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第五骨 骨強化

 

 思っていた以上に脆かった。

 敵の頭蓋骨は、ガラス細工のように粉々に砕け散る。


 やはり、地面に落ちている骨は、俺達の骨よりかなり硬い。

 武器に使った大腿骨だいたいこつには、傷一つついてなかった。


(これを真っ二つにしたのか。凄まじいな)


 恐らく、ここに散らばる骨は、すべてむくろの王が壊したのだろう。

 ここまでの骨がいらないというのなら、俺が全く相手にされなかったのも理解できる。


 カッ、カ、ッ……


 頭蓋骨を砕かれた敵が、その場に崩れ落ちた。

 人間のように脳があるわけではない。

 だが、そこには、なにか大事なものが入っていたのか。

 これまで繋がっていた骨と骨がバラバラと崩れ出す。


(……あ)


 バラバラになった骨は、その場に残ることはなかった。

 まるで砂になったように、サラサラと細かくなっていく。


(消滅するのか)


 地面にある骨と、俺が倒した骨はやはり別物なのか。

 敵が崩れた場所に、小さな骨砂山が出来る。

 触って確かめようと手を伸ばすと、骨砂がこちらに向かってやってきた。


(……なんだ。生きているのか?)


 風もないのに、その骨砂は俺の周りを螺旋状にくるくる周っている。

 その一部が先ほど、敵の拳でひび割れた前腕部にある尺骨しゃっこつ橈骨とうこつに纏わり付く。


(これは……)


 骨砂はヒビの隙間に入っていき、同化していく。


(傷を治してくれているのか)


 今、ダメージを負ったところだけではない。

 穴から落ちてヒビが入っていた箇所にも、骨砂は入り込んでくる。


(なるほど、そういうことか)


 骨を倒せば、その骨を自分に取り込み、ダメージを回復できるのだ。

 それだけではない。

 明らかに自分の骨は、戦う前より骨密度が上がっている。

 俺の骨は、少し強化されたのだ。

 さらに、骨砂山があったところに、一つだけ崩れずに残っている骨のパーツがあった。


仙骨せんこつか)


 仙骨せんこつは、大きな三角形の骨で、骨盤の上方後部であり、くさびのように差し込まれる骨だ。

 その上部は背骨の最下部にある腰椎ようついと結合しており、下部は尾骨びこつと結合している。

 200以上ある骨の中で身体を支える最も重要な骨の部分と言っても過言ではない。


 知っていたわけではない。

 それは、骨の本能というものだろうか。


 俺は自分の腰に、手に入れた仙骨を持っていく。


 カチリ、とまるで昔からそこにあったように、その骨は俺の骨と同化した。


 骨を倒せば倒すほど、強くなることが出来る。

 勝ち続ければ、やがて、ここに散らばる頑丈な骨と同じくらいに、俺の骨も硬く丈夫になっていくのだろう。


 そうだ。それをむくろの王は狙っているのだ。


 ここは、むくろの王の餌場だった。

 だが、ただの餌場ではない。


 存分に鍛え上げられた極上の骨を頂く、贅沢な餌場だった。







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