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エピローグ

 あの痛ましい大戦から二年弱が経過していた。リスタ王国は未だに復興の途上である。以前のように活気はあるがどこか陰りがあった国民たちも、本日ばかりは大いに盛り上がっていた。


 本日は女王生誕祭、つまりリリベットの十二の誕生日である。



 リスタ王国 王城 控え室 ──


 純白のドレスに身を包んだリリベットは、目を瞑って鏡の前で座っていた。その周りには、化粧などの身支度を施しているマリーたちメイドたちがいる。


 相変わらずの完璧な動きでテキパキとリリベットの身支度を整えたマリーは、リリベットの肩をそっと叩く。それに合わせてリリベットは目を開けると、鏡に映った美しく変わった自分の姿に驚いていた。そんなリリベットにマリーは微笑む。


「とてもお綺麗ですよ、陛下」

「うむ……」


 やや緊張気味に微笑んでいるリリベット。


「あっ!?」


 突然、後からメイドの驚いた声が聞こえてきた。マリーが振り向きながら尋ねる。


「騒がしいですよ、どうしたのですか?」

「そ……それが、ブーケを忘れてしまったようで、い……急いで取ってきます」


 マリーは慌てて出て行こうとしたメイドを止めると


「私の分担は終ったから、私が取ってくるわ。貴女は続きをしていなさい」


 と言いながら、控え室の外へ出て行ってしまった。


 しばらくして準備が終わりマリーを待っているリリベットの耳に、赤ん坊の声が聞こえてくる。いつまでも泣き止まない声に、リリベットは席を立つと隣の部屋に向かった。



◇◇◆◇◇



 リスタ王国 王城 衣装室 ──


 この部屋はドレスなどの衣装が置かれている部屋で、今日はメイドたちの控え室として使われていた。その部屋の中心ではメイドたちが慣れない手つきで、アワアワと泣いている金髪の赤子をあやしていた。


「どうしたのじゃ?」

「あっ、陛下! すみません、突然泣き出してしまいまして……」

「ふむ……どれ、貸してみるのじゃ?」

「えっ!? いけません、ドレスが汚れてしまいますよ!?」


 リリベットは慌ててながらそう言ったメイドから赤ん坊を受け取ると、ピタリと赤ん坊は泣き止み、リリベットを見つめながら


「まぁまー?」


 と、ご機嫌な感じで笑い出したのだった。リリベットも赤ん坊に向かって微笑む。


「ママの香りがするのじゃな? 可愛いやつなのじゃ」


 リリベットは赤ん坊を寝かせ付けるように、ゆっくりと揺らし始める。しばらくして赤ん坊はトロンとした表情で眠りについた。


 そこへブーケを持ったマリーが帰ってきたのだった。


 マリーは赤ん坊を抱いているリリベットに驚いた様子で近付くと、ブーケを隣にいたメイドに渡してから赤ん坊を受け取った。赤ん坊はギュッとマリーを抱きしめると幸せそうな顔で眠っている。


「くくく……やはりママの方が良いらしいようじゃな」


 この赤ん坊はラッツとマリーの娘で、約一年ほど前に生まれた双子である。


「陛下、ドレスは大丈夫ですか?」

「うむ、皺もないし、よだれもついておらぬのじゃ」


 リリベットは着ているドレスを確認しながら答える。ほっとため息をつくとマリーは抱いている赤ん坊を、もう一人が寝ている揺り篭に寝かせつけ、リリベットの方を向くと微笑みながら告げた。


「陛下、そろそろお時間ですよ」



◇◇◆◇◇



 リスタ王国 王城 バルコニー ──


 リリベットはファンファーレが鳴り響く中、フェルトのエスコートされてバルコニーの端に設置された壇上へ向かって歩いている。よく晴れた青空に国民の歓声が鳴り響いている。


 リリベットとフェルトが壇上に上がると、国民の歓声はさらに高まった。


「おぉ、あれが陛下か!?」

「お幸せに~!」

「女王陛下に祝福を!」


 歓声は単純な祝福の声と、美しく成長したリリベットの姿に驚く声が半々といった感じだった。歓声にリリベットは大きく手を振って国民の声援に応えていた。


 国民たちは美しく成長したリリベットのことを、幼女王とは呼ばなくなり……以後『幼女王』の名は演劇と歴史書のみ残ることになるのである。


 リリベットが手を振るのをやめると音楽隊もファンファーレを止め、同時に国民も少し静かになる。


「皆の者、本日はわたしの誕生を祝って貰い感謝するのじゃ! わたしも十二歳となった。わたしリリベット・リスタと、隣にいるフェルト・フォン・フェザーは、本日をもって夫婦となり、皆と共にこの国を支えていくことを誓うのじゃ」


 リリベットの宣言に国民たちは手にした花びらを撒きながら、再び盛大な歓声を上げたのだった。


 リリベットは国民に対して笑顔は絶やさず、隣にいるフェルトに尋ねる。


「もう宣言してしまったのじゃ。後悔しても後戻りは出来ぬのじゃぞ?」

「後悔なんてしないよ、リリー。きっと君も、この国も幸せにしてみせるさ」


 フェルとはそう言って微笑む。リリベットは、その言葉に少し恥ずかしそうにはにかむと、手にしたブーケを空高く投げるのだった。


 今、心の底から感じている幸せを次の世代に、そんな願いを込めて……。




END.

挿絵(By みてみん)





ここまでお読みいただきありがとうございました。

このエピローグから10年後を描いた後日談的続編『幼女王と再出発(リスタート) After Story』もよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n6816ez/

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