表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/38

第32話 として

 「Lord. (主よ)forge (運命)one's (を切り)destiny (拓き)to ()lead ()the ()people ()to ()peace ()and (かん)tranquilli(とする)ty, Grant (煌々)once (たる)more (その)to ()me ()that ()resplenden(今一度)t power (我に託)of ()yours.(給え)

 忘却の町(キャメロット)の大穴の前に立ち、ハルバードは固有魔法発動の詠唱を一息に唱える。

 「この中の空間は、情報によると、魂空間に似た構造だと思われる。」

 ハルバードは後ろにいる3人の従者に向けて言う。

 祈からの情報を頼りに忘却の町(キャメロット)絡繰からくりを推測したようだ。

 「内部では現実的な時間は流れていない。…5分。俺が忘却の町(キャメロット)内に侵入してから5分以上経過してなお帰還しなかった場合、直ちに撤退して俺の遺書通りに動け。いいな。」

 ハルバードは淡々と、冷静に話す。

 「はっ。」

 後ろに控えている従者たちはその命令に、簡潔に返事をする。

 「では、行ってくる。」

 ハルバードは従者たちに背を向け、忘却の町(キャメロット)の方を向く。

 「…ご武運を。」

 従者のうちの1人が、膝を着き、ハルバードを見ながら言う。

 それを言われたハルバードは背を向けながらも、頷く。

 そして、深く息を吸って、真っ直ぐ進行方向を見る。

 「反実仮想ドリームランナー。」

 そう唱えると共に、ハルバードの姿は目の前の穴の中へと消えていった。


 西日が差す町中。

 その中央で、賢者と災厄が対峙する。

 数秒の沈黙の中、急にシャスナハの目付きが鋭くなる。

 ハルバードもその変化を感じとり、魔力を整え、臨戦態勢に入る。

 「…もう一度聞く。お前がシャスナハか?」

 ハルバードは声を深くして尋ねる。

 「…いいや、違う。私の名はペトラだ。」

 ペトラの冷たい視線がハルバードに刺さる。

 ペトラの名を聞いて、ハルバードは困惑する。

 (どういうことだ?もしや、このような外見の者が複数人いるのか?)

 しかし、一瞬にして冷静になる。

 (いや、数秒前とは魔力マナも、雰囲気も何もかもが明らかに別人だ。…多重人格か…。)

 「そうか…。では、ペトラ。貴様は外の人間を消滅させたことがあるか?」

 思考を整えたハルバードは、再びペトラに問いかける。

 「…別に、消したくて消していた訳ではない。…ただ、結果として、消してしまっただけだ。」

 ペトラはハルバードから少し目を逸らす。

 「…では、お前が原因で人々が消えたということに、間違いはないのだな。」

 ハルバードは、冷酷に告げる。

 その言葉を聞いたペトラが、目を見開いて再びハルバードを見る。

 「…っ!だから!消したくて消していた訳じゃないって言っているだろ!?話を聞けよ!」

 ペトラは激昂する。

 あまりにも無慈悲な、その答えに。

 「全て聞いた。お前の意思は、関係の無いことだ。お前が人々を消した。それが全てだ。」

 それでもなお、ハルバードは依然として態度を崩さない。

 「…なんで…。」

 ペトラは弱々しい声で呟く。

 「…仮に、俺がお前の事情を納得したとして、おいそれと引き返せなどはしない。世界中の人々が、それを許しはしない。」

 ハルバードの目に、少し力が入る。

 「何故ならば!お前の死を!世界の安寧を!人々は望んでいるからだ!」

 強く、ただ言葉を強くして告げる。

 彼女に立場をわからせる為に。

 或いは、自分自身を縛る為に。

 「…わかっているのか?世界はもう、お前を災厄としてしか見ていない。」

 ハルバードは、深く懐に潜り込むように言う。

 彼女の内側を、無理やりにでも曝け出し、突きつける。

 その言葉に、ペトラは俯いてわなわなと震え出す。

 「…非道ひどいなぁ。」

 静かに、怒るように、もしくは何もかもが可笑しくて、笑いを堪えきれないように。

 ペトラは捻り出すように声を出す。

 「…最初から誰もッ!あの子のことを人としてなんか見ていないくせにッ!!」

 そして、それは爆発する。

 この世の不条理に、彼女は声を荒らげて怒り狂う。

 そして、ペトラは左手をハルバードの方に向ける。

 (…来るか!)

 ハルバードがそれに対応するように、剣を引き抜きペトラに切っ先を向ける。

 「虚実混交アンチノミーッ!!」

 「反実仮想ドリームランナー!」

 手に、切っ先に、魔力マナを込めて、それぞれの魔法を唱える。

 戦いの、火蓋が切られる。


 「…ミカ。俺をシャスナハの元に連れてってくれないか?」

 白一面の空間の中で、祈はミカに尋ねる。

 その言葉を聞いて、最初から何もかもわかっていたかのようにミカは笑い、それを隠すかのように俯く。

 そして、真っ直ぐ立ち、真顔になる。

 「断る。」

 ミカは祈を見つめる。

 「…?」

 祈は困惑する。

 「当然だろう。お前、あの場所がどれだけ危険かわかっていないだろう。何故あんな場所に、オレが連れていかねばやらんのだ。」

 ミカはやれやれといったような態度で祈にかえす。

 「…いやでもっ!」

 「『でも』ではない。安全かどうかも、明確に分からない場所に行くことは、自殺行為でしかない。」

 祈が何かを言おうとしても、ミカはそれを遮り、有無を言わせず更に現実を突きつける。

 「…そんな…。」

 祈は呆然としてミカを見つめる。

 「全てはお前の為に言っているのだぞ?…分かったら、帰れ。」

 ミカはそう言って、項垂れる祈に背を向けて歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ