもないとな。近いうちにあの一族は南の田舎に移ることになった」
へえ、ギロー伯爵自らが。けじめをつける、真面目な性格だ。
まあ、ああいう娘には国の政治を担う人物と結婚するよりも、田舎の領主として生きる方が合っているのかもしれないな。
いやあしかし、懸念していた過激派の三人も処分が決まった。これでやっと俺もひと息つけるわけか。
俺は窓の外の空に目をやった。
もうすぐ昼だからイザーク国の使用人たちが準備にやってくるだろう。残りの午後はのんびりと牢の見張りか他の屋敷の様子でも見回ることにしよう。
今日が終わるまであと半日。明日からはいよいよ休暇に入る……あと半日でレリアと過ごせる! 小さな家の中、二人で仲睦まじく暮らす姿を想像すると、俺は自分の歩きが自然と軽くなるのを感じた。
執務室に入ると、王太子は「ちょっと待っててくれ」と、執務机の引き出しの鍵を開けて中をごそごそやり出した。
「実はお前に渡しておかなければならぬ物があるのだ……おおこれだ」
なんだこれ。
王太子が差し出した何かを、俺は戸惑いながら両手で受け取った。
「……鍵、ですか」
宝箱や引き出しで使うような小さなものではなく、手のひらくらいの大きさで、少し錆びついている。なんだろう、部屋の鍵、いや家の鍵だろうか。
王太子はにやりとした笑みを浮かべて言った。
「遅くなったが、私からの結婚祝いだ」
結婚祝い? この鍵が?
思わず眉を寄せたのに、王太子は心外そうな表情になった。
「なんだ、その不審そうな顔は。別におかしいことではなかろう。昨日お前に行ってほしい家があると言ったはずだ」
たしかにそんなことを言っていた。だが、結婚祝いに鍵?
俺はもう一度手元を見下ろした。
「その家に、殿下からの結婚祝いの品があるということですか…………え、まさか!」
俺ははっとして顔を上げた。
王太子は得意そうな表情を浮かべている。
「そのまさかだ。家を一軒、お前たち夫婦に贈る。鍵はその家のものだ。どうだ、素晴らしい贈り物だろう」
信じられない。家が贈り物だなんて、想像もしていなかった。どんな感覚で生きているんだ。王族として生きているとそれが正常なのだろうか。あっ、もしかして!
「そ、その、今回の二ヶ月分の給料が、もしやその家だなんてことは……!」
「馬鹿者、私がそのようなけちくさいことをするか。家は結婚祝いと言っただろう。給料は財務管理のところでもらうが良い。お前が要求した金額を指定してある」
ああ、よかった。
俺はほっと胸を撫で下ろした。
しかしレリアがなんと言うだろう、彼女は俺と家を探すのを楽しみにしてくれている。
俺がそう思っていたのを察したのか、王太子は「お前の妻にも伝えておいたぞ」と言ってから、少し口を尖らせた。
「そうしたらあの女、なんと言ったと思う? お前と同じく“まさかジャンの給料の代わりでは”などと言いおったのだ。全く、二人とも私をなんだと思っているのだ」
レリアも同じことを尋ねたのか。
俺は少し嬉しくなって心がぽかぽかするのを感じた。
王太子は青い目を細めて鼻を鳴らした。
「ふん。まあ、気に入らなければまた別のを用意してやる。とにかく今から行ってみるがよい。感想は休暇が終わった後に聞こう」
王太子の言葉に、俺は目を瞬かせた。
「え、今から? 休暇は明日からの予定ですが」
王太子は俺の方をまっすぐ見た。
「お前が寝ている間、私が許可を出した。休暇は今からだ。日数も十日間に増やしておいたぞ。貴族の屋敷の見回りも、牢の見張りも他の間諜たちに頼んでいる。お前は今から仕事のことは全て忘れて、財務官たちから給料を受け取り、使用人玄関の前で待っているお前の妻を迎えにいくが良い。彼女にも同じだけ休暇を与えた」
そう言った主人は、いつになく柔らかい親しげな表情を浮かべていた。
それは、自分の容姿に自信を持って世を渡り歩いているだけのいつもの姿ではなかった。
ああ、これが俺の仕えている王太子、これが上に立つ者としての器なのか。
俺はすっと身をかがめて片膝を床につけると、頭を下げた。
「感謝いたします、殿下」
王太子がふっと笑みを漏らした声が聞こえた。
「お前はほんとうによくやってくれた、ジャン。私は強い味方を得たと心から思っている、忠義はなくともな。ほんとうだぞ」
頭上から王太子の声が降ってくるのを、俺は床を見つめながら「恐縮です」と受け止めた。
「ゆっくりと休むが良い。休暇が終わったら、家の感想を聞かせてくれたまえ」
部屋に置いてあるわずかな荷物をまとめ、財務官たちから給料をもらい、俺は宮殿の使用人用の玄関の方へ向かった。
扉を出て階段を下りたところに、空色のワンピースを着た若い女性が立っているのが見えた。レリアだ。
足元には少し大きめの鞄が置いてある。王太子の言っていた通り、彼女も休暇の準備ができているようだった。
簡素なワンピースに身を包んでいるが、遠目から見ても姿勢がぴんと伸びて令嬢然としており思わず見惚れてしまう。彼女が俺の妻だなんて、ほんとうにそんなことが許されるんだろうか。
レリアはぼんやりと遠くを眺めていたが、俺の姿が目に入ると、ぱっと顔を明るくさせてこちらに駆け寄ってきた。
そのとき俺は口元を覆っていることに気づき、彼女との執務室での会話を思い出して慌ててポケットに入れた。
走ってきたレリアは目の前で止まるかと思いきや、そのまま勢いよく突進するように抱きついてきたので「うわっ」と声を上げてしまった。
「レ、レリア! こんなところで……」
ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ! まだ俺には心の準備が……というかだめだ離れてくれ、俺はここのところ湯あみもしてないし、身体も拭いてないし、服も洗濯してないんだ!
俺のそんな気も知らずにレリアは抱きついたまま満面の笑みを浮かべてこちらを見上げた。
「ふふっ、だって白昼堂々会えるのが嬉しいんですもの! やっとお休みね。ほんとうにお疲れさま」
俺はガクガクとやっとのことで頷いた。
レリアはふんわりと石鹸の香りがする。ちゃんと洗濯したての服を着ているのだ。
くそ、どうして俺はもっとましな服を着なかったんだ。
「は、早く、行こう」
やっと声が出ると、レリアも「そうね」と頷いてすっと身体を離した。ほっとしたのもつかの間、彼女は鞄を持ってから片腕を俺に絡めてきた。
「レ、レ、レリア、離れた方がいい、俺は……その、ずっと風呂に入ってない」
よし、言葉にできた! これで俺が匂いを気にしていることがわかったはずだ。
しかし、レリアは「嫌よ」と首を振った。
「今まで二ヶ月も会えなかったのよ、もう離さないわ」
そう言って掴んだ腕にぎゅっと力を込めてきた。だめだ……こうなるともう振り解けない。
俺は諦めて、自分の心臓と戦いながら彼女と並んで宮殿の出口へ向かった。
俺も彼女の押しに弱いなあ。仕方ない、殿下のくれた家についたらすぐに湯あみをしよう……いや待て、家に着いていきなり湯あみなんかしたら、いかにもそれを目的としているみたいじゃないか。いくら初夜を逃したからと言ったって、高潔な彼女はどう思うだろう。
俺は、彼女が王太子を見るように顔を歪めるところを想像して、ぞっとした。
「実はね」
歩きながら突然レリアが言った。
「私も昨日から湯あみをしていないの、ほら、徹夜でお仕事だったでしょう。それにいきなりの休暇だったから洗わなきゃいけない洗濯物もたくさんあるの。家に着いたらまずは洗濯をして、身ぎれいにしてからお部屋を見たりお食事をしたりするのはどう?」
ありがとう、レリア!
俺は心の中で彼女に拍手を送りながら、ほっと胸を撫で下ろして頷いた。
宮殿の門を出ると、城壁の裏側の方へ向かった。
「王太子には、小さな家に住みたいと話してあるの。子爵家で暮らしていたときの屋敷はとても広かったから」
俺は彼女が住んでいた屋敷をぼんやりと思い出した。確かにあそこは立派な造りをしていた。レリアは狭い方がいいのか。
「……俺は今まで穴ぐらみたいなところで一人で暮らしていたから、二人で暮らすならもう少しだけ広い方がいいかな」
俺がそう言ったのにレリアはくすりと笑った。
「穴ぐらはさすがに狭いわね。きっと二人が住めるくらいの大きさの家を用意してくれているわよ」
俺たちは王太子から受け取った紙を見ながら足を進めた。紙には彼の美しい飾り文字でその贈り物である家の住所が書かれている。それにしてもずいぶん宮殿から近いな。通いやすいようにという配慮だろうけど、この辺りの住所に俺たちが住めるような家はあっただろうか。
レリアもその紙を覗いた。
「この辺りかしら」
「目印は緑色の屋根と書かれてる」
「緑色の屋根ね、探してみるわ……それにしても、家を贈り物にするなんて、さすがあの王太子よね」
レリアがきょろきょろと辺りを見回しながら言った。
「でも彼だからこそ、思いつくことなのかもしれないわね。それにジャンへの気遣いといい、休暇のことといい、今回は少し王太子を見直し……」
レリアの口と足が止まった。紙を見ていた俺は「どうした」と言って彼女の視線を辿った。
すぐ右側には俺の身長を優に超えた大きな鉄格子があった。見るからに頑丈そうな門だ。
そしてその門の向こうには、四階まである大きな大きな屋敷がそびえ立っていた。屋根は緑色だ。
いやまて、これは家なんてもんじゃない、邸宅だ。
「なに……これ」
レリアが驚きの声を漏らした。
緑色の屋根なんてきっと探せば他にいくらだってあるはずだ。そう考えたが、王太子に渡された紙に書いてある住所は何度確認してもここで間違いなかった。
「待って、ジャン」
レリアは咳ばらいをして言った。
「あの王太子がきっと住所を間違えたのよ、だって仮にあの男がこのお屋敷を用意したとして、こんな頑丈な門をどうやってくぐり抜けるというの?」
俺は彼女の言葉に賛同しようとしてあっと固まった。もしかしてあれが。
俺は上着の内ポケットからあの鍵を取り出した。
レリアはそれを見ると、顔を引きつらせた。
「な、なあに、その鍵」
「さっき王太子からもらった。まさかとは思うけど……」
門の扉の鍵穴に、俺はそのさびついた鍵をおそるおそる差し込んだ。
ガチャン。
こんなにむなしい音があるだろうか。
頑丈そうな扉は、願いに反してギィと開いた。
「「……」」
俺たちはそのまま固まって口もきけなかった。
まさかこんな屋敷を送られるとは思っていなかった。いや、あの王太子なら予想すべきだったか?
「信じられない、あの男……!」
隣からぼそりと聞こえた声に、俺はちらりとレリアの様子を伺った。こめかみをひくつかせている。あっまずい、これは怒っているときの顔だ。そりゃそうだ、彼女は小さな家に住みたいと贈り主に伝えていたのだから。そしておそらく彼にとってはこれが“小さな家”なのだろう。なんだろう、このすれ違いは。
「お、俺が」
思わず口をついて出た。
「今から宮殿にひとっ走りして、他の家に替えてもらってくるよ」
するとレリアは「えっ」と驚いた表情を浮かべて目を瞬かせた。
「だから大丈夫だ、すぐ戻る。王太子はまだ寝てないはずだ。あんたは屋敷の中でちょっと待っててくれ」
だがレリアは腕を緩めようとしなかった。俺をじっと見つめていたが、やがて下を向いてしまった。あれ、どうしたんだろう。変なこと言っちまったかな。
「レリア? そ、その、何か……」
「ごめんなさいジャン、気を遣わせてしまって」
レリアは顔を上げて俺と目を合わせた。はしばみ色の瞳に俺のぽかんとした顔が映ったのが見える。思ったよりも距離が近かった。
「いいわ、大丈夫。十日間の休暇はここで暮らしましょう。せっかく用意してもらったんですものね」
レリアはそう言って俺ににっこり微笑んだ。うわ。
「もちろん、この休暇の間にもう少し小さな家を探しましょ、ここじゃ広すぎるもの」
俺はただこくりと頷くだけで精いっぱいだった。俺は顔が急に熱くなるのを感じて、慌てて目を逸らした。心臓がバクバクいっている。こんな調子で俺はこれから大丈夫だろうか。
「私ね、ジャン」
門をくぐって屋敷へと向かって歩き出すと、レリアが言った。
「あなたとだったらどこでも住めるわ。あなたが穴ぐらに住むっていうのならついていく。正直住むところなんてどうだっていいって、さっき気づいたの。あなたがいれば、ほんとうにどこだって……」
「お、俺もだ」
隣の彼女の顔は見れないが、俺は懸命に口を動かした。
「レリアがいるなら、どこでもおんなじだ。もちろん、できればその、すぐにあんたの顔が見れるくらいのもっと小さい家がいいけど……」
ああ、もっと気の利いたことが言えたらよかったのに。
「そうね」
レリアがくすりと笑みを漏らした。
「これからジャンと暮らせるのね。朝起きたら目の前にあなたがいるなんて夢みたい」
朝起きたら目の前にレリアがいる? 俺はその様子を想像して、それ以前のことも考えてしまいそうになり、慌ててすぐにやめた。危ないところだった。
しかし俺の努力もむなしく、レリアが宣言するように言った。
「ジャン、今日こそはあなたにキスをさせてもらいますからね。キスだけじゃなくて初夜もよ。覚悟なさい」
おしまい
これで完結になります。
番外編まで読んでいただき、ほんとうにありがとうございます。
背景も設定も作者の趣味ですので、どうかご了承ください。