エピローグ「伝説のフワフワ城」
数百年後。
その城は、伝説として語り継がれていた。
「魔王城」。
かつては恐怖の代名詞だったその場所は、今では世界中の人々が憧れる聖地となっていた。
「ねえ、知ってる? 魔王城に行くと、どんな不眠症も治るんだって」
「あそこのクッションに座ると、幸せになれるらしいよ」
「魔王様とリノ様の愛の力で、城全体がパワースポットになってるんだってさ」
観光客たちが、ガイドの案内で城を見学している。
城内は、長い時を経ても色褪せることなく、温かな光と柔らかな布で満たされていた。
歴代の魔王たちは、初代ザルドリスとその妃リノの教えを守り、城を「快適に」保ち続けていた。
「ようこそ、魔王城へ」
現在の魔王が、ふかふかの玉座からにこやかに手を振っていた。
その膝の上には、リノが遺したレシピで作られたぬいぐるみが抱かれている。
城の奥深く、かつてリノとザルドリスが暮らした部屋は、今は立ち入り禁止の聖域となっている。
そこには、二人が愛用したクッションと、書き残した「快適生活の心得」が大切に保管されているという。
――巣作りとは、愛すること。
その言葉通り、この城は今日も、訪れる全ての人々を温かく包み込み、癒やし続けている。
生贄だった少年が紡いだ、優しくて温かい革命の物語は、永遠に語り継がれていくのだ。




