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#35:エルフの少女メアリー

新キャラの登場です。

次回はクラスメイト側の話になると思います。

2019/11/02 22:44 サブタイトルに話数を追加。

 試合を終えて部屋に戻ると、アメリアが俺に向かって


「お疲れ様!」


と声をかけてきた。その横にはルイズとアリーチェもいた。オリビアだけはいないようだが、仕事が少し出来たとのことらしい。


「魔王様、決闘後にこのような話をするのは、申し訳なく思うのですが」

「構わないよ」


 魔王が変わると国の決まりを変えることがほとんどらしいしかし、魔王としての知名度が低ければ低いほど、民衆は従わない。決闘で魔王としての知名度が上げる、それが今回の決闘をオリビアが賛成した意図らしい。


「となると……次は国の決まりをって所からか?」


 しかし、決まりといっても俺は政治家と言うわけでもない。何をすればいいかなんて分からないし、独裁政治なんてものはする気もない。


「そうですわね、あんたの思うようにやりなさい」

「アリーチェ……」

「そうですね、始めは失敗することなんて誰でもあります」

「お姉ちゃんに聞けば、サポートしてくれると思うよー!」


 こんな魔王で失望されるんじゃないかとも思っていたが、どうやらそんなことはないらしい。


「ルイズ、説明していただけましたか?」


 しばらく話し込んでいるといつの間にか部屋に入ってきたオリビアが俺たちに声をかけた。彼女に先程の案を話すと納得してくれた。まずは国のきまりを見直すためにも情報収集が必要であろう。


「他の国を偵察してきてもらいたい、いいところは真似をする。これでいこう」

 

 4人とも納得してくれたようだ。

 そうなると次は偵察する場所の割り振りだ。話し合った結果、シャレスト王国をアメリアにボルルアをルイズとアリーチェが偵察することになった。


「それじゃ、行ってくるねー!」

「私も行ってきますわね、ルイズ行くわよ」




 残された俺とオリビアは一旦くつろぐことにした。とりあえず、オリビアと話し合って決めたのは農民からの税の削減。それから奴隷撤廃などについてだ。この2つはどうしても、俺の中では実施したいと思う。何て言うんだろう、元の世界と比べてしまうからだろうか?奴隷に関してはまだ難しいとのことだったが、税収については1ヶ月後までにはどうにかできるそうだ。


「次は……そうですね。折角ですので村を回ってみませんか?」

「村を?」

「はい、なかなか訪れる機会がないものでして」


 村か、前にボルルアに行く際に一度だけ立ち寄ったが、あの時は観光と言う雰囲気では無かったからな。よし、村を見に行ってみよう。




 オリビアの『テレポート』を使い俺たちは村へやって来た。ティファリナ帝国にも無数の村が存在しており、ここは村の一角だそうだ。今回はお忍びということもあり、隠蔽魔法をかけた。


 村はそこそこ発展しており、王都ほどではないにしろ、さまざまな人で賑わっていた。シャレスト王国やボルルアとは違い、1種族だけが偏って多いというわけでもなさそうだ。人間族やエルフ、ドワーフ、亜人族など様々な種族の人が協力しあって生活している。そんな雰囲気を覚えることの出来る場所だ。




「おい、さっさと歩けよ無能が」


 しばらく歩くと、奴隷商人であろうおっさんが、1人の奴隷を引き連れていた。種族はエルフで、身なりはボロボロでよほど酷使されてきたのだろうか。


「オリビア」

「ええ、これは見逃せませんね」


 奴隷制度はあるものの、食事を与えたり、ある程度の身なりを整えたりしなければならないというきまりがある。今回のこれは完全にアウトだ。


「少しいいですか?コチラの奴隷は随分と酷い扱いを受けていますが、帝国のきまりをご存じでしょうか?」


 オリビアが奴隷商人に言った。オリビアらしく、上品な声で言った。しかし、相手にとっては図星だったのだろう。顔を真っ赤にして怒っている。


「こんな魔法も使えない、何の取り柄のないやつを飼っているだけでもありがたいと思え!」


 大きな声が聞こえたのか周りから続々と人が集まってきた。俺がオリビアのほうを見ると、彼女は何かを考えている様子だった。


「分かりました、なら私が買います」

「ケッ、そうかよ。まぁ、コイツは全然売れない役立たずだし、好きに持ってけ」




「この人がご主人様ですよ」


 オリビアはそう言うと、俺の方を向いてきた。え、俺が?


「よろしくお願いします、ご主人様」


 そう言うと、彼女は頭を下げた。その動作は少し怯えているようにも思えた。オリビアがそっと頭を撫でてあげると最初は抵抗があったものの、しばらくすると安心したのか彼女に身を任せていた。


「それで、ステータスを見てもいいか?」

「もちろんです」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

メアリー=ルジャンドル Lv.6 〈魔法剣士〉≪多重人格者≫

HP 240/240

MP  0/1500

SP  360/360


STR:260

VIT :130

INT :312

MND:276

AGI:114

DEX:240

LUK:100


●属性効果

風属性Lv.2

氷属性Lv.4


●スキル

〈風属性〉

抜刀

〈氷属性〉

氷斬

●魔法

〈風属性〉

トルネード

〈氷属性〉

ブリザード

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 え!?普通に強くないかこれ?トルネードとブリザートって上級魔法だし、抜刀も中級スキルだ。ステータスも群を抜いて高い。これで弱いと言われる理由が分からなかった。オリビアも不思議だと言わんばかりの顔をしていた。


「私は魔法が使えないんです、持っている魔法も発動できないですし」


 これはMPが0になっていることが原因だろうか。しかし、ふつう休めばMPは回復するはず。彼女の場合は0のままだ。これがおかしい。


〖マスター、もしかすると隠れ職業が原因なんじゃない?〗


 ミスラに言われて、職業の欄を見ると確かに多重人格者だと書かれている。しかし、これと何が関係があるのかこれが一向に分からなかった。




 俺たちはそのまま城へと戻った。メアリーを風呂に案内して、着替えをすませてもらった。部屋の中から、真っ白な髪に白いドレスを着た可愛らしい少女が出てきた。一瞬誰かと思ったがメアリーだ。


「あの、その似合って……ますか?」

「勿論!」


 ドキドキとした表情でコチラの返答を伺っている彼女はとても可愛らしいものに思えた。


「私みたいな奴隷に……こんなにたくさんの」

「何を言っているんですか?あなたは奴隷なんかじゃありません、私たちと一緒に過ごす仲間ですよ」

「そうだな」


 彼女の主張によると、俺たちは奴隷契約をしていないので奴隷としては扱われないとのこと。オリビアはさっきまで俺のことをご主人様と呼ばせようとしていたけど、どうしたんだろうか?今ではすっかりオリビアを奴隷にすることに反対している。俺としても、奴隷にする気はないし、すんなりと話が纏まるならばそれに越したことはない。故に彼女は同じ部屋で生活してもらうことになった。


 数日経った頃にメイドに変わって、ある程度の仕事をこなすことが出来るようになっていた。そして時には政治についての相談をしたりすることもあった。



そして、


「『抜刀』」


 彼女は無能と言われていたが、全然そんなことはなかった。武器の使い方が分かっていなかっただけで、教えたら凄く上達した。適性である風や氷属性のスキルをいくつか覚えた。勇者の恩恵が関係しているかはさておき、すさまじい速度で成長していった。彼女は呑み込みが早いのだろう。ただ魔法に関してはMPが0のままだった。これに関しては未だに分からない。【聖なる鑑定】を以てしても隠れ職業の効果は分からない。だからアドバイスのしようがない。


 ――それでも彼女は練習していた。いつかその努力が実ることを願って。


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