第32話
期末が近づいてきて、教室の空気も少しピリついてきた。授業が終わり、大輝と話をしていると芹那がやってきた。
「はい、こっち向いて~」
とスマホを向けてくるので、とりあえずキメ顔で対応する。
「おけおけ、いいね~」と写真をとった後、スマホを何かいじっている。
「また俺の写真あげんのかよ」
こいつのSNSに週1くらいで登場させられている。
「いや~ルナくんの写真あげると、コメントいっぱいつくからさ」
知ってる。見に行くと他の、しょうもないカフェのコーヒーの写真とかの10倍くらいはコメントがついている。
「別にいいけどさぁ、自分の写真もっと上げろよ。そっちの方が男のフォロワーとか増えるんじゃねえの?」
「いや~まぁそれでもいいんだけどさ、なんかそれだとあれじゃない?顔で釣ってるみたいじゃん」
顔がいい自覚はあるんだな。まぁなければ嫌味もいいとこだが。
「いいじゃん。なりふり構わず全力でフォロワーを増やしてこそインフルエンサーってもんでしょ。持てる武器を全部使えよ」
「おっ、良いこと言うね。それは確かに。何ていうかさ、センス?的な?そういうのでフォロワー増やしてみたかったけど甘かったかぁ」
センスか。芹那のSNSを見る限りそんなものは感じなかったが、正直に言ってやることもないだろう。なんか昨日は夕焼けの写真とか乗せてたけど、特にエモくもなかった。
「俺の写真でせこせこコメント稼ごうとしてる奴がセンスて」
と冷笑してやる。
「あはは、それはそう。いや~最初に上げたので味占めちゃってさ。平和だったタイムラインに急にヤクザが!みたいな感じですごい反応よかったから」
「だれがヤクザやねん」
イケメン高校生と呼ばんかい。
「よし!んじゃあたしも映るからちょっと大輝くん写真撮って!」と大輝にスマホを渡して俺の横にぴとっとくっついた。
「ほら、笑って笑って!」といいながら自分は横ピースしている。
「ん~別にいいけど、愛梨も呼ぼうぜ」
一応だ。別に芹那と2人で写真を撮ったところで嫌がったりはしないだろうが、一応だ。こいつも顔面偏差値がヤバいからな。
「うわ、めっちゃちゃんとしてるね~」
素直に感心された。
「普通でしょ」と流して愛梨に大きく手をふる。
前の席の女と何やら話していた愛梨はこちらに気づくとやってきた。
「どしたの~?」
「こいつがSNSあげたいらしいから3人で写真とろうぜ」
「いいよ!」というと後ろから抱きついてきて、俺の肩に頭を乗せてきた。
教室でやるにしては大胆すぎる行動だ。教師に見られたら普通に注意される。一瞬固まってしまった。芹那も少し驚いたのかこっちを見ている。周りにじろじろ見られたくないし、早めに写真を撮ってもらおう。
「えっと、じゃあ、撮るね?」
大輝もすこしぎこちなくなっている。
写真を何枚か撮り終わると愛梨は俺の顔に自分の顔をぎゅっとこすりつけて俺から体を離した。
「じゃあ、私ちょっとまたせてるから」と、また前の席の女との話に戻っていった。
「えと…、なんかすごかったね」
大輝がそう言う。確かに。正直びっくりした。
「なんていうか、あれだね。ルナくん愛されてるね…?」
愛されてるというか、なんというか。少なくとも教室でああいうことをしてほしくないんだが。多分こいつのせいだろう、と隣のギャルから少し体を離す。
「まぁ、ああいうとこも可愛いけどね」
ああいうところは初めて見たけど、とりあえずの言葉だ。実際可愛かったし。
「いいなぁ~、あんなになんていうか、恋、的な?してみたいな~」
こいつさっきのが自分のせいっていう可能性を考えてないの?呑気になんか妄想してやがる。
「いや、さっきの絶対芹那ちゃんのせいでしょ。普通じゃなかったもん」
「それな。お前、俺に濃厚接触してくるの禁止で」
「濃厚接触してないから!なんかそれエロいし!」
「エロい言葉じゃねーから!っつかそういう事を大声で言うのもやめろ!」
適当に前の感染症のときに流行った言葉を使っただけだ。
「ちょっとあたし近すぎた?普通だと思ったけど」
う~ん、なんとも言えない。俺は普通だと思ったし、ギャルの距離感的にも普通だったんだろうが、愛梨は昔地味だったっつってたし。
「まぁ愛梨がああしたってことは近すぎたんでしょ。これからは俺のパーソナルスペースに入ってこんでな」
「え~!どれくらいの距離なのそれ!」
と言ってきたので両手を大きく広げる。
「これくらい」
「遠すぎ!」にゃははと笑っている。
明るいやつ。最初に絡んできたときが嘘みたいだ。あの時は虚勢を張ってたんだろうが。
「盛り上がってるね~」とマコトがやってきた。丁度いい。
「マコト、写真撮ってやるよ。芹那の隣ならんで」
俺のスマホを取り出して構える。マコトは大人しく芹那の横に並ぶ。
「ほら、もっと寄って、肩組んじゃってもいいから」
愛梨に、俺にだけこいつが近いわけではないんだよ~、とアピールする姑息な手段である。やってて虚しいが、まぁいいさ。
マコトが芹那の肩に回そうとした手が叩き落された。
「濃厚接触禁止!」
さっそく憶えた言葉を使う赤ちゃんのようである。
「濃厚接触って」とマコトが笑う。
改めて2人が並ぶ。まぁまぁ絵になるな。マコトも結構なイケメンだ。
「いいね」と写真を数枚とって芹那とマコトに送ってやった。
「お前ら彼氏彼女つくらんの?」ふと思ったので聞いてみる。
「う~ん、募集中」
「う~ん、募集中」と芹那がマコトのマネをする。
「大輝は?」
「う~ん、応募中」とすこし捻って返してきた。ちょっとおもろいやん。
「誰に応募してんだよ」と、半笑いで問いかけると「まだ見ぬ誰かに?」と返してきた。
なんか詩的なそれに場が盛り上がる。
「あはは、大輝くんもそんな感じならすぐ彼女いけるよ!」
芹那が笑いながら言った。分かる。
「夏までに頑張ってみたら?もうほとんど夏だけどさ」
「ん~、実際好きな人いないんだよね」
「そんなん言ってたら高校生活終わっちゃうぞ。ちょっとでもいいなと思ったらアタックしまくれ」
実践的アドバイスを送ってみる。実行可能かはこいつ次第。
「芹那ちゃんとマコトくんは?気になる人いないの?」
「ん~秘密」
「ん~秘密」と芹那がマコトのマネをする。
「お前ら誤魔化してばっかじゃん」
恋バナしようぜ恋バナ。
「まぁまぁいいじゃん。ほら、もう授業はじまるよ!」
といって芹那は逃げていった。
「じゃ、俺も」とマコトも逃げていく。
「あいつら実は両思いだったりして」と大輝に言うと「絶対ない」と返された。




