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資格

 明日……か。少なくとも、ひとまずは助かった……らしい。

 そう思うと腰が抜けて、その場にへたり込んだ。

 おれが生きているのは、たまたまだ。

 ああ良かった――そう思う気持ちはあった。

 一方で。悔しい……そんな感情も、心の片隅にあった。

 それを察してか、ロボが急におれの頭をわしゃわしゃと撫でた。

「……本当言うとな。アイツを前にして、キミが逃げてもよかったんだ。本気でアイツを倒させようとしたわけじゃ、なかった。キミが逃げれば、自分もユウを諦めることが出来たからな……。だってそうだろう? 自分が見える人間に、それも年頃の男に出会えるなんて、幸運が過ぎる。それは恵まれすぎというものだ」

 こいつは……この考え方は……まるで、おれじゃないか。

 おれが人間なら……こいつだって人間だ。

「言い訳に聞こえるかもしれないが、キミの命が危険に晒されるような事になれば、ホッケと取引してでも逃がすつもりだった」

 だけど、と続ける。

「――よく、戦った。自分はユウの勇気を誇りに思うよ。自分は、かつて戦えなかった。だからこうして人狼に身をやつしている。だが、ユウは戦った」

 その瞳に、性欲からではなない憧れのような色が見えた気がした。

 だから、酷く自己嫌悪を覚えた。

 違う。そうじゃないんだ。

 おれも同じなんだ。お前と同じで、ほんとは逃げの選択しかできないヤツで……たまたま、今回は体が勝手に動いただけなんだ。

 それだけに、悔しくてしょうがない。いつだってその選択を選べない、弱さが。

「だからこそ、やはり自分はユウを殺させるわけにはいかない。失うわけにはいかない」

 おれの反論が口をつくより先に、そう言ったロボは、いつになく真剣な表情だった。

 あの、かなかな口調もナリをひそめている。

 これが本来のロボなのかもしれない。

 いや、きっとそうだ。

 ロボは、人から見えなくなって、ずっと人とコミュニケーションを取れていない。

 だから、事あるごとに、相手を確認するようにかなかな言っていたんだろう。

 ……それほどまでの長い孤独。誰からも認識されない透明な人生。

 本当に強いのはどっちだろう。

 これじゃ、到底対等の関係とは言えない。つがいも何も……今のおれにはそんな資格はない。

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