誰かが見ている九日目
翼をはためかせたその直後そこから吹雪が放たれた。
一気に周辺全てが氷に変えられてゆく。
錆びた剣を持った彼もまた猛吹雪に巻き込まれた。
走って逃げる間もなかった。
その一瞬で氷漬けにされて…
そして真っ暗になった。
☆
ある会議室。
数名の人間が円卓に集まり座っていた。
青く美しい葉を持ち、白くふわりと光る大樹が円卓のど真ん中に這えている。
その大樹が数百もの画面を
表示している。画面は大樹の周りをゆっくりと回っている。
画面を見ている一人が話を切り出した。
「氷硝獣スノー・ペガサス…ペガサスの強さは
LV…1000
LV1000というテストの満天より高い数字だ。彼はまだLV1なのに…。だめですよ…だめですよこれは!!」
彼が指差した画面はちょうど今、スノーペガサスにやられたオダケンの動画が流れていた。
「初心者さんあんなことしちゃってどうするんですかぁ!!」
もう一人も声を発する。
「カツアゲから始まってレイドボスに当たるとか…」
本来、ああいう強い敵の場合はマルチバトルで協力してあって戦う。レイドボス戦が馴染み深い。
「初心者が説明抜きでほっぽりだされて戦える敵じゃないです。あれはLV1000ですよ!LV1000!
そもそもどーしてこんなにわんさか魔物が増殖するんでしょうね?!倒してくれる人がいないんですか!」
と話し続ける。
「ナビゲーションAIはどこへ行ったんですか?丁寧にプレイヤーさんに教える役目の管理AIは!ちょっと聞いてますか!チーフ!」
周りの面々がチーフと呼ばれたその一人に顔を向けた。チーフは話した。
「どうしてだ…どうしてこうなってしまったのだ…。この世界スワロウテイル。
…NPCの自由を一番に考えた。なのに…いったい誰のせいでこうなったんだ!」
皆が一斉に叫んだ。
「お前のせいだ!!」
ごたごたと話を続けるメンバーにため息をつきながら見守っている。
黒髪の長いポニーテール。
スラリとした細身の女性…。
彼女がぼそりと呟いた。
「彼は確実にゲームをやめるだろうな…貴重で大切な初心者さんなのに…あーあ。」
一人、宙を仰ぐのであった。
☆
錆びた剣が光っているのが見えた。
光に導かれるように目を覚ます。
「はっ!!」
ここはオダケンのベッドの上だ。
ゲームからは速攻でログアウトさせられていた。
「なんだろうか…錆びた剣に助けられてゲームからだしてもらった感じだ…」
自分が味わった感覚。
身体を凍らされた吹雪の感触とその冷たさだけが残る。
一息、間をおいた。
オダケンは内心ショックだったのではなかろうか、
チンピラケンタウロスに襲われてゴールドを巻き上げられてすごい早さで負けてしまったのであるから。
そして彼は言った。
「こんなのから始まるのかぁ!すげぇー!!」
目を輝かせている。
「あれボスだ!うひゃぁ!めちゃくちゃ強い!!鍛えたらあんなやつと戦えるようになるのか!」
隣にあった枕をギュっと抱いた。
「もっと強くならないとな!俺、女の子助けるの夢だし!」
「錆びた剣さん!頑張ろうな!!ひゃー!」
等の本人は断然やる気になっていた。




