第1話 現実はそう甘くない
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勇者サイジョウ・カズキ殿
次の新月までにフロアボスの討伐報告がなかった場合は、勇者としての市民権を剥奪し、国外追放とします。
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「なんでこうなるんだよぉ...」
俺こと、西条和樹の異世界ライフは終わりを告げようとしていた。
それもこれも、全てはこの『金運』なんて外れスキルを引いてしまったせいだ。
***
これは3ヶ月前のことだ。
高校で授業を受けていると、教室の床に魔法陣が出現し、俺たち1年4組は異世界へ召喚された。
そして勇者として召喚された俺たちには魔族や魔物という化け物と戦う契約が強制的に結ばれていた。
まぁ驚きはしたが、別に気にはしなかった。
なぜなら、こういう時のお約束があったからだ。
そう、俺たちには勇者としての異世界チートがあった。
あったはずだった...。
皆が『剣聖』とか『賢者』とか『聖騎士』みたいなかっこいい才能を手に入れているのに、俺のは外れもいいところだった。
――『金運』自身の財が増える
ただこれだけだ。
召喚主である国王は俺たちに魔族の居城であるダンジョン攻略を命じた。
当然、俺はキレたさ。
こんな能力で、一体どうやって戦えっていうんだって。
金を稼いで戦えってか?
でも、誰も俺の言うことなんか聞いてくれなかった。
ダンジョンは世界中にあり、全部で15らしい。
俺たちは31人だ。
国王は2人1組で攻略にあたるよう言った。
となれば誰かが余る。
そう、俺だね。
クラスで唯一戦闘能力のない俺とペアを組みたがるやつなんか1人もいなかった。
というか友達がいないし、スキルに関わらず誰も組んでくれなかったかもしれないけど。
そんなこんなで、俺は少しの金とナイフや水袋なんかの基本装備の入ったカバンを持たされ、1人でダンジョン近くの街に強制転送された。
それから、というもの俺は必死に頑張った。
俺の『金運』は戦闘能力こそないものの、金を稼ぐということに関してはチートと言わざるを得なかった。
街を歩けば金貨に当たる。
歩いているだけで気づけばポケットに金貨入っていた。
たまたま助けた人が大商人でお礼に空き家を貰ったりもした。
この世界に来てから一か月で底辺貴族と同じくらいの財産を築き上げることができた。
でも、それだけだ。
ダンジョン攻略には糞の役にも立たなかった。
手に入れた金で上質な装備を買ってダンジョンに潜ってみた。
でも、身体能力が日本にいたころと同じだから剣なんて振れないし、鎧なんて身に着けたら重くて動けない。
なら人を雇って戦ってもらおうと思った。
案の定、冒険者ギルドがあったから依頼を出したら、ろくに使えもしないゴロツキしか集まらなかった。
そもそも国の頭がなんとかできないから、異世界から勇者を召喚するとかいうギャンブルをしたんだろう。
むしろ、金だけあって権力のない俺よりも、金も権力もある貴族や王族の方がよっぽどできることは多い。
何かしようにも、街に出ると『金運』のせいで強制的に俺の財産を増やすようなハプニングに巻き込まれるからうかつに外も出歩けない。
***
「詰んでんじゃん...」
振り返ってみて改めて自分の置かれた状況に絶望した。
国外追放は事実上の死刑宣告だ。
人類国家はその周囲を結界にて守っている。
一歩外に出れば、魔族が生み出した魔物がうじゃうじゃいる。
俺みたいな一般人が国の外に出れば30秒で死ぬだろう。
それが嫌ならダンジョン攻略をしろと召喚主様はおっしゃっている。
そのダンジョンは魔族の根城、そして魔族は魔物を生み出す。
うん、当然ダンジョンには魔物がいるよね。
無理だね。
「詰んでんじゃん...」
俺はもう一度、呟き顔を手で覆った。
しかし、ここでウジウジしているわけにはいかない。
何か行動を起こさなくては。
ダンジョンの天井を崩してフロアボスを生き埋めにするか?
それとも、毒ガスを充満させて倒すか?
いや、高威力の爆薬やフロアボスを倒せるだけの毒ガスが街の市場で売っているとは到底思えない。
そんなものが普通に売られているなら、テロでも起きてこの国はとっくに潰れているだろう。
「まぁ...部屋で考えててもしょうがないか」
『金運』の能力が鬱陶しくなってきて、最近は家に引きこもっていた。
日本にいた頃は、アニメやラノベを見て、俺も異世界に行けば楽しい生活を送れるだろうと思っていたのに。
異世界も現実だったのだ。
「はぁ...」
とりあえず、街に行こう...。
もしかすると、現状を打開できるような品が街に流れ着いているかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、俺は三週間ぶりに家を出た。
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