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9/11

天国から地獄♪

結論から言おう。


馬券は当たった。


口で言うほど簡単でではなかったが、なんとか予想通りの結果になった。

レース中に対抗馬の眼前でフラッシュを使ったのは内緒の話だ。

この瞬間、俺たちは1億6000万以上の大金を手に入れたことになる。


 雅彦はひとり無邪気にはしゃいでいるが、俺と雄平は、なんとかなったとホッとした気持ちのほうが強かった。


「本気でよかったよ。ぶっちゃけ、高校行かなくったってそれ以上の儲けだよな」


「ああ。ぶっちゃけ俺の年収はだいたい220万だったから、えっと、……70年分以上か?」


「生涯賃金以上かよ。ていうか、億を超える支払いって現金でくれるのかな? それとも銀行振り込み?」


 そこで、俺たちは馬券を持っているはずの忠彦さんがいないことに気付いた。


「忠彦さん、どこ行った?」


「便所だろ? そういえばレースが始まる前からいなかったっけ」


「便所にしては長すぎるな」


 俺たち3人は顔を見合わせた。


 ……悪い予感がする。

いや、言い換えよう。

悪い予感しかしない。


「すれ違う可能性もあるから雄平はここで待機! 雅彦、行くぞ」


 俺たちは競馬場内で忠彦さんを探した。

95年ってのは、まだ携帯が普及してない時期だ。当時は都内でも電波が届かない場所がいっぱいあったし、電波に強いPHSが流行り出した頃だった。

当然、中学生はそんなもの持っていないし、大学生の忠彦さんが持っているかどうかも怪しかった。


「くそ、慣れちまうと携帯ないのがものすごく不便だな」


 俺は、しばらく闇雲に探した後、少し考えて馬券売り場に向かった。


「おばちゃん、さっきここですごい当たりだした人知らない?」


「すごい当たり? なんだいそれ」


「配当が1億以上のやつ」


「知らないねえ。知ってても言えないし。あんた、そいつとどんな関係なんだい?」


「一緒に金出して馬券買ったんだよ!」


 おばちゃんは、底意地の悪い笑みを浮かべた。


「あんた、それ、呑まれたよ」


「呑まれ……た?」


「独り占めされたってこと。残念だったね。今頃引越ししてドロンしてるよ」


 いや、まさか……。


俺は雄平の所に戻った。

しばらくすると雅彦も戻ってきた。

だが、忠彦さんの姿は影も形もなかった。


すでに日は暮れて競馬場の閉演時間ももうすぐだ。


俺たちは誰も喋らず、黙って駅に歩いていた。


 俺は、脚を止めて言った。


「雄平、とりあえず、忠彦ってのはおまえの親戚なんだろ?」


「そうだ、そうだよ。雄平の親戚なら金をパクるなんてさすがにないだろ!」


「……俺もそう思いたいけど」


「忠彦ってのはそういう人なのか?」


「いや、そんなことはない! 親戚連中の間では面倒見のいいお兄ちゃんで通ってるけど……」


「なんだよ。なら大丈夫だろ? きっとなんかあったんだよ。そのうち連絡があって金を返してくれるだろ」


「だといいな」


 俺がそう言った途端、雅彦は俺の胸倉を掴んできた。


「源次、おまえ、喧嘩売ってんのか?」


「……怒る相手が違うだろ。おまえがいらついてんのはわかるけど、俺だって6000万以上呑まれてるんだぜ」


「じゃあ! なんで悲観的なんだよ!」


「無意味に楽観的になれるわけないだろ?」


 俺は雄平の手を振り解いた。

雅彦は、今度は雄平に向き直った。


「雄平、忠彦さんは雄平の親戚なんだろ? 呑みパクリなんてしないだろ?」


 雄平は、下を向いたまま答えなかった。


「ちょ、ちょっと待てよ。おかしいだろ!? 親戚だぞ? そんな犯罪紛いのことしたら立場がめちゃくちゃ悪くなるだろ!」


「……1億って金は、多少悪くなっても関係ない金額かもな」


「多少じゃないだろ!」


 そこで、雄平がぼそり。


「……俺、今親戚連中の間で評価が低いんだよ。なにしろ暴力事件起こして推薦取り消しの高校浪人だから」


「? どういうこと?」


「もし忠彦さんがすっとぼけたら、親戚連中の中でなかったことにされる可能性が高い」


「……警察!」


「落ち着けよ、雅彦。まずは直接会って問い詰めよう」


「だから! どこにいるんだよ!」


「雄平。当然おまえは忠彦の家を知っているんだよな」


 雅彦の視線が雄平に移る。

雄平は、厳かに頷いた。

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