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ハイティーンギャングとの出会い

思いっきり4話目「気持ちはわかるんだけどさ」を抜かしてました。ごめんなさい。投稿したので読んでください。

始発前。


見かける人といえば犬の散歩かジョギング中の人くらいだ。


俺たち3人は、そんな静かな朝を歩いた。


身体中が痛い。

横を見れば雄平も雅彦も顔に青あざを作っている。おそらく、俺の顔も同じようなものだろう。


「……源次、これからどうするか決めてるんだろうな?」


「さあな」


 スキル『発想力』のおかげだろうか、俺の頭の中には様々な復讐方法が浮かんでいた。

どの方法で忠彦を痛めつけるのがもっとも効果的か、そんな暗い考えが頭の中でぐるぐると回っていた。


「とりあえず、一旦解散しよう。身体中が痛くてたまんねえ」


 雄平がそう言って、俺と雅彦は頷いた。

そこで、思い出した。


「……俺、自転車だ」


 今からこの身体で3時間以上かけて実家に帰るのはきつ過ぎる。

この当時、24時間の漫画喫茶があったかは覚えていないが、少なくとも目の前にはなさそうだった。


「ご愁傷さま。俺たちは始発で帰るから」


 そう言って雅彦と雄平はさっさと駅に向かって歩いていってしまった。


俺は自転車の止めてある場所まで脚を引きずりながら歩いていった。


その道中のことだ。


なにやら路地裏で物騒な物音が聞こえた。

どうやら喧嘩しているようだった。

何気なく、俺は路地裏を覗いてみた。


「なに見てんだごらあ!」


 タイミングが悪いことに、中のひとりとばっちり目が合ってしまった。

観察してみると、手ぬぐいを頭に巻いた白いジャンパーの男を紫色のジャンパーを着た3人がリンチしているようだった。


俺は、ひとつため息を吐いて路地裏に足を進めた。


「ああん? なんだおまえは!?」


「通りすがりの一般人。よくわかんねえけど、その辺にしといたら?」


「一般人なら関係ねえだろうが!」


 そう言って、紫ジャンパーのひとりは顔を近づけてきた。

 臭い息が俺の顔にかかる。

俺がちょっと動けば普通にキスができる距離。もちろんしないけど。


代わりに、俺は、紫ジャンパーの鼻面に、おもいきり頭突きをかましてやった。


鼻血を噴き出しながら後ろに倒れそうになるそいつの胸倉を掴んで、壁に押し付ける。

一瞬、残りの2人を目で牽制し、左手で首を絞めつつ右手で顔面を連続殴打。もちろん後頭部が後ろの壁にぶつかるように一発一発勢いをつけて。


うん、悪いな。八つ当たりだ。おまえらに恨みはないけど忠彦にやられた分をお返しさせてもらった。


「お、おい。もうやめろ!」


 紫ジャンパーのひとりが控えめに(完全にびびってる)そう言ったので、俺は殴るのをやめた。

そいつに俺は殴り続けたやつを突き飛ばして渡した。


「……金」


「え?」


「くだらん労働させやがって。金払え」


 気色ばむ紫ジャンパーたち。

俺は、片頬を吊り上げて言ってやった。


「冗談だ。さっさと失せろ」


 紫ジャンパーたちは、やられた仲間を抱えつつ路地裏から消えた。


俺は、さっきから無言で座っている白ジャンパーに言った。


「お~い、生きてるか?」


「……すいません、助かりました」


「もう大丈夫だな。俺は行くけど」


「ま、待ってください! このままここにいたら、俺、殺されちゃいますよ。あいつら絶対仲間連れて来ますって」


「俺の知ったこっちゃないな」


「そんな、助けたついででしょ!? 俺が殺されたらあんたも寝覚め悪いですって!」


 こいつ、図々しいな。

仕方ない。

 俺は、名前も知らない白ジャンパーに肩を貸し、路地裏を後にした。


順平! あんたどうしたのよ!」


 白ジャンパー(順平というらしい)に誘導されてたどり着いた先は、高級マンションの最上階だった。


「いてて、ディープパープルの連中にやられてたのをこの人に助けてもらったんだよ」


 俺は、近寄ってきたポニーテールの女に順平を渡した。


「てか、君もやられてんじゃん!」


 俺がやられたのは忠彦にだけど。


なにやらばたばたと騒ぎに巻き込まれ、俺は居間に案内された。


「順平が助けてもらったって。ありがとう、礼を言うよ」


 そう言って俺の対面に座ったのは、長身長髪の男だった。今の俺よりは年上だろうが、まだ10代だろう。


「俺は、『シュガー・ハイ』のリーダーをやっている館野淳だ」


「シュガー・ハイ?」


「この辺りを縄張りにしているチームだよ」


 ああ、あー、あ~。

そうだった。

90年代ってのはあれだ。

IWGPの世界だ。

カラーギャングの時代だ。

 2000年代には幹部が警察に逮捕されたり、ヤクザが出っ張ってきて尻持ちするようになり、予備軍として吸収されることになって衰退するんだけど、この頃は粋がったガキどもにとってはある意味で天国みたいな時代だったのかも。


まあ、あまり深く関わりたくない人種だ。

俺は、早々に退散することにした。


「順平のためにあんたも怪我したみたいだな」


「いや、これは別件。気にしないでくれ。じゃあ、俺はそろそろ……」


「美空!」


「は~い」


 俺の話を途中で遮って館野が呼んだのは、タンクトップにショートパンツの女だった。

歳は俺と同じくらいに見える、が、なんかエロい。

盛り上がる乳房にぱっつんぱっつんの太もも。

そんな女が俺の隣に座って手当てを始めた。


「あの……お構いなく」


「私は大場美空。よろしくね」


「少しは人の話を聞けよ」


 美空と名乗った女は俺を完璧に無視して、鼻歌などを歌いながら手当てを続ける。

俺は美空の手を邪険に払い、立ち上がった。

途端、立ち眩みが起こった。


あ、やばい。アドレナリンが切れた。


紫ジャンパーをぶん殴って興奮してたために疲れとか痛みとかどこかいっていたが、それらが利子つけて戻ってきやがった。


「おい、大丈夫か?」


「……」


 俺は、なにかを言ったと思うが少なくとも自分の耳にはなにを言ったか届かなかった。


考えてみれば、昨日は朝から張り込みで立ちっぱなしで終電で家に帰った直後に自転車で3時間を走り、さらには忠彦にボコボコにされているのだ。

若さを盾に突っ走り過ぎたのかもしれない。

30歳の時よりは遥かに体力はあるが、それでも平均よりは低いわけだし。


俺は、そのまま座り込み、穴に落ちるように気を失ってしまった。


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