第104話 地下の扉
リゼリアが鍵を差し込む。
カチリ、と小さな音がした。
鉄の扉がゆっくり開く。
中には、古い書庫が広がっていた。
壁一面に本棚が並び、机の上には厚い記録簿が置かれている。
「ここは王宮の地下書庫だ」
レオンが周囲を見回す。
「存在を知っている者は、王族でも限られているはずだ」
リゼリアは机の上の記録簿に近づいた。
表紙には、こう書かれている。
――《王家秘録・エレノアの記録》。
「また、エレノア……」
ノアが記録簿を開く。
最初のページには、エレノアが王家に仕えていたことが記されていた。
だが、数ページ進んだところで、文章が途切れている。
その先には、別の紙が挟まれていた。
『エレノアは、王家の命に背き、指輪を持ち出した』
リゼリアの顔が強張る。
「エレノアが……盗んだ?」
「この一文だけでは判断できない」
ノアが冷静に言った。
レオンも続ける。
「後の記録が抜き取られている。誰かが、彼女を罪人に見せたいのだろう」
その時、書庫の奥から物音がした。
全員が振り返る。
棚の陰から、黒い外套の男が姿を現した。
「それ以上、読む必要はない」
男の手には、古い記録の束が握られていた。
リゼリアは一歩前へ出る。
「あなたが、アレクシスを名乗った男ね」
男は答えなかった。
ただ、リゼリアの胸元のペンダントを見つめた。
「……やはり、エレノアの血は残っていたか」
ノアがリゼリアの前に立つ。
「お前は何者だ」
男は静かに外套のフードを下ろした。
「私の名は、アレクシスではない」
そして、握っていた記録の束を机に置いた。
「だが、アレクシスの真実を知る者だ」




