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百目猫拳と猫泳拳!!

「もう外出したら駄目よ♪」


白髪のツインテールは、その可愛らしい顔を怒ったように膨らせて、俺に話しかけた。さすがに、傷が癒える前に2回続けて逃げたのは警戒を持たれたらしく、俺を逃がさないためにマリーヌがインストールされている俺の首輪に鎖をつけて動けなくするほどの念の入れようだ。


自分に直接鎖を繋がれたマリーヌも

―6将軍との戦いで、バンの体は傷んでいます。ちょうどいい機会なのでしばらく傷を癒すことに集中しましょう―


と言って、俺に休息するように勧めたので久しぶりにただのネコとしてのライフをエンジョイすることにした。


と言っても…クッションを引いた段ボールの中で寝続けるだけだが…


「ルネー。そう言えばさー、この前この猫が送られて来た時のログ見てたんだけどぉ」

俺の毛を撫でていたツインテールがうねる黒髪の大女に楽しそうに話しかける。


「あの時、猫達だけじゃなくて、一人だけ人間も混ざっていたんだよね♪」

「人間ねェ…何か面白いスキルでも持ってたのかい?」


「ん~ルネには、な・い・しょ♪」

「めんどくさい事せずにさっさと言ったらどうだい?」

「どうしてもなら力ずくで聞き出したら♪」

「…まァどうだっていいけどさァ」

「キャハハハ逃げるんだー♪」


どうやら、猫野目博士の事を話しているらしい。

それにしてもスキルとはなんなのだろうか?

疑問に思いながらツインテールを見ると、振り向いた俺の目の前。ほぼ20センチに満たないという予想外に近い位置に彼女の頭があって、どきりとする。

ツインテールはその真っ黒な目で俺を覗き込んできていた。


「ネコちゃんもひ・み・つ♪」


…なんだろう、この女は普通の人間とはずいぶん違った雰囲気だ。言う事や振舞いは若い女性そのものだけど、その皮の下には違う生き物でも潜んでいるかのような、気味の悪い圧力を俺にかけてきている。例えるなら、そう…猫を被っている…まさにそんな感じである。


そんなツインテールは何時までも、いつまでも俺を楽しそうに眺めていて、まるで俺は針のむしろのような気分。そんな毛皮の中に、虫が這いずりまわるような気持ち悪さを感じながら、俺は観察するようなツインテールの目から逃れるように、目をつぶり、眠りの世界に旅立ったのであった。



転機が来たのは1週間後。

あのツインテールは俺に常に鎖をかけると同時に、自分の手元から離さないようにしていたが、ある日急に俺の監視を緩め、トタトタと部屋の外に出て行った。そのチャンスを逃すことなく、俺は前足で鎖をそっと外すと窓のカギを開けて外に逃げ出す。


そのまま街中を走り抜けて南の大通りをかなり走った所でようやく一息をついた。


―助けてもらっていて失礼なのはわかるが…薄気味悪い女だったぜ―

―ですね…なるべくあそこには戻りたくないものです―

―だけどあそこ以外に食事を得る伝手もないしな…―


そんな事をマリーナと話しながら歩いていると、大通りの左側に大きなため池があるのに気付いた。どうやら、城門の下から川の水を引いて池にしているらしく、周囲は柵におおわれているものの、水は腐っていない。


―ため池だぜ―

―ため池ですね―

―ここがあればあそこに戻らなくても済むんじゃないか?魚もいそうだし―


―…いやですよ。私精密機械なんで…―

―防水性は完璧だろ―


―絶対イヤ!―


なんだよ。折角いい場所だと思ったのに。

でも、魚が居るかどうかだけは見ても良いよな。

どれどれ…


…小さいカニがいるぐらい?

深い所になら居るかもしれんけど、大通りの反対側の面、葦が茂ってるあたりなら、岸辺にも魚いるかもしれないな。歩き回ってみるか。


そうして池のふちに沿ってゆっくりと歩き、葦の中に足を踏み入れると…居るわいるわ。5センチほどの魚が水面に落ちた虫を食べようとわんさか集まってきていた。ちょうどおなかも減って来たし、鍛錬の意味も込めて漁をすることにする。


体を地面に伏せて待ち伏せし…たあっ

よし、小さいがまあよかろう。

バリボリ食って力も出た。


じゃあ帰るか…と思い葦の中を歩いていると、葦原の中に葦を切り倒してくりぬいたような一角があり、そこでは多数のネコが酔っぱらったかのように寝転んでいた。


何事だろう?と思い近寄ってみると…どうやらマタタビをやっているらしい!美人の飼い猫も働き者の三毛猫もみんなトロンとした目で涎を垂らして寝転んでいる!


そしてその区画の端では

「…お願いニャン…どうしても欲しいんにゃん」

と泣くように黒服猫に頼み込む子猫たちの姿があった。


黒服の怪しい猫は子猫たちに向かって、蔑みの目を向けると、『エサ持って来てないなら帰れ』とだけ言い放つ。


「生まれて2か月の僕らにエサなんて…お願いにゃん。お母さんが欲しがって動けなくなってるにゃん」

と黒服にすがりつく子猫たち。


「いいか坊主ども、マタタビはな、金持って来てないガキに売れるもんじゃねえ」

掛けたサングラスをクイクイといじりながら黒服猫はしがみついた黒ぶちの子猫を蹴り飛ばし、白い子猫を押さえつけるとその頭を前足で叩き続ける。


「つうか、お前らも一回マタタビやればよくね?味を覚えれば、きっとマタタビ欲しさにエサもすぐ持ってくるようになるからよ」

そう言って黒服はポッケからマタタビのビンを取り出すと、子猫の口元に近づけていく。


…子猫の母親をマタタビづけにした挙句、ネグレストされた子猫を更にマタタビづけにして支配しようとするなど…猫の鼻のように心の冷たい奴らよ…許せん!!


「変身ッ!獅子拳ジャー!!!」



 ―フェリス・チェンジ!mode…カトゥース!!!―


 俺の叫びと共に、辺りに緑色の光が満ちる。

 そして光が引いた後、葦原の中には全身を白い洗練されたアメショ模様の衝撃アーマーに包まれた覆面ヒーロー猫が立っていた。



  ♪♪♪♪♪♪

  説明しよう!

  『小床木バン』は正義の変身ネコヒーロー!

  猫野目博士の開発した戦闘AI『マリーヌ』と共に

  人に仇なすブラックタイガーを倒すべく現れた正義の戦士!

  バンの正義の怒りが頂点に達した時!

  マリーヌはその怒りエネルギーを衝撃アーマーに変えて

  バンを覆面ヒーローにするとこができるのだ!!!

  ♪♪♪♪♪

 

「とうっ」

変身した俺は、そのままの勢いで黒服猫にとび蹴りをかますと、子猫のそばに置かれたマタタビのビンを蹴り飛ばし、池に放り込む。


「貴様らの悪事…この獅子拳ジャーがしかと見た!ネコ麻薬をばらまくその罪をお前の体に教え込んでやろう!」


「何!獅子拳ジャーだと!!出会え出会え!曲者だ!」

黒服猫が合図をすると、何処にいたのか葦原の至る所から、黒服の戦闘服猫がやってきてバンを取り囲む。


「ニャーニャーニャー」

「むっ!相変わらずのブラックタイガーの一味か…よかろう成敗してくれる!」


『バン!我も6将軍としての責任がある!ここは我の力に任せよ!』

「そうか…では、変身ッ!エスマイル!」


 その声と共に、俺の体は茶色の光に包まれ、マリーヌが弾んだ声でナレーションする。


 ―カラカル・チェンジ!mode…カラカル!!!―


 そして光が引くと、俺はカギ爪とマントを持ったエスマイルのアーマーを装備した、美しい茶色のネコ科に変身していた。


 「跳猫拳の恐ろしさを知るがよい!」


 俺はエスマイルの力をフルに使い、戦闘猫を次々と打ち倒していく。


 そして1分もたたない内に、10匹以上いた戦闘猫は残り2匹まで減っていた。


 「これで終わりだな!喰らえ跳猫拳!!」


 そう言って飛び立った俺の体に、上空で突き刺さるような衝撃がもたらされた。


 慌てて態勢を整える俺。

 フラフラながらも地面に着地すると、俺の背中の毛皮が裂けて血が噴き出しており、マントは水にぬれたようにびしょびしょになっていた。


 「くっ・・・深手ではないが…いったい何が?」


 「ふっふっふ…拙僧の事をお忘れですかな?」


 そこに現れたのは体中に目のような模様を張り付けたアーマーを持つ盲目の6将軍…百目猫拳のテクサルカナであった!!!!





なんかコレ書いてて楽しい

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