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イベント屋へようこそ ~恋愛のご相談も承ります~  作者: 山之上 舞花
第1章 一目で恋に落ちる春大作戦!
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第3話 案件『一目で気に入りました♪』 その6

◇萱間萌音の置かれた状況(本人からの告白という名の愚痴)がもう少しとその後のこと


私が一目惚れしたもの、それは……。


描かれているのは猫の絵。大き目の湯呑は黒くて白い猫が左横を向いて少し俯いた感じに描かれていて、小さめの湯呑は白くて黒猫が右横を向いて少し見上げる感じで描かれている。上手く合わせるとキスをしているように見えるものだった。


湯呑を近づけて向きを揃えて重なる様に置く。ニマニマと口元に笑いが込み上げてきた。

顔を上げて前を見たら……あれ? 課長がいない。


右横に影を感じてそちらを見たら、課長の顔が近づいてきて唇が触れ合った。すぐに離れたけど、不意打ちに胸がドキドキです。


「萱間はかわいいのな。かわいいんだけど鈍すぎ。まあ、そこもいいのだけど。これから一緒に暮らすことになるから、ゆっくり落とすつもりだったけど、予定を変えることにしたから」


もう一度顔が近づいてきて、さっきよりしっかりと唇が重なりあった。


ちょっ、ちょっと待って?

えっ?

これ誰?

穏やかな課長はどこに行ったの?

この強引な人は誰?


何度目かのキスの合間に言われたことは、外堀は埋まっていて、うちの親にも了承済みだとか。知らぬは本人ばかりなりって何?


智絵~、たすけて~。



智絵がボイスレコーダーを止めた。これは、智絵が萌音に会って話を聞いてきたものだ。


『萌音が災難に遭ったついでに桐谷宅に強引に同居作戦』は、成功に終わったようだ。だけど、萌音には桐谷氏の部屋に居ることは、不本意みたいだ。智絵のところに泊めて欲しいといってきたけど『恋人が泊まれなくなると大反対された』と、言われて引き下がったようだ。


まあ、ここからは桐谷氏に頑張ってもらうしかないわけだ。


マンション問題のことはこれからが本番だ。


松崎から協力を持ちかけられたのは、萌音が住んでいたマンションにあった。松崎は保険会社の外部調査も請け負っているそうで、最近賃貸住宅関係で保険の支払いが続いていると、保険会社から調査の依頼が来たそうだ。


同時に、賃貸物件を持っているオーナーからも、ある建設会社のところで建てた物件が、小さなトラブルが多発していて、その原因の調査は出来ないかと相談をされたそうだ。怪しいと睨んだ松崎は、その建設会社を調べ始めた。そしてどうやら手抜き工事や資材の発注を水増しして、経費を浮かせていたという事実に辿り着いた。


だけど決定的な証拠を手に入れることが出来なくて二の足を踏んでいるところに、他のマンションのオーナーが噂を聞きつけて相談に来たらしい。そのマンションが萌音が住んでいたところだった。このオーナーはしっかりした人で、マンション建設に関するさまざまな書類の複製をもらっていたそうだ。もちろん資材の発注書なども。そのオーナーからそういったものを借り受けた松崎は、実際のマンションの様子を見て、専門家に調査をしてもらうことを勧めた。


それと共に松崎は住人の名簿を手に入れて、萌音の会社の社員が五人、入居していることを知った。その彼らにも協力してもらうつもりで、清掃員に扮してモトミヤ株式会社に入り込んだそうだ。それで相馬と会い、彼が何かを調べていることに気がついて……。で、俺のところまで辿りついたんだよな~。


このあともいろいろ調査した結果、その建設会社はかなり違法なことをしていたそうで、あちこちに被害者が出ることになるようだった。そこで弁護士などにも相談しながら、被害者のオーナーたちをまとめて訴訟準備までさせたんだ。


止めとして、萌音の住んでいたマンションでの水漏れ事故。あれは実際には人為的に起こさせてしまったものだ。でも建物の歪み具合からあの事故が起きるのは、あの時から一年以内に起こることは確実だった。それを早めただけだと言っていた。それに安全を確保するために電力会社まで巻き込んで、あの日にあの周辺は停電をさせていたというから恐れ入る。


建設会社はマスコミからも連日突き上げられていた。内部告発で、発注の誤魔化しの注文書まで公に晒されてしまった。


まあ、俺には関係ないからいいけどな。あとのことはオーナーズから頼まれた弁護士がどうにかするだろう。


ああ、萌音の会社の社長にも、松崎が話しをつけていたっけな。確か、五人が住んでいる階がバラバラだから、調査のために部屋の中に入りたいと言ったんだっけ。ちなみに萌音が知らないのは、親友の智絵がお互いの部屋の合鍵を、用心のために預け合っていたからだった。だから、萌音の部屋の調査をするときは、変なことをされないようにと、智絵が立ち会っていたんだ。調査は屋根裏……つまり天井の上に入りこむことで、そこのいろいろな配管を調べたかったんだとさ。


松崎とはあの後、ひと月くらいしたところで顔を合わせた。この時に言われたことに、俺はあ然となった。


なんでも松崎は、俺と同い年で、同じ大学だったそうだ。大学で俺のことは噂になっていたそうで、だから(・・・)知っていたんだと。今回の件で相馬から俺に辿り着いて『絶対お近づきになって巻き込もうと決めた』と、爽やかな笑顔で言われた時には、ぶん殴りたくなったけどよ。


『これからも楽しいことになりそうですね』


と笑って言われたんだよ。


ちくしょう。これ以上つき合えるかってんだ!


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