大富豪
「学校を作るって言っても、何を教えるズラか??」
「勿論、人間の言葉だよ。お前が5年間で培ってきたものを皆に教えてあげるんだ」
「なるほど!それぐらいならわいにも出来るズラ!」
「そうと決まれば、まずはこの村の村長に話をつけよう」
ラピは獣人の子供に村長の居場所を教えてもらい、冬牙達を案内した。
村長が居るという家に向かう途中、壁の穴や陰に隠れて獣人達がこちらを警戒しているのが分かった。
村長の家に近づくと、10人くらいの男の獣人が槍や弓を持って冬牙達を取り囲んだ。
獣人達は鳴き声をあげ始めた。恐らく、立ち去れや、何をしに来たと言っているのだろう。
すると、ラピはボンッと音を立てて元の大きさに戻った。
「ひっ!?」
ソイルはびっくりして腰を抜かした。
「大丈夫か?」
「し、失礼しました!突然の事で思わず驚いてしまいました。申し訳ありません」
「気にしなくていいズラよ」
ラピはそう言って冬牙達には分からない動物語で獣人達に話しかけた。獣人達はそれに反応して返事したり話したりしている。
「うーん。人間は信用ならないから、わいだけだったら村長に会わせてやるズラって」
「そうか。それなら村長にこう伝えてくれ」
冬牙はこの村を発展させるために協力したいからまずは学校を作らせて欲しいとの旨を伝えてくれとラピに頼んだ。
「それじゃあ行ってくるズラ!」
ラピは2人の獣人に連れられ、屈みながら家に入っていった。その間、冬牙達は槍を向けられ警戒されていた。
暫くして、家のドアが開いたかと思うとラピがでてきた。すると、その後ろからヨボヨボの犬耳がついたおじいさんが、杖をつきながら出てきた。
外で待っていた獣人は驚いたようにそれを見て何か話していた。恐らく村長が出てきたことに驚いているのだろう。
「冬牙殿!話してきたズラよ!そしたら、村長さんが直接冬牙と話したいズラって」
「分かった。ありがとう」
冬牙はラピに通訳してもらい、この村に発展させる計画を村長に話した。獣人達は首をふったり村長を説得させるような仕草をしたが、村長の意思は固かった。
「このままじゃ獣人は居場所が無いまま滅びてしまうズラ。だから、この機会に人間と分かり合えるようになりたいズラって」
「それなら話が早いな。あとは王国側とどうするかを決めないとな」
「そちらの方は私にお任せ下さいませ。早くても明日から動くことが出来るでしょう」
「そうか。それなら俺達は1度トリタール城下町に戻って明日またここに来る事にするよ」
「それでしたら、ここで契約書等の手配を致しますので少々お待ち下さい」
ソイルはこの領地を譲渡するという契約書や今回の村の発展に賛同するという同意書を冬牙や村長に渡してサインさせた。そして、冬牙達はトリタール城下町まで馬車で送ってくれた。
「それでは明日からまたよろしくお願い致します。村の発展に力を貸してくださり本当にありがとうございます!」
ソイルは一礼して再び馬車に乗ると馬車は城へ向かって走っていった。
「ふぅ、やっと解放された」
「お疲れ様。だけど今からが忙しくなりそうだね」
「ほんとだよな。けど、引き受けた以上仕方がないよ」
「わいも仲間の為に頑張るズラ!」
小さくなっているラピは1番やる気に満ちていて、ぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「とりあえず、明日の為にここでやり残していることを片付けないとな」
「やり残していること?」
万里乃は首を傾げた。
「あ!わいの宝!」
「あとは馬車と俺達の武器だ。昨日ジンから完成したってメッセージが届いてたんだ」
「そうだったね!完全に忘れてた」
冬牙達はまず鑑定所へ向かった。
「おぉ、やっと取りに来たわい。いつの間にか英雄になってるもんだから、てっきりこの事忘れとったんじゃないかって心配してたんじゃよ」
「心配かけてすまなかったな」
「それで一体いくらの値がついたんズラか?」
「聞いて腰を抜かすんじゃないぞ、これが小切手じゃよ。すぐに銀行に持って行きなされ」
そう言って渡された小切手の金額欄には89400500092ピカと見たことの無い数字の羅列が書かれていた。
「一十百千……は、800億ズラ!?」
「800億だと!?じいさん、これ書き間違いじゃないのか?」
「何を言うとるか!間違いじゃないわい。ちゃんとなんじゅっかいって計算したもんね」
鑑定士はふんっとそっぽを向いた。
「わ、悪かったな」
「はっ、はっ、はっぴゃか……はっぱくおく?」
万里乃は驚きすぎて目がぐるぐるまわっている。
「ラピ、お前凄いな!」
「こ、こ、こんなの1人で使い切れないズラよ!」
「それなら村を発展させる資金にすればいいじゃないか」
「確かにそうズラな!けど、冬牙達にも恩を返すためになんでも買ってあげるズラ!」
「いや、俺はヒモになるつもりはないぞ……」
「ヒモなんてとんでもないズラ!遠慮するなズラよ!とりあえず早速、銀行にいくずら!」
ラピは小切手を咥えると、万里乃の胸元に詰め込んだ。
「良かったな、万里乃。少し大きくなったぞ」
「ねぇ、ラピ。なんでも買ってくれるっていったよね??」
「いいズラよ!何が欲しいズラ??」
「あの冬牙とかいう変態を一生喋れなくする拷問器具が欲しいなぁ」
万里乃は黒いオーラを出しながら冬牙を見てニヤッと笑った。ラピはそれを見てガタガタ震えた。
「すいませんでした!」
冬牙は土下座してなんとかその場を乗り切ろうとした。
「さ、ラピ行こ?」
万里乃は土下座姿の冬牙に目もくれず、怯えるラピを抱えて店を出ていってしまった。
「青年よ、グッドラック」
鑑定士は冬牙にただ一言だけそういった。
冬牙は店から出ると万里乃達の姿は無かった。今追いかけたところで機嫌を損ねるだけだと思い、一足先に武器屋に行くことにした。
「おう、冬牙じゃないか!お前英雄になったんだってな」
「まぁな」
「なんだよ、テンション低いな。あれ、万里乃ちゃんは?」
「察してくれ」
「んー、よく分かんねぇが女の子はデリケートなんだからな。扱いに気をつけねぇと」
ジンは腕組みをして頷くようにそういった。
「そうだな」
「まぁ、その話は置いといて。とんでもない良作が出来たんだよ!早く見てほしくてうずうずしてたんだ」
そう言うとジンは早速、机の上にナックルと指輪を並べた。
「特に万里乃ちゃんの武器なんだけどな、武器専用スキルを見てくれ!」
ジンは武器スキル一覧を表示させて冬牙に見せた。
「珍しいスキルが付いてるだろ?ほら、ここ!」
ジンの指さす先をみると、そこにはユニークスキルと書かれていた。
「このスキルがどうしたんだ?」
「はぁ!?おいおい、まさかユニークスキルを知らないのか!?」
ジンは自慢する相手を間違えたと言わんばかりに頭を抱えた。
「あのな、ユニークスキルってのはこのゲーム世界でその人しか持つことができない唯一無二のスキルなんだぞ!しかも、このスキルを引き出すことが出来る武器は5万本に1本しか生成されないと言われているんだ。そして、その5万分の1が万里乃ちゃんの武器で生成されたんだよ!」
ほんとに凄いことなんだぞ!と、ジンは凄さをアピールした。
「確かにそれはすごい事だな……」
「だろ!?ユニークスキルはこれを装備した人によって上書きされるから早く万里乃ちゃんに装備してもらってどんなスキルが出るのかわくわくしてたんだが、まさかお前さんと一緒じゃないって……」
その時、店のドアが開いた。
「おぉ!噂をすれば万里乃ちゃんか!?」
しかし、店に入ってきたのは全然知らない白髪でショートカットの女だった。
ショートカットの女は店に入るや否や両手で拳銃をかまえ、なんとその銃口を冬牙とジンに向けたのだった。




