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幕間:お姉ちゃんアドバイス

「どうしよう、お姉ちゃん!?」


 金曜日の夜、あたしは電話でお姉ちゃんに泣きついていた。


 その原因はもちろん、ノリくんとの関係にある。


「いっぱい誘惑してるのに、全然ノリくんがなびいてくれないよぉ!」


 再会してから一〇日。ずっとアプローチを続けているのに、ノリくんとの仲がこれっぽっちも進展しないのだ。むしろ、あたしの誘惑を警戒しているのか、ガードを固めているようにすら感じる。


 このままではノリくんと付き合えないんじゃないかと不安になり、お姉ちゃんにアドバイスを求めたわけだ。


 肩を落とし、弱音をこぼす。


「やっぱり、あたしに魅力がないからなのかな?」

『そんなことない。望愛ちゃんはとっても魅力的よ』

「でも、ノリくん、あたしに手を出してくれないよ?」

『多分ね? ノリくんは耐えてると思うの』

「耐えてる?」


 小首を傾げると、『ええ』とスピーカーの向こうでお姉ちゃんが相槌を打った。


『多かれ少なかれ、すべての男の子はエッチなことに興味がある。けど、なかには強固な理性を持ってるひともいるの』

「あたしの誘惑に揺らいでいるけど、理性で抗ってるってこと?」

『そういうこと。洋太(ようた)くんと同じタイプね』


 お姉ちゃんが首肯する気配がする。ちなみに、『洋太くん』とはお姉ちゃんの旦那さんの名前だ。


『お姉ちゃんも、洋太くんの理性を剥がす(攻略)まで時間がかかったわ。それでも、ちゃんと結婚できたでしょう?』

「たしかにそうだね」

『洋太くんは草食系だったけど、いまでは毎晩お楽しみよ。三人目の赤ちゃんも直に授かりそう』

「そ、そうなんだ」


 弾んだ声でお姉ちゃんが知らせてくる。その赤裸々な告白に、あたしは頬をひくつかせた。


 子供がいるんだから、お姉ちゃんと洋太さんがそういうことをしているのは当たり前。けど、お姉ちゃん本人の口からそれを聞くのは、なんだか生々しいなぁ。


 気恥ずかしさに顔が火照るなか、お姉ちゃんが続ける。


『いつかはきっと、ノリくんも振り向いてくれる。だから、めげずにアプローチを続けて? 大丈夫。望愛ちゃんは最高に魅力的なんだから』

「そっか……ありがとう、お姉ちゃん」

『どういたしまして』


 お礼を言うあたしに、お姉ちゃんが和やかに応じる。お姉ちゃんのおかげで、沈んでいた心は軽くなっていた。


 やっぱり、お姉ちゃんは頼りになるなぁ。相談してよかったよ。


 ほんわかした気持ちになっていると、悩みは解決できたと判断したのか、お姉ちゃんが新しい話題を切り出した。


『明日はお休みだし、お買い物に行ってきたらどう? お洋服とか下着とかを見繕うの』

「ノリくん攻略のための?」

『ええ。オシャレは女の子の武器だもの。またお小遣いあげるから、存分に買ってきてね』

「えっと……本当にいいの?」

『なにが?』

「あたし、お姉ちゃんにいっぱいお小遣いもらっちゃってるけど……」


 あたしは眉を寝かせる。


 ノリくんのカノジョになると決意してから、お姉ちゃんは度々お小遣いをくれるようになった。あたしを応援しようと思ってのことだろう。


 衣服、メイク、アクセサリーなど、女の子磨きにはお金がかかるので、お姉ちゃんの心遣いはありがたい。けど、おんぶにだっこみたいで申し訳なくも感じるのだ。


「ノリくんと付き合うのはあたしの目標だし、そのための費用は自分で用意するべきなんじゃないかな? バイトとかで」

『望愛ちゃんの考えは立派だし、アルバイトをするのは悪くないと思う。でも、アルバイトをしていたら、ノリくんと一緒に過ごす時間が減っちゃうでしょ?』

「それはそうだけど……」

『やっと再会できたんだから、望愛ちゃんにはノリくんとの時間を大切にしてほしいの。それに、望愛ちゃんならお小遣いを有効活用してくれるでしょ? 無駄遣いなんてしないでしょ?』

「もちろんだよ! お姉ちゃんの優しさを裏切るような真似、するはずない!」

『だったら、遠慮することなんてないわ。望愛ちゃんの力になれるのは、お姉ちゃんとしても嬉しいしね』


 お姉ちゃんの思いやりに、胸がジンと温かくなる。


「ありがとう、お姉ちゃん。あたし、お姉ちゃんの妹でよかった」

『ふふっ。わたしも、望愛ちゃんのお姉ちゃんになれてよかったわ』


 なんだかくすぐったくて、あたしとお姉ちゃんはクスクスと笑い合った。


「じゃあ、お姉ちゃんのアドバイス通り、明日はお買い物に行ってくるよ」

『ええ。好みはもちろんだけど、望愛ちゃんの武器を活かせるものを選んでね?』

「武器を活かす?」

『望愛ちゃんは大きなおっぱいとむちむちの太ももが魅力的だから、そこが目立つようなお洋服がいいと思うの』

「なるほど!」

『下着も大胆なデザインのものがいいんじゃないかしら? 紐パンなんてどう?』

「ひ、紐……っ!?」

『男の子にウケるのよ、紐パンって。「(ほど)いてみる?」って洋太くんを煽ったことがあるんだけど、そのときは野獣みたいに――』

「あわ、あわわわ……!」


 それからしばらく、実体験をもとにしたお姉ちゃんのアドバイスが続くことになる。


 お姉ちゃんのエピソードはどれもこれも刺激的で、アドバイスが終わる頃には、あたしの頭は茹だりきっていた。

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