U.12「名前を入力してください」
長々と。
「上太郎……俺たちは、必ずお前を取り戻す」
魔法陣が淡く輝き始める。
チュウネンが魔力を流し込み、イーコも両手を合わせて祈るように魔力を注いだ。
空気が震え、光が器の内部へと吸い込まれていく。
――魂の移動の儀式が始まった。
光が強まり、イーコは器の面にある微かな熱を感じた。
それは、確かに上太郎の魂が呼応している証だった。
やがて光が収まり、魔法陣の輝きが消える。
「……成功した、のか?」
イーコが器を覗き込む。
しかし――器は動かない。
チュウネンが眉を顰み、渋い顔をした。
「……反応がない。魂が定着しなかった可能性が高い」
イーコは首を振った。
「そんなはずはない。上太郎は……必ず応えてくれる」
そのとき、器の目が――淡く光った。
「……っ!」
イーコが息を呑む。
チュウネンも驚きに目を見開いたが、すぐに冷静さを取り戻す。
「残留魔力の反応かもしれん。まだ判断はできん」
だがイーコは器の手を握り、必死に呼びかけた。
「上太郎――聞こえるか? 俺だ。戻ってきてくれ」
――その頃、上太郎は深い闇の中にいた。
暗闇の中、どこまでも響く超越的な声が問いかける。
「異世界を救うための準備はできたか」
上太郎は戦いの記憶を思い出し、腕が重くなる。
「やっぱり俺には荷が重すぎだぜ」
その弱音に、声は冷徹に告げた。
「悪いがお前はこの異世界でしか生きられない体になった。」
上太郎の心臓が跳ねる。
続けて声は言う。
「この異世界を救えるのならきっと元の体に戻るだろう。最後に成長する力を与えよう。
その言葉は”リラート”、そしてそれを使える唯一の魔具人形、
上太郎。お前は今から生体魔具人形=ゼプシオンを器にこの異世界を救うのだ。」
光が上太郎を包み、意識が現実へと引き戻されていく。
――イーコとチュウネンが見守る中、器の目が一瞬だけはっきりと明るくなった。
「動いた……!」
イーコの声が震える。
チュウネンも驚愕を隠せない。
そして器は、ぎこちなく口を開いた。
「名前を入力してください」
その無機質な声に、二人は同時に固まった。
「……上太郎、なのか?」
イーコが問いかける。
しかし器は反応しない。
ただ、淡々と同じ言葉を繰り返す。
「名前を入力してください」




