#7:食堂騒動
第7目です。今回は急展開!相変わらずリアルが忙しいです。来週も日曜日のみの投稿となります!
〈お知らせ〉
プロローグ編は次回で終了です。その際作品のタイトルを変更します!
その日、俺がどこかに行かないようにと3つベットをくっつけられ右腕を美涼に、左腕を瑠光に絡められて、動けないようにされて寝かされた。愛月は恥ずかしながらまだ無理ですっ、と言って1人で寝た。
翌朝、目が覚めると両腕の感触はなかった。起きると一斉におはようと言われたのでおはようと返しておいた。部屋を出ようとしたら急に愛月が俺に右腕を絡めてきた。
「今日は私が側にいる番ですからね」
相変わらず可愛い。
だが、今日は大変なことになりそうだ。
食堂に行くと早速武田が、
「お前、誰の許可で我らの天使愛月ちゃんと腕を組んでいっ」
と何かを言おうとしたが、言い終わる前にクラスの女子たちにはねのけられた。
「愛月ちゃん、ついにヒカル君と付き合うことになったの?」
それを見た美涼と瑠光が慌てて否定しに行こうとすると、
「なら俺と付き合ってよ美涼ちゃん?」
小笠原が美涼の前に立ってそう言った。その近くで瑠光も上杉に同じようなことを言われていたが。
「「あの2人は付き合ってないし、私は振られてない!」」
と怒る。そこにいきなり伊藤が飛び込んできて、
「なぁにを出しゃばっているんだい2人とも、美涼さんと瑠光さんはぼくのものだよ?」
めんどくさいやつだな。
助けに行きたいのだが、愛月は美涼たちの様子に気づいていないのか、腕をつかんだままだし女子たちの質問攻めに狼狽して抜け出すこともできない。頼れそうな人を考えた時にふと橋本の顔が思い浮かんた。
慌てて探すが橋本は見つからない。
人の気配がして振り返って見ると、食堂の入り口から山本さんが入って来た。
――そういえば、橋本と山本さんは仲が良かったんだよな。山本さんなら分かってくれるはず。
俺が山本さんのほうを向くと目があった。
そして目線で合図をすると察してくれたらしく、走って食堂を出て行った。
するとすぐに、橋本がやってきた。橋本は真っ先に伊藤たちにしかりつけるのではなく、一度伊藤と小笠原たちを離した。
その隙に美涼と瑠光はこっちに逃げて来た。
俺は橋本があの瞬間での最高の選択をしたと思った。やっぱり、あのメンバーの中であいつは尊敬できる。
――本当になんであのパーティにいるのかわからない……あの伊藤でさえも橋本によって収められた。
これで、ようやく収まったかと思っていたのだが……
なんと瑠光が腕を絡めてきたのだ。昨日からなんでこいつらは俺に構うのか。
それを見た女子たちがさらに騒ぎ出した。
「きゃーっ!瑠光さんのものだったの?」
「愛月ちゃん、盗られちゃったの?」
女子たちが騒がしい。誰が俺と付き合うかが、気になっているらしい。迷惑なやつらだ。
大体、あいつらが俺のこと好きなわけないだろう……
第一、俺に好きな人はいない。確かに可愛いと思える人はいるが、人を好きになったことはない。
そんな騒ぎをしていると王女たちが入ってきた。
美涼や瑠光、愛月は明らかにホッしているように見えた。騒動が収まると思っているのだろう。
だが、俺には嫌な予感しかしない。
こういう場合、騒動は大きくなってしまう傾向がある。
そしてティーシャ王女の口から告げられたのは俺の予想をはるかに超えたものだった。
「えーっ…...勇者の皆様方は訓練もある程度はこなされて、強くなったことかと思います。なので、勇者様方には地方の人々を救ってほしいのです」
全員が一瞬にして固まった、もちろん俺も驚いた。
まさか旅に出ることになるとは。聖なる勇者がいなかったから厄介払いされたのだろうか?
…みんな、すまない。
とはいえ、ちょうどいい機会かも知れない。1人で行動しないと動きづらいことも出てくるだろうし。
そんな考えごとをしていたら、美涼が俺の横に来た。
「ヒカル、私と一緒に行かない?」
「いや、俺は1人で旅をしたい」
もちろん、即答だ。魔王や他の4属性の能力を人の目の前で使うわけにはいかない。
すると瑠光もやってきて、
「ヒカル~、瑠光とパーティ組んでよぉ~」
「いや、だから、俺は1人でのんびり旅をしたいんだけど」
諦めの悪いやつらだが、ちゃんと断らないと。能力を試すにはソロのほうが都合がいい。
ここで折れるわけには……
「ヒカルさん、私たちを守ってください。じゃないと私、怖くて……」
愛月が潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
周りの視線もそろそろ気になってきたりもして、上手く断れない状況を作り出していた。そんな見つめられ方をしたら流石に折れる。
「わ、わかったよ……」
渋々だが、受け入れることにした。
「本当ですか?!」
「じゃあ私と美涼ちゃんも一緒ね?」
ずるい、上目遣いで守ってくださいは反則だ。どうやって断れというんだよ。おまけに瑠光と美涼までついてくることになってるし。そういえば昨日、図書館で美涼たちは……まさか。
俺は後ろを恐る恐る振り返ると、そこには満面な笑みを浮かべたフィーシャ王女がいた。
「なら、私もご一緒させていただきますわ」
「あ……はい……」
なんか、雰囲気でフィーシャ王女までついてくることになってしまった。せっかく1人で旅をしたかったというのに。
当分は光属性以外のスキルと魔法は使わないようにしよう、と思った時だった。
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