U.17「海底企業戦士」
◆イーコ&ゼプシオン:古代技術書探索
テコイレィが支社長ヘビーに連れ去られた直後、イーコはゼプシオンを担いだまま廊下の陰に身を隠した。
「......よし、今のうちに技術書を探そう」
「おい、俺をもう少し丁寧に扱えよ。発掘物だって痛みは感じるんだぜ」
「発掘物は喋らないの。静かにして」
ゼプシオンは口を尖らせたが、状況が状況だけに従うしかなかった。
海底支社の内部は、地上の企業本社とほとんど変わらない構造だった。ただし、壁のあちこちに水圧対策の魔法陣が刻まれ、廊下を歩く魔族社員たちは皆、海藻のような制服を着ている。
イーコはテコイレから聞いた情報を頼りに資料保管庫へ向かった。
途中、魔族社員がすれ違うたびに緊張が走る。
「イーコ、あれ・・・・・・」
ゼプシオンが小声で指差した先には、巨大な水槽のような部屋があった。中には魔具人形のパーツが浮かび、魔力の代わりに“生命力”を注入するための装置が並んでいる。
「・・・・・・これがオーバーライドの実験施設......?」
イーコは息を呑んだ。
だが、立ち止まっている暇はない。
二人は資料保管庫の扉へと急いだ。
扉には厳重な封印魔法が施されていたが、テコイレィが渡してくれた“合鍵魔法”が役に立った。
「開いた......!」
中には、古代文字で書かれた分厚い書物が棚にぎっしりと並んでいた。
イーコは震える手で一冊を取り出す。
「これ・・・・・・僕の持っていた古代技術書と同じだ。」
ゼプシオンは担がれたまま、棚の上段を見上げた。
「おい、あれ・・・・・・“オーバーライド以前の技術体系”って書いてあるぞ」
「本当だ......!これは絶対に持ち帰らないと!」
イーコは興奮を抑えきれず、次々と書物を袋に詰めていった。
しかし――
その背後で、誰かの足音が近づいていた。
テコイレィvs支社長ヘビー:心理戦
一方その頃、テコイレィは支社長ヘビーに別室へ連れ込まれていた。
「いやぁ、チュウネン。久しぶりだな。昇進したんだって?いやあめでたいめでたい」
ヘビーは巨大なサーモンのような顔を揺らしながら笑った。
テコイレィはチュウネンの声色を完璧に再現し、落ち着いた態度を装う。
「ええ、おかげさまで。支社長もお変わりなく」
「ところでだな......」
ヘビーは目を細めた。
「お前、最近本社に戻ってこないじゃないか。何か隠してることはないだろう
な?」
(やば......!)
テコイレィは心臓が跳ね上がるのを感じたが、表情は崩さない。
「支社長こそ、海底支社の管理は順調ですか?古代技術書の扱いは・・・・・」
「おっと、話を逸らすなよ」
ヘビーはテコイレィの顔を覗き込む。
「お前、なんだか・・・・・・前より背が縮んだか?」
(バレる・・・・・・!?)
テコイレィは必死に笑顔を作った。
「最近、研究続きで姿勢が悪くなりまして」
「ふむ・・・・・・」
ヘビーは顎に手を当て、じっとテコイレィを観察する。
そのとき、部屋の外から警報音が鳴り響いた。
「資料保管庫に侵入者資料保管庫に侵入者!」
ヘビーの表情が一変する。
「......チュウネン。お前、何か知っているな?」
テコイレィは冷や汗を流しながら、必死に言葉を探した。
二つの流れが交差する
資料保管庫の前では、イーコが袋を抱えたまま立ち尽くしていた。
目の前には、魔族の警備員が数名。
「発掘物が・・・・・・動いてる・・・・・・?」
ゼプシオンがイーコの肩から降り、拳を構えた。
「悪いが、ここは突破するぜ!」
同時に、別室ではヘビーが立ち上がる。
「チュウネン、ついてこい。侵入者を捕まえるぞ」
テコイレィは青ざめた。
(やばい......このままじゃイーコたちが・・・!)
◆海底支社・資料保管庫前戦闘開始
警報が鳴り響く中、イーコは袋いっぱいの古代技術書を抱えたまま立ち尽く
していた。
廊下の奥から、魔族の警備員が三名、槍を構えて迫ってくる。
「侵入者を確認。確保する!」
「イーコ、来るぞ!」
ゼプシオンはイーコの肩から飛び降り、拳を構えた。
海底の水圧に耐えるための魔法が全身にかかっているとはいえ、動きは鈍い。
だが、彼は構わず前へ出た。
「発掘物が・・・・・・動いてる・・・・・・!?」「やばい、上級品だ!」
警備員たちがざわつく。
ゼプシオンはニヤリと笑うように言った。
「悪いが、発掘物は暴れるぜ!」
次の瞬間、ゼプシオンの拳が水を切り裂き、警備員の槍をへし折った。水中での動きは重いはずなのに、彼の拳はまるで地上のように鋭い。
「ぐっ......こいつ、ただの魔具じゃない!」
「イーコ、後ろに下がってろ!」
イーコは袋を抱えたまま、壁際に身を寄せる。
「ゼプシオン、無理しないで!水中だと魔力の流れが――」
「わかってる!けど、やるしかねぇ!」
警備員の一人が魔法陣を展開し、海水を刃のように変化させた。
「《水刃術・スライスウェイブ》!」
鋭い水の刃がゼプシオンへ迫る。
「ゼプシオン!!」
だがゼプシオンは、床を蹴って横へ跳び、刃をギリギリで回避した。
「危ねぇな・・・・・・水で斬るとか反則だろ!」
「文句言ってる場合じゃないよ!」
イーコは袋を抱えたまま、魔法陣を展開した。
水中でも発動できるよう調整された風魔法が、イーコの周囲に泡のような障壁を作り出す。
水刃が障壁に当たり、弾けた。
「イーコ、お前・・・水中で風魔法を?」
「さっき研究室で見つけた盾だよ」
「天才かよ!」
二人は息を合わせ、警備員たちに対抗する。
別室テコイレィvsヘビー・スモークサーモン
警報音が鳴り響く中、支社長ヘビーはテコイレィ(チュウネンに変装中)を鋭く睨んだ。
「......チュウネン。お前、何か隠しているな?」
(やばぁ・・・...完全に疑われてる・・・・・・!)
テコイレィは必死にチュウネンの声色を保つ。
「支社長、落ち着いてください。私は――」
「黙れ」
ヘビーは巨大な手を伸ばし、テコイレィの肩を掴んだ。
「侵入者が現れた直後にお前が来るとは・・・・・・偶然にしては出来すぎている」
(終わった・・・・・・!?)
ヘビーの目がギラリと光る。
「チュウネン。お前、変装魔法を使っていないだろうな?」
(バレたら殺される・・・・・・!)
テコイレィは震える手で杖を握りしめた。
「支社長...............私は――」
その瞬間、部屋の外で爆発音が響いた。
ドオンッ!!
ヘビーが振り返る。
「......今の音は?」
テコイレィはチャンスを逃さなかった。
「支社長!侵入者が資料保管庫に向かったようです!私が先に行って足止めします!」
「待て、チュウネン!お前はここに――」
テコイレィはヘビーの制止を無視し、全力で走り出した。
(イーコ、ゼプシオン・・・・・・!今行くから!)
資料保管庫前戦闘激化
ゼプシオンは警備員の一人を殴り飛ばし、もう一人の槍を蹴り折った。
だが、三人目の魔族が巨大な水球を作り出す。
「《水牢術・アクアプリズン》!」
ゼプシオンの周囲に水の檻が形成され、動きを封じる。
「くっ・・・・・・動けねぇ・・・・・・!」
「ゼプシオン!!」
「イーコ、逃げろ!俺は———
イーコが叫んだその瞬間
「置いていくわけないでしょ!!」
廊下の奥から、テコイレィが飛び込んできた。
「イーコ!ゼプシオン!下がって!!」
テコイレィは杖を振り上げ、詠唱する。
「《カイジョ》!!」
杖の先から放たれた光が水牢を一瞬で蒸発させ、警備員たちを吹き飛ばした。
ゼプシオンは自由になり、息をつく。
「テコイレィ・・・・・・助かったぜ!」
「当たり前でしょ。私がいないと何もできないんだから!」
テコイレィは胸を張ったが、その背後から重い足音が響いた。
ドスン······ドスン......
支社長ヘビースモークサーモンが、怒りに満ちた顔で現れた。
「・・・・・・チュウネン。いや誰だ貴様らは」
三人は同時に息を呑んだ。




