9.沈黙の王都
「……街が見えてきたな」
陽斗が呟きながら、遠くに広がる王都を見つめる
「……どうした?」
隣を歩く王女が、急に口を閉ざし表情を曇らせたのが気になった。
「……いえ、なんでもないわ」
そう言いながらも、どこか寂しげな声だ。
目の前に広がる街は、魔王軍の支配を受けて荒廃し、静けさと不穏さが入り混じった独特の雰囲気を漂わせている。
「遠目からでもわかるな……物騒な雰囲気が漂ってる」
陽斗は目を細めて、街の様子を観察した。
「全部、魔王軍が来てからよ」
王女は拳を握りしめ、歯を食いしばる。
街の入り口に近づくと、巨大な城門がそびえ立っている。その前では、鋭い目をした魔物の兵士が門番をしており、通行人を厳しく監視していた。
「門番はいるが、正面から入れそうだな」
「無理よ」
「どうしてだ?」
「どうしてって……あんたねえ」
王女は呆れた顔でため息をつきながら、自分を指差した。
「私は王女よ? 顔を見られたらまずいでしょ?」
「ああ、そういうことか」
陽斗は納得したように頷きつつ、あっさり言った。
「じゃあ、俺の『転移魔法』で中に入ればいい。これほど近くに目的地があるら、狙った場所に転移できそうだ」
「ちょっと待って!」
王女が慌てて手を挙げて制止する。
「なにか……嫌な予感がするから、別の方法を探しましょう。」
「遠慮してるのか?」
「……違うわよ。あなたの転移魔法、絶対にトラブルを呼ぶから。」
「ひどい言い草だな」
「信用できないわ」
王女は即答する。
「……じゃあ俺一人で行ってくるから、ここで待っていろ」
「それもだめよ。あなたがいないと、いざという時、逃げられないでしょ? ここだって安全とは限らないわ」
「いざとなったら自分で逃げられるだろう。行ってくる」
「だから待って! 王女である私がいなければ、例えこの国に味方がいても信用されないわよ?」
「勇者だから問題はない……いや、証明するものはないか」
「そうよ。だからまずは慎重に作戦を考えましょう」
陽斗たちは城門の周囲を観察しながら、どのように街へ潜入するかを考えた。
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