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プロポーズのじかん

ラスト、長いです!

しかし、ノリノリで書いたお話、いっぱい読んで下さってありがとうございました。

今後とも、お願いします。

ご、く。…ん。


高貴な令嬢の誘惑は、殿下とエーの腰にダイレクトにクる。

なぞられたその身体のラインは、慎ましい制服の下に、蠱惑的な身体が隠されていることを明かした。


顎をつい、と上げ、流し目を送ってくる美女の濡れる唇が、耳元で囁く様な声音で言葉を紡ぐ。


残念ですわ…このわたくしの肌を見る殿方は、もう居ないと言うことですわね…


「いやっ!あのっ!だからっ!!」

王子は真っ赤になって、空中平泳ぎを試みたが、空気を読んだアーディアに腕を引っ掴まれて阻止された。


「そ、そうよ!破棄されたみっともないあんたなんか、だ〜れも拾ってなんか」

「では、私が拾うことにしよう」


いつの間にか、大扉の前に、黒い衣装を身に纏った貴公子が立っていた。宮廷騎士の存在で、彼が高貴な人物である事が分かる。


(おい、第一王子?)

(エフ様?きゃああ!)

第一王子エフの登場である。


「ディーが要らないので有れば、私が貰おう。」

「兄上!」

「エフ?…ええっ!隠しキャラっ?」


賢明な読者はもうお察しであろうが、超美形最終攻略者、である。


エフは靴音を立ててD嬢の傍まで進み出る。

「まあ、エフ殿下。…改めてお悔やみ申し上げます。」

「ありがとう。しばらく喪に服していたが、お陰様で会葬の礼を学長に伝える程には気も晴れているよ、」


(エフの黒衣って、喪服なのよね。婚約者が病で死んで、傷心の貴公子が悪役令嬢と戦うヒロインを見て)



「エフ様っ!私はここよ!貴方のぶふっ!」

(たび)アーディアの口が塞がれる。今度はマスクメロンである。

皮の硬さにヒロインはジタバタしている。


「あ、兄上!私はまだDとは」

「ディー。そなたのお陰で王太子妃探しに奔走する手間が省けたよ。礼を言う。しかもこんな」


美しく賢く上品でそれなのに小悪魔な女性を…


エフ殿下はD嬢の前で跪き、手を差し伸べた。

「私の妻に、なっていただけませんか。」


きゃあぁぁぁ!

公開プロポーズ、来ましたわっ!!


はしたない女生徒達の黄色い声が飛び交う。


「あ、兄上っ!Dは私の婚約者ですっ!」

「何を。先程破棄したではないか。大した証拠も無く断罪したではないか。」

「えつ、あ、だ、だから、そう!曖昧でありましたので、破棄は」

「お受け致しますわ。殿下。」


おおおっ!!

王太子妃に格上げっ!

す、てきっ!

絵になりますわ〜〜


男女入り交じる興奮に、パクパクするディー王子。呆然とするエー。

新たな修羅場に、生徒総会は最高潮となった。


「D嬢」

色っぽい低めの声に、女子生徒は

んんんん〜♡と、身を捩る。


「未だFを失った傷は癒えない。貴女を哀しませる事があるやもしれない。それでもこの男の手を取って下さるか?」

「勿論ですわ。尊敬申し上げておりました。」


「大事無ければ、王太子となる。子孫は残さねばならない身だ。側室を娶る事もあるであろう。それでも正妃になってくれますか?」

「当然です。でも」


D嬢は少し頬を染めて告げた。

「手練手管を尽くして、つまみ食いでは足りないよう、貴方を籠絡(ろうらく)してみせましょう。貴方の想像もつかないような。」


くくく、とイケメンボイスのエフは

「それは楽しみだ」

と、大人な返しをした。


「で、D〜っ!貴女は先程、初夜を私に任せると、と、い、言ったばかりではないか!」

第二王子は、声を裏返らせながら、未だメロンが外れないアーディアに腕固めされつつも言い切った。


「それはアーディア様が現れなければ、という仮定でしたもの。哀れな破棄された女は、拾って下さる殿方に尽くすのが当たり前ではありませんか。」


「ご自分を哀れだなどと。

外づらだけの弟に代わり、実務も水面下の外交もこなしていた有能な貴女だ。しかも、実家は裕福な公爵家、見れば有能な友人(スタッフ)もお持ちの様だ。そして」


エフ殿下はD嬢の手を取り立ち上がると、その小さな顔を大きな手で包んだ。


「これ程の華。…美しい。」


ひゃあぁぁぁ!

身悶えした女子生徒の何人かは、湯気を出して恍惚とした。

何とも子宮にくる声である。


恥じらいながらも、ちょっとだけ殿下を睨みながらD嬢は呟く。


「……まだ、触れて良いとは申しておりませんわ」

「ははっ。違いない。ああ。君は私の理想だよ!」


男子生徒もブンブン頷く。

(金持ってて、教養つけてて、有能で、顔がよくって、か、身体も、テクも、ぐぐぐぅふ!)


一部鼻血を押さえる男子もいるが、女子もそれを非難できる筋合いではなかった。


「では、王にお伝えしよう。ディー。お前の破棄の手続きも私がしてあげるから、真実の愛に邁進しておくれ。」

「ちょおっと、待ったアー‼︎」


何とかメロンを外したアーディアである。さっきより速い。メロンは好きだったのであろう。


「エフ様っ!貴方は私と!私に出会うために学園を訪れたのよ!

そんな自分の時間を金で換算するような女より、可愛いアーディアよ!人のお古じゃ、エフ様には不釣り合いだわっ!お古より、この清純なアーディアだわっ!」


「これはこれは。ディーのご婚約者。弟には申し訳ないが、お古は君ではないかな?しかも相当古い」

「…え?」

D嬢は、またまたAを呼んだ。

「A嬢」


Aは三度すっと立ち、黒革の手帖を胸元にかざした。


「アーディア嬢。貴女がエー達を脅迫しても、無駄です。婚約者の過ちは全て承知。どんな醜聞が流れても、それ以上の殿方とのスクープを入手しておりますので、貴女が動けば即、私の手帖が新聞社に。」


「……何ですって」

脅迫には脅迫です。

ぴしりとA嬢は断じた。そして


「付け足しますと、わたくし、これでもエーを大変お慕いしております。何を申されても動じません。」


(え、A……。)

エーは、能面のようなA嬢がほんの少し火照っているのを見て、心から、心の底から、安堵した。



「……アーディア?兄と出会うために、って」

もはや第二王子はオーラが消えて搾りかすになっている。イケメンの搾りかすである。


「あ……」

「君は私ひとりを愛しているのではないのか?」

「あ、あんただって、破棄をひっくり返そうとしたじゃない!あの女の誘惑に負けて!」

「お古って!お古って何だ?」

「……あんただって美味しい思いしたでしょ?」

「私は最後までは、……っ!でていけこのスベタ!」


壇上の痴話喧嘩は余りにも醜い。

エフは蔑みの眼差しを向けた後、蕩けるような笑みでD嬢の肩を抱いた。


「さ。王宮へ。……議長?」

エフの流し目に、直線上に居た女子は死んだ。


「い、以上でっ、生徒総会をへい、閉会しますっ!…うわあっ!」

ハンマーを叩くなり、エーは吊り下げられた猫と化した。A嬢が襟首をつまんで、のしのしと出口に突撃したからだ。そのA嬢は若干火照っていた事を付記しておく。


「A様恥ずかしかったのねー。かっわいい!」

B嬢はピョンピョン跳ねて、壇上の搾りかす達の近くへ行く。


「んね!美味しかった?あ、フルーツのお代は男爵家に付けとくねー♪」


わったしも、ビイに会ってこよっと!

ルンルンの黒髪は、ツインテールをブンブンさせて退場した。


ひゅっ!

ムチが宙を切って美女の手に戻る。

「アーディア?」

「ひっ!」

C嬢がぴし、と、折り曲げたむちをしならせて微笑む。

「感謝いたしますわ。お陰で、私もシーも、新たな睦みごとに開眼いたしました。殿下。ご多幸を祈っております。では。」


女剣士は颯爽とさっていった。


波乱の生徒総会。

搾りかすは、さらに塩をなすり付けられ、干からびた漬物のように壇上で動けなくなっていた。




□□□□□     □□□□□


公爵家のお茶会は、さしずめ慰労会となった。


「結局、婚約は白紙にして、なかった事になりましたのね。あれ程外遊や外交に利用しておいて。」

銀髪の美女が、話題を切り出す。


「そうでもしないと、莫大な出費となりますからね。破棄によるダメージも大きい。これで第二王子に付いていた大臣も、喪に服すエフ殿下との婚約に文句はつけられないでしょう。」


「改めて、おめでとうございまーす!王太子妃殿下!しょーらいの国母!」


ABC嬢は晴れ晴れと、D嬢に微笑む。

ありがとうございます、とはにかんだ。


「いやー、エフ殿下が現れるとはおもわなかったよん。」

「お金もらって、御隠居でもわたくしは良かったのよ?」


「何仰っているんですか、お互い改めての一目惚れってカンジぃー。も、エフ殿下メロメローっですよね!」


「お似合いです。……それにしても、ディー殿下は残念でしたね」

「そうね。…結局アーディアも遁走(とんそう)して行方知れず。殿下は、公爵を賜って、卒業したら北で国境兵を統率されるんでしょ?」


「あそこは唯一、実戦を伴う地域ですからね。」

「帰ってこれないかもね。」


ちょっと沈黙が流れたが、直ぐにBが流れを変える。

「でも、男ってバカですよね!男社会でえー、女は無能でー、非力でー、家に閉じ込めて置けばいいって思ってるんだモン!だからあんな絞りカスになっちゃうんですよお」


「本当ね。女の怖さを知らないウブが事を起こせば返り討ちに合うのは必然。舐めないで頂きたいわ。」


「女が女同士でマウント取り合うのも、刃を磨くため。男が刃向かってきたら、全力で籠絡(ろうらく)するわ。」


「大体、阿呆よね!処女性だの聖母だの。愛する女に母親求めてるんじゃないわよ。そりゃー結婚までは清くいるわよ?でも、マグロじゃ夫は逃げていくじゃない!テキトーに男を転ばかすテクを身につけるのが淑女。結婚しても、その技を磨くのが貞女の習わし。……決して浮気じゃなくて、ね。」


「幻想抱いて、ご自分が、俺の色に染めてやる、なーんて。逆よね!」

「私達が都合のいい男にしつけてるのに、ねーっ。」


ねーっ。


と、盛り上がる庭園で、にこやかにしている執事のみが


(お嬢様。無敵でございます)


と、呟いていた。






如何だったでしょうか。

宜しければ、評価やご感想いただけたら幸いです。

こんなん書け!ってご意見でも結構です。

評価は次の読者をもたらして下さいます。

宜しくお願いします。


イー様とE令嬢は?というご質問!やり!

そうです。すっ飛ばしました、てへ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます。最後を読むと少しだけ、ディー王子がかわいそうな気がしてきます。
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