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サイアク  作者: 駄犬
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5-5 逸材

 真弓と雷矢の騒動から数分後。

 俺たちはワープでサテライトへ帰ってきた。

 福岡であった事を報告するため。そして、二人の過去を調べるため。

 二人の過去がサテライトに来て分かるかは置いておいて。

 俺達はゲノムさんの元へ行く為に、廊下を歩いていた。

「……いつ見ても、やっぱり凄いなここは」

 目の前の現実に、つい言葉が漏れる。

 サテライトの建物はどこか近未来的。

 全体的に白を基調としており、壁も床も例外なく白。廊下には高すぎる天井につけられた白いライトと、10mを優に超えるだろう扉。窓はなく、閉鎖的。

 近未来的でありながら、病的でもあるこの空間は、俺の人生から見れば異質な空間だ。

 てか、サテライトの中から外の景色を一回も見た事ないけど、どうなってるんだろ……

「真弓と雷矢の事を調べる前に、ゲノムさんの報告が先だからな」

 隣を歩く戒刃が釘を刺すように俺達に言い放つ。

「はいはい、わかってますよ」

「はい」

 そう俺とシロアが返事をする。しかし、一人だけ返事がない。

「……ここがサテライト……」

 返ってきたのは感嘆。犯人は槍華。

 犬のように首を振り、廊下をあっちこっち観察している。その眼は星が塗されたように輝いていた。

 実際、この光景はかなり非日常でテンション上がるのは分かる。

「SF感すごいよな、アニメとかでしか見ない」

「凄い! パチンコの通常ステージみたい!」

「未成年だよな?」

 その感想が出るのはおかしい。こいつ未成年なのになんでパチンコの通常ステージが分かる?

「クソッ……緑保留か……」

「未成年だよな?」

 舌打ちをする槍華に反射的に突っ込む。パチンコの打ちすぎで幻覚まで見え始めてる?

 そんな毒にも薬にもならない事をしていた時。

「暁理!!」

 背後から、聞き慣れた声が聞こえて振り返ると、そこには白衣を着たまま駆け寄るゲノムさんがいた。

「あ、ゲノムさん。戻りました!」

 俺は手を挙げて答える。ゲノムさんの元へ行くつもりだったのに、来てもらえるとはラッキーだ。

 しかし、そんな能天気な考えは一瞬で消し飛ぶ。

「おかえりじゃない!!

 その叫びには、嬉々も安堵もない。あるのは、まるで息子が事故にあったかのような焦燥。

 その切迫に俺はつい息を呑んでしまう。

 そして、ゲノムさんは俺の肩をガシッと掴み、目を合わせる。前髪は汗でぺたっとついており、掴まれた肩はギリギリと力が入っていた。

 そして、ゲノムさんは叫んだ。

「八木の『デザイア』は!?」

「……え?」

 その発言を、俺は理解できなかった。

 八木の『デザイア』って、あの瞬間移動とか転移できる『デザイア』だよな?

「暁理、お前が八木を殺した時、『デザイア』は何処かにあったか?」

 ふと、戒刃が腕を組みながら、冷静に言葉を放つ。

「えっと……」

 俺は記憶を巡らせる。

 八木は『デザイア』の拒絶反応により、人格と肉体を崩壊させながら『デザイア』を使用していた。

 その八木を殺した俺は、その後、特になにも確認せずに槍華達の元へ戻った……あれ?

「……もしかして、『デザイア』回収してない? 俺?」

 嫌な汗が止まらない。

 八木を殺して『デザイア』を止めた。でも回収してない。

 つまり、『デザイア』はまだ福岡に……八木の死体の何処かにあるのではないか? そもそも『デザイア』がどんな形をしているのかを知らないが。

「やばい! 早く回収しないと!」

 俺がそう叫ぶと、戒刃がふーっと息を吐いて、口を開く。

「……いや、『デザイア』は回収した」

「誰が!?」

「お前だよ。暁理」

 一瞬の静寂。そして。

「……いつ?」

 つい質問が落ちてしまう。心当たりがなさすぎる。

 そう言うと、戒刃がため息を吐いた。

 それは落胆や軽蔑から来るものではなく、なにか厭なものを直視した時に出るものに見えた。

「落ち着いて。順を追って説明するね」

 ゲノムさんは俺から手を離し、白い壁にもたれかかりながら淡々と説明を始める。

「まず、『デザイア』には種類がある。暁理と八木の宿してた『デザイア』は別物なの」

「はい」

 これは前に聞いた事がある話だ。『デザイア』は七種類あると。

「そして、適合者が宿せる『デザイア』は一種類しかない。肉体が拒むのよ。血液型と一緒ね」

「なるほど」

「でもね、暁理。貴方の中には二種類の『デザイア』が宿ってる」

「……はぁ」

「なにその反応!?」

 ゲノムさんが叫ぶ。

 いやまぁ確かに、一種類しか宿せない『デザイア』を二種類宿せるのは凄いのかも。例えるなら、俺の中には二種類の血液が巡ってる感じ?

 ただ、それ以上に実感がない。なにより、どのタイミングで八木の『デザイア』が俺の中に宿った?

「そもそもの話なんですけど……なんで俺の中に八木の『デザイア』があるんです? 回収なんてした記憶ないですよ」

 俺がそう問いかけると、ゲノムさんは冷静に淡々と答える。

「殺した時だろうね。零奈を筆頭に、適合者は『デザイア』に侵食された生命体を殺して、相手の『デザイア』を自身の体内に回収できるの」

「初耳なんですけど」

「言ってないからね。こうなるとは思ってなかったから」

 ゲノムさんは白い壁から離れて、こちらに歩きながら話を続ける。

「暁理の場合は違う。暁理は宿している『レッド・デザイア』とは別種類の『デザイア』を殺した。つまり回収できないはず。なのに、暁理は八木の『デザイア』を宿してる」

 ゲノムさんは目を細めながら、俺の胸に手を乗せる。

「私がさっき検死したけど、八木の死体の中に『デザイア』の反応はなかった。そして、ここに二種類の『デザイア』の反応が有る」

「……わかるんですか?」

「わかるよ」

 ゲノムさんは俺の胸に額を当てて、ボソッと呟く。

「……零奈はこれを分かってたのかな」

「零奈?」

「……なんでもない」

 ゲノムさんは身体を離して、真剣な声色で告げる。

「『デザイア』の適合者であっても、種類が違う『デザイア』を宿す事はできない。それは歴代の適合者も、零奈も例外じゃない。でも暁理はそれが出来ている。二種類の『デザイア』を宿して尚、肉体と精神を損なっていない」

 ゲノムさんは真剣な声色で続ける。しかし、その声はどこか震えているようにも聞こえた。

 

「零奈にも出来なかった『デザイア』の複数適合。暁理、貴方はこの二億年以上生まれてこなかった、逸材よ」

 

「……へー」

 感想が口から落ちる。

「緊張感ないなぁ!!」

 ゲノムさんは背中を仰け反らせながら叫ぶ。芸人の反応。

 急にそんな逸材とか言われても困る。そもそも八木の『デザイア』が俺の中にあると言われても、俺自身がその実感ないから、「へー」以外の感想が出てこない。

「ゲノムさんは褒めてないぞ。むしろ、危険度が上がったんだ」

 唐突に戒刃が腕を組みながら、硬い声色を放つ。

「危険度?」

「別種の『デザイア』を回収できるのは、前例がない。一種類の『デザイア』適合者でも異世界の権力者達が喉から手が出るほど欲しがってる。お前が二種類、もしくはそれ以上の『デザイア』を回収できる場合、お前の価値は莫大に跳ね上がる」

「がんばリー◯エぐらい?」

 槍華が唐突に話に割り込む。それ以上はいけない。

「あ、君が槍華君だよね? ごめん、挨拶が遅れたね。私はゲノム」

「かっけー名前っすね! 俺は槍華です! 呼び捨てでいいっすよ。よろしくです!」

 二人は手を伸ばして握る。身長差のせいか、ゲノムさんが槍華の顔を見上げる姿勢になる。てか、握手ってサテライトでも挨拶の典型なのかな。

 チラッと戒刃を見ると、話が遮られた事に苛ついているのか、青筋が立っていた。

「それで! 俺もここに入れてください! 暁理達と一緒に戦うんで!」

 その言葉に、ゲノムさんがピクッと体を揺らした。

「……ふーっ」

 そして小さく息を吐くと、槍華を見上げて問いかける。

「槍華はさ、これから暁理達と一緒に戦うの?」

「ん? はい」

「本当にそれでいいの?」

 ゲノムさんはいつものように明るく問いかける。けれど、何かを試しているようにも聞こえた。

「暁理と一緒に戦うってことは、『デザイア』の争奪戦に身を投じるって事。殺したくない殺しもするし、死にたくないのに死ぬ」

 槍華はゲノムさんの言葉を淡々と聞いていた。

「暁理は『デザイア』の複数適合が出来る異常個体の可能性がある。てか、多分そう。希少な力を求めて、これから多くの刺客が暁理を狙うだろうね」

 ゲノムさんの明るい声色が、少しだけ澱んでいく。

「多くの敵意と殺意が君にも向けられ、傷つけられ、いつか殺されるかも。はっきり言って、君が暁理達と一緒に戦うメリットなんて一つもない」

「え? ありますよ? 風雅も飛鳥を生き返らせるって」

 槍華はあっけらかんとした顔で答える。

 その言葉を聞いたゲノムさんは目を大きく開いた。

「……生き返らせる?」

 その言葉が予想外だったのか、ゲノムさんはただ槍華の言葉を繰り返した。

 それに槍華は爽やかに微笑み、力強く告げる。

「はい、『デザイア』の力で生き返らせるって。暁理と約束しました」

「暁理、後でマジ殴りね」

「なんで!?」

 ゲノムさんは防御力が下がりそうなほどの鋭さで、こちらを睨みつける。

 ダメっすか!? 零奈を生き返らせる時と一緒に槍華の親友も生き返らせるだけですよ!?

 そんな俺の動揺を他所に、槍華は爽やかな笑みを崩さずに言い放つ。

「つーか、そもそも俺たち友達ですから。もう友達が俺の知らない所で死ぬなんて、勘弁ですよ」

「……だから戦うと?」

「はい」

「……いい心意気だね」

 ゲノムさんはニヤッと笑いながら、槍華の背中をバシッと叩き、意気揚々と叫ぶ。

「よし、君のサテライト入りを認めよう! 手続きはこっちでやっとくからね!」

「ん! ありがとうございます!」

 槍華が嬉しそうにそう応える。

「で、二人は?」

 ゲノムさんはシロアと戒刃に目を向ける。恐らく、『危険度が上がった上でまだ俺と一緒に戦うのか』という問いだ。

 シロアはすーっと息を吸って、両手をギュッと組みながら応える。

「わ、私も暁理さんと一緒に戦います……の、で!」

 その言葉はオドオドとしながらも、確かな決意を持っていた。

 ……ちょっと嬉しい。

「……俺は降りたい」

 一方で、戒刃は腕を組みながら顔を青くする。

「けど、やりますよ。やるしかないんで」

 ため息を吐き、嫌々ながら応える。お前は絶対逃がさねぇからな。

「とりあえず、報告は以上です。それで……」

「真弓と雷矢の事でしょ? あれはこっちで調べておくから、今日は休んで」

「なぜか見透かされてる」

 真弓と雷矢の事、伝えてないよね? 怖いんですけど。

「それと、明日の昼から訓練だからね」

 ゲノムさんは両手をパンッと叩いて、嬉しそうに言い放つ。

「訓練ってどんなヤツなんですか?」

 槍華が手を挙げて問いかけると、ゲノムさんはニヤニヤとしながら答える。

「みんなには『魔女』になってもらいます」

お読みいただきありがとうございます。

カグラバチアニメ化やったああああ!!!

キャワイイネー!!

お前らクビだ…!

心臓は左だな?

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