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何度転生しても逃げられない  作者: S@Y@


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第九十話 消された名前


 応接室に、重い沈黙が落ちた。


「アレクシス……。」


 リゼリアは、紙に書かれた名前を見つめる。


「お父様。本当に、この名前を知っているの?」


「ああ。」


 公爵は頷いた。


「だが、私が知っているのは名前だけだ。」


「どういう人なの?」


「それが分からない。」


 公爵は苦い顔をする。


「古い家系図を調べた時、この名前だけが不自然に消されていた。」


 ノアが尋ねる。


「いつ頃の人物ですか?」


「エレノアと同じ時代だ。」


「では、エレノアと関係があった可能性が高い。」


「そう思う。」


 リゼリアはペンダントを見つめた。


「でも、どうしてその名前が今になって出てきたの?」


 ノアが答える。


「誰かが、この秘密を探しているからだろう。」


「そして、そのために君を狙っている。」


「……。」


 リゼリアは黙り込んだ。


 すると、レオンが口を開いた。


「父上。」


「アレクシスという人物について、他に手掛かりはないのか?」


「一つだけある。」


 公爵は立ち上がった。


「昔、父から聞いた話だ。」


「アレクシスという名前は、エヴァンローズ家の人間ではない。」


「え?」


 リゼリアが顔を上げる。


「では、誰なの?」


「それが分からない。」


 公爵は首を振った。


「ただ、エレノアがその人物を守っていた。」


 ノアが考え込む。


「エヴァンローズ家の外の人間を、なぜそこまでして?」


「分からない。」


 その時。


 捕らえられていた男が、突然笑った。


「やっと気づいたか。」


 ノアが男を見る。


「何がだ?」


「アレクシスを探しているのは、俺たちだけじゃない。」


「……どういう意味だ?」


 男は答えない。


 ただ、リゼリアを見た。


「お前の母親に聞けばいい。」


 リゼリアの表情が変わる。


「……お母様?」


「あの人なら、知っている。」


「何を?」


「アレクシスが誰なのか。」


 公爵の顔が険しくなる。


「待て。」


 男は意味深に笑う。


「エレノアの秘密は、まだ終わっていない。」


 その直後。


 男が懐から何かを取り出そうとした。


「動くな!」


 騎士が押さえる。


 だが、男の手から小さな紙が落ちた。


 ノアが拾う。


 そこには一行だけ。


『次は、エヴァンローズ夫人だ。』


「……!」


 リゼリアの顔から血の気が引いた。


「お母様が狙われる……?」


 ノアはすぐに立ち上がった。


「レオン。」


「ああ。」


 レオンも頷く。


「すぐに夫人のところへ向かう。」


 リゼリアも立ち上がる。


「私も行く。」


「もちろん。」


 ノアが手を差し出す。


 リゼリアはその手を握った。


「今度は、お母様を守る。」


「ああ。」


 二人は急いで部屋を出た。


 しかし――。


 誰も気づいていなかった。


 窓の外。


 遠くから、エヴァンローズ公爵家を見つめる人影があった。


「……やっと、ここまで来たか。」


 男は小さく笑う。


「次は、母親だ。」


 そして、その手には――。


 リゼリアが持っているものと同じ、銀色のペンダントが握られていた。

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