表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水滸幸伝~王倫・梁山泊にて予知夢を見る~  作者: シャア・乙ナブル
32/167

第三十二回 心理戦!? 王倫対呉用

王倫(おうりん)晁蓋(ちょうがい)の面会直前になり、晁蓋側の代表三人として晁蓋、呉用(ごよう)公孫勝(こうそんしょう)選出(せんしゅつ)される。呉用は万が一に備えて晁蓋を(まも)る役目として晁蓋と呉用、三人目に劉唐(りゅうとう)()すつもりだったが、


学究(がくきゅう)(呉用の字)、ワシも行くぞ。王倫なる人物、是非(ぜひ)見てみたい」


と珍しく譲らなかった。そうなると劉唐、(げん)兄弟がここに残る事になる。この四人では問題を起こす可能性が否定できず、公孫勝に阮兄弟の手網(たづな)を任せたかったというのが呉用の本音だ。しかしこうまで言うからには何か考えがあるのだろうと呉用が折れた。


「よいな。くれぐれも短気を起こして騒動をやらかしてくれるなよ?」


晁蓋が釘をさしてはいるものの呉用には不安がつきまとう。彼等も晁蓋には従うが、逆にその晁蓋の危機には自らの危険も(かえり)みない。


(晁蓋殿を心配するあまり相手を刺激する行動をとらねばよいが……)


一抹(いちまつ)の不安を残して三人は宋万(そうまん)に案内され先に進んだ。呉用はせめて王倫が自分達の来訪を予測していた可能性を二人に伝えたかったがその機会には恵まれなかった。


「晁蓋殿達をご案内してきました!」

「宋万ご苦労」

「はっ!」


三人の眼前に一人の男が立っている。


(この男が王倫……)


風貌(ふうぼう)大柄(おおがら)な晁蓋と違い、中肉中背(ちゅうにくちゅうぜい)白衣(はくい)を着た中年の書生(しょせい)といった感じで呉用と(かぶ)る。


(だ、だが……)

「私が梁山泊の首領、王倫です。何かお話しがあるとか」

(この(まと)う雰囲気は……阮兄弟の言っていた人物とはとても思えぬ)


呉用はそう思ったがおそらくそれは間違いないのだろう。晁蓋すら言葉を選んでいる様子が見れるし、公孫勝が一言「ほう?」と(つぶや)いたのも聞き逃さなかった。


(これでは最悪の場合梁山泊の首領と副頭目を一掃(いっそう)し、我等の新天地にするという手は使えない)


そもそもこの計画は前提(ぜんてい)に『王倫が梁山泊の者達に(うと)まれている』という条件が満たされている必要があったが、実際はそれが真逆であるだろうと悟った訳である。


「王倫殿、ワシは道士の公孫勝と申す者。道号(どうごう)一清道人(いっせいどうじん)。ここへは初めて来ましたがとても良い所ですな」


色々考えている呉用を他所(よそ)に公孫勝は唐突(とうとつ)に自己紹介を始めた。これは彼なりの援護(えんご)で、時間を稼ぎつつも会話の中から使えそうな要素を引き出して呉用と晁蓋に有利な条件を整えろという姿勢も含んでいる。


「道士の方ですか。長身で体格の良い方もおられるのですな。……ああ、失礼。私の知る『そのような方々』の印象が根強く残っている所からの発言です。しかしありがとうございます。そう言われるのは嬉しく思います。ですがそれは寨の皆の努力の賜物(たまもの)で私は何もしておりませぬよ」


この謙遜(けんそん)外面(そとづら)を取り(つくろ)狭量(きょうりょう)の男の発言とは呉用は思えなかった。焦りは感じられず、むしろ落ち着いている。


(この余裕はやはり我等の来訪を知っていたのではないだろうか。だがそれにしては……)


知っているのは何故か。そこに生辰網(せいしんこう)が絡んでいるから。しかし王倫はそこには全く触れてこない。呉用はいまいち王倫の真意をはかりかねていた。


そこへ事態が変わるきっかけが起きた。外から銅鑼(どら)太鼓(たいこ)の音、人の怒号(どごう)などが風に乗って聞こえてきたのである。


「王倫殿、今のは一体……」


晁蓋が王倫に質問した。


「ははは。単なる手下の調練ですよ。……と言いたい所ですが招かねざるお客人を追い返したのでしょう。思ったより早かったようですな」

「!?」

「!!」

「! ほう……」


今の発言で晁蓋と公孫勝も気付いたと呉用は確信した。呉用は意を決して口を開く。


「王倫様。王倫様は我等がここに来る事を分かっておいででしたな? 腹の探り合いはここまでにしてここからは本音で話をしたいと思うのですが」


この相手には隠し事は悪手になる。呉用は本能的にそう感じた。


「本音ですか? ……まだ役者が揃ってはいませんが良いでしょう。晁蓋殿の知恵袋の呉用殿がそう仰られるならこちらも(やぶさ)かではございません」

(こ、この王倫という男!)


呉用は阮兄弟の話だけを鵜呑(うの)みにし、梁山泊について念入りに調べなかった事を後悔する。だがこの相手に自分の弁舌(べんぜつ)を存分にふるえると思うと気持ちが(たかぶ)り、高揚(こうよう)している己を自覚するのもまた確かなのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ