遠慮するなよ。――7
ガランガランと薪が地面に散乱するなか、俺は急いで望愛に駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「ご、ごめん、ノリくん。せっかく割った薪が……」
「薪なんてどうでもいい! ケガしてないか!?」
「う、うん。大丈……っ」
答えている途中、望愛が顔をしかめ、右の足首を押さえた。捻ってしまったのかもしれない。
「乗れ、望愛。足首、看てもらいに行くぞ」
俺はしゃがみ、望愛に背中を向ける。
生徒がケガをした場合に備え、この林間学校には養護教諭が同行している。そこまで、望愛を背負っていこうと考えたのだ。
しかし、望愛は首を横に振った。
「いいよ。自分で行けるから」
「こんなときにまで意地を張るなよ!? そんな場合じゃないだろ!?」
「だって、頼ってばかりだとノリくんに迷惑がかかっちゃうじゃん。そんなの、嫌だよ」
諫める俺に、望愛が笑顔を見せる。取り繕ったような、仮面のような、痛ましい笑顔。
「あたしのことはいいから、ノリくんは自分のことを考えて? ノリくんの好きなようにしてよ」
「……わかった」
どうやら、説得するのは無理らしい。
望愛を背負うことを諦めて、俺は立ち上がる。
「そういうことなら、好きなようにさせてもらう」
「……うん」
寂しそうに眉を寝かせて、望愛がうつむく。
俺は体をかがめて――
「よっ」
「ふぇっ!?」
お姫様抱っこの要領で、望愛を抱え上げた。
突然のことに驚いたのか、望愛が目を白黒させる。
「な、なにしてるの、ノリくん!?」
「好きなようにしてるんだよ。望愛の言うとおりにな」
戸惑う望愛に構わず、俺は先生たちのテントを目指して歩き出した。
「俺が望愛を放っておけるわけないだろ。お前がなんと言おうが、もう知らん。勝手に助けさせてもらう」
「どうして……どうして、あたしにここまでしてくれるの?」
「忘れたのかよ? 前にも言っただろ?」
「え?」
俺の言ってることがわからないのか、望愛が困惑したように見上げてくる。
再会して間もない頃――望愛が雨宿りに来たあの日の言葉を、一言一句違わず、俺は再び口にした。
「望愛のことが大切だからだよ」
「っ!」
望愛が目を見開いた。
そう。理由なんて決まってる。
望愛が大切だから。それだけの話。
「わかったら、しっかり掴まってろ。落ちたらどうするんだ」
真っ直ぐ正面を見据えたまま、望愛に促す。
照れくさいことを口にした自覚があるため、少々ぶっきらぼうな口調になってしまったが、それでも望愛は俺の首に腕を回し、胸に顔を埋めるようにしがみついてきた。
「……うん」
返事する望愛の声は、少し震えていた。




