村の発展計画
村長の家につくと、あの時は警戒していた獣人達が冬牙達を快く村長の元へ案内してくれた。
中に入ると、村長が藁を編んでできた座椅子に腰掛けていた。
ジンに通訳してもらい、朝の早朝から村人達皆んなで歓迎の儀式を行うことを知った。
そして、その後寝床へ案内してくれた。冬牙達は今日の出来事や明日の祭りの事などを話していつの間にか眠りについていた。
次の日の早朝、トリタール城から派遣された兵士達を連れてソイルがやってきた。
ソイルは村長に挨拶に行こうとしたが、儀式の準備をしていると話すと、その場で待機していた。
すると、次第に村の真ん中に村人達が集まり始めた。
その人数の多さは予想を遥かに超えていた。下手すればトリタール城下町の人口かそれ以上かもしれない数だった。
村人がごった返す中、村長の挨拶で歓迎の儀式が始まると、獣人の女性達が踊り始めたり、色々な人達にお酒を配り歩いたりと一気に村中がお祭り騒ぎになった。
冬牙もお酒を勧められたが、この後のことを考えて断った。万里乃は元々お酒が得意ではないらしく、代わりにジュースを飲んだ。ラピは酔った人達と一緒に踊っていて酒を勧められる雰囲気ではなかった。
しばらくして儀式が終わると、早速ソイルは兵士達に命令し、学校を建設し始めた。設計図を見せてもらうと、現実の学校とは違い、教会な様な建物が描かれていた。
一方、万里乃は村の女性達に呼ばれて何処かへ連れていかれてしまった。
兵士達の指示を終えると、ソイルは冬牙に話しかけてきた。
「学校の建設以外で他に必要なものはありますかな?」
「後は安全に暮らせる住居だな」
「確かにそうですね。まずは村のどこにどんな家を建てるのかを考えなくてはならないですね」
「そこはラピを交えて村長とそっちの設計士に決めてもらおう」
「かしこまりました」
ソイルはそういうと、兵士を一人呼んでその旨を伝えた。
「後ほど設計士を連れて参りますので、差し支えなければ、その旨をニサンゴ村の村長にお伝えしていただけますか」
「大丈夫だ。ラピにそう頼んでおくよ。ありがとう」
「それでは、私はここで失礼させていただきます」
ソイルは一礼すると、予定を控えているのか、足早に馬車に乗り込み村を出た。
冬牙はラピに村長への伝言を頼むと、もう一つお遣いを頼み、その場で別れた。
すると、ジンが何十人もの若い獣人達を引き連れてやってきた。
「どうしたんだ?」
「いや、こいつらが何か出来ることがあれば手伝いたいってさ」
「そうか、兵士達に聞いてみるよ」
冬牙は兵士達にそう伝えると、物資の運搬を手伝って欲しいと言われた。
それを聞いたジンは、兵士と獣人の仲介に入り、獣人達と一緒に運搬を始めた。
冬牙は少し離れた人気のない場所に座ると、もう一度村を発展する計画を頭の中で組み立てた。
まずは人間と獣人が敵対する根本的な問題を解決する為に言葉を教えないといけない。
その為に必要なのが学校だ。そして、今それは建設中だ。
それと同時に安全に暮らせる家と十分な食事、そして着心地の良い服が必要だな。
後必要なのは、人間と共存する為の何かだ。
うーん、どうしたらいいだろうか……。
冬牙は暫く考え込んだ。
すると、突然閃いた。
そうか!まずは、人間達の生活に必要な物をここで生産して、人間達の生活に必要不可欠な存在になればいいんだ。
この世界で必要不可欠なものは武器や防具だ。それをこの村で大量に生産する事ができれば……。
しかし、それには問題があった。この世界にログインした時点で既に職業は何かしら決まっているはずなのだ。
まずはどんな職業がいるか調べないとな。その為にはラピが戻ってくるのを待つしかないな。
冬牙はラピの帰りを待つ間、ジン達と一緒に物資の運搬を手伝った。
数時間が経った頃、ラピが馬車を引っ張って村に戻ってきた。すると、その後ろにゾロゾロと別の馬車が連なっていた。
「冬牙殿!頼まれたものを買ってきたズラよ!それじゃ皆んなここにお願いするズラ!」
ラピは馬車の持ち手を下ろして、開けた場所に立つと、手を振って合図した。すると、後ろをついて来た馬車の運転手が2人がかりで一斉に大きな木箱を運び始めた。
「ありがとうな、ラピ」
「お安い御用ズラ!」
運ばれてきた大きな木箱を開けると、そこには沢山の洋服が入っていた。
「ラピ、村長や村人達をここに呼んでくれ」
「了解ズラ!」
ラピは走って呼びかけに行くと、ゾロゾロと村人達が集まってきた。
そして、総長から順に服と靴を1人ワンセットずつ配布していった。
村人達は喜んで新品の服や靴を装着した。その中には感動して泣いている者もいた。
服装が変わるだけでこんなに村の雰囲気が変わるんだな。
冬牙はそう感心した。
「喜んでもらえて良かったズラ」
ラピもそんな村人達の反応を見て喜んだ。
これで、まず衣食住の衣は解決したな。
続いて冬牙はラピに固有の職業を聞いてくれと頼んだ。しかし、ラピは少し困った顔をした。
「冬牙殿、実はわい達には固有の職業という概念は無いんズラ。わいの盗賊っていうのは自称であって、固有の職業ではないんズラよ。期待に応えられなくてすまないズラ」
ラピは残念そうにそういった。
「いや、そんな事はないよ。寧ろそれで良かった!」
「そうなんズラか?」
ラピは冬牙がなにを考えているのかいまいち予想がつかず、複雑な顔をした。
「とにかく、安心してくれ。この村は今からとんでもない村になるぞ!」
そうと分かれば、ニサンゴの村をこの世界で一番大きな生産地にするぞ!
冬牙はそう意気込むと、だんだんと楽しくなってきてニヤケが止まらなくなった。
「ふ、冬牙殿。こ、怖いズラよ」
ラピは冬牙のこんな顔を見るのは始めてだと、身震いした。
誰もが、まさか冬牙がそんな壮大な計画を立てているとは知る由もなかった。




