ユニークスキル
道中、万里乃はジンからもらった新しい武器を装備した。
すると、万里乃の目の前にユニークスキルを獲得しました。と、文字が表示された。
スキル一覧には「絶対安全領域」というスキルが追加されていた。
「絶対安全領域ってどんなスキルなんだろう」
「ユニークスキルか?」
「うん」
「試しに発動してみたらいいんじゃないか」
冬牙がそう言うと、すかさずヒュウナが
「やめときな。冒険が終わる前にMPが尽きちまうぞ」
と、制止した。
「万里乃の場合はMPが∞だから問題ないと思うぞ」
「∞だぁ!?そんなの聞いた事ないぞ!お前ってちんちくりんに見えて強かったんだな!」
ヒュウナは驚きを隠せず、声を張り上げた。
「ち、ちんちくりん……」
万里乃は遠回しにディスられて少し落ち込んだ。
「MP∞とか羨ましい限りだな、そこら辺の雑魚敵倒し放題じゃねぇか!」
「いえ、私の場合は回復に特化してるので攻撃は出来ないんです」
「ふーん、変わった特性のやつもいるんだな」
ヒュウナは何処かつまらなそうな返事をした。
「まぁでも、取り敢えずユニークスキルはいざという時に使うのをお勧めするぜ。MPは減らないとしても、身体に相当な負担がかかるからな」
「そうなんですね。それならやめておきます」
「その口ぶりだと、ユニークスキルを使った事があるのか?」
冬牙の質問にヒュウナは表情を暗くした。
「まぁ、過去に1度だけあるけど、それについてはこれ以上聞かないでくれ。俺にも、もちろんヒュウナにも」
「そうか。嫌な事を思い出させたみたいで悪かったな」
「いいんだ。誰だって忘れたい過去くらいあるだろ?それより、今からあれに乗って離島に行くぞ」
そう言って、ヒュウナが指をさした先を見ると、小型の船が岸に浮かんでいた。
「この世界にも船があるんだな」
「俺はあんたらの世界がどんなとこかは知らないけど、船があるのは当たり前だぞ」
そうか、ヒュウナに憑依している精霊はこの世界で形成されたものだから向こうの世界を知らないのか。それでも俺とまともに会話出来ているのが不思議だ。
冬牙はこれが仮想世界かと、感銘を受けた。
「ほら、早く乗るぞ」
冬牙達はヒュウナに続いて船に乗り込んだ。
ヒュウナは船と陸を繋ぐ綱を外して、表示された画面を操作すると船にエンジンがかかり、動き始めた。
船はブォォオオと音を立てて、水飛沫をあげながら進んでいった。海はとても澄んでいて、光の反射で海面がキラキラしている。少し冷たい潮風が冬牙達の髪をはためかせ、潮の香りと共に通り抜けていった。
「うわぁ!凄く綺麗!」
万里乃は目を輝かせながら船から見える景色を見渡していた。
「確かに綺麗だな」
船に乗ったのなんて何年ぶりだっけな。本当に小さかった頃に一度乗った記憶くらいしかない。
その時は船酔いして二度と船なんて乗らないって思ってたけど、今こうして見ると海ってこんなに綺麗だったんだな。
「あ!冬牙見て!あそこにイルカみたいなのがいるよ!」
万里乃の指差す方を見ると、かなり離れた所でイルカのような魚の群れが海から飛び出したり、潜ったりを繰り返しながら泳いでいた。
「あー、あれは波おこしって呼ばれてるモンスターだな。モンスターって言っても別にこっちがちょっかいかけなかったら特に何もしてこないよ」
「へぇ〜、詳しいですね!」
「べ、別に。こんなの知ってて当たり前だ」
ヒュウナは万里乃に素っ気ない態度をとったが、内心は照れていた。
「けど、なんかこっちに向かってきてないか?」
「んー?そうか?」
ヒュウナはもう一度、目を凝らして波おこしの群れを観察した。すると、群れの奥から大きな黒い塊がぬっと現れたかと思うと一瞬で波おこしの群れを飲み込んでいった。
黒い塊はその勢いのまま海に潜り、一瞬尾びれを見せると、海面から居なくなった。
残った波おこし達は凄い勢いでこっちに向かってきた。そのせいで波が荒れ、冬牙達の乗っている船が激しく揺れ始めた。
「やべぇ!このままじゃ転覆しちまう!」
「ちょっ、待って!私泳げない!」
「ヒュウナ、こういう場合はどうすればいいんだ?」
「流石に俺もこんな状況初めてだから分かんねぇよ!とにかく船に掴まって波がおさまるのを祈るんだ!」
「そんなぁ!」
万里乃は近くの持ち手に掴まって涙目になっていた。
群れが近づくにつれ、波は大波となって船に押し寄せてきた。
その瞬間、船が波に激しく揺さぶられたかと思うと、持ち手から手を滑らせた万里乃が勢いよく船から放り出されてしまった。
「万里乃!!」
冬牙は万里乃に手を伸ばしたが、間に合わなかった。
それと同時に冬牙とヒュウナは船と共に大波にのまれた。
そして、冬牙とヒュウナはその衝撃で気を失ってしまい、海底へ沈んで行った。




