エピローグ:二歩下がって三歩進む
やはり、望愛のケガは軽度の捻挫らしく、安静にしていれば一週間程度で完治するとのことだった。
軽いケガだったので、戻ってきてからは望愛もキャンプ体験を楽しむことができた。望愛が元の調子に戻ったので、遊々子や橘さんたちも胸を撫で下ろしていたようだ。
いろいろあったけど、終わりよければすべてよし。楽しい林間学校だったと言えるだろう。
そして夕方。帰りのバスの車内。
「ノリくん♪ ノリくん♪」
「お、おい、あまりくっつくなよ」
隣の席の望愛にベタベタされて、俺はほとほと参っていた。
望愛のくっつき方は、触れ合うなんてソフトなものじゃない。ほとんど抱きついてるくらいの密着具合だ。以前から望愛のスキンシップは熱烈だったが、一段とエスカレートしていやしないだろうか?
「何度も言ってるけど、ベタベタしすぎなんだよ、望愛は」
「またまたー。本当は、甘えられて嬉しいんでしょ?」
「ぐ……っ」
ニヤニヤ笑う望愛の指摘に、ぐうの音も出ない。
望愛に甘えられるのは嬉しいと発言したのは事実だし、なにより、この状況を喜んでいる自分が、たしかにいるのだ。
望愛を更生させたいのに、どんどん絆されている気がする。ミイラ取りがミイラになるとは、このことだろうか? 元の調子に戻ったことで誘惑も再開されるだろうし、これからも望愛には振り回されそうだ。
まあ、苦しんでいる姿を見せられるよりは、ずっとマシか。
諦観の念を抱き、苦笑する。
そんな俺を見つめながら、望愛が呟いた。
「絶対に攻略してみせるから」
望愛の眼差しは穏やかだが、挑戦者めいた真剣さが秘められているように感じる。
「なんの話だ?」
「いまは内緒。そのうちわかるよ」
首を傾げる俺に、望愛はいたずらっ子みたいな笑顔を見せるのだった。




