#33:魔王の仕事
33話目です!
魔王の仕事とは?一体!?
「こちらが魔王様のお部屋になります」
オリビアに手を引かれながら連れていかれた先には今まで通った部屋の中で最も大きい部屋に着いた。中はとても広く、個人風呂やソファ、キッチンなども完備されていた。
「ここが魔王様のお部屋ねー!」
え?こんなに広い部屋が俺の部屋なのか?
「私とルイズは入るのは初めてですけど、こんなに大きかったんですわね」
「うん、すごい。私たちの部屋とは違う」
アリーチェとルイズはこの部屋に入るのは初めてらしい。魔王の部屋に無断で入ることは、魔王が誕生していない時期であっても、禁止とされている。ここの掃除は基本的にメイドかオリビアがやり、ルイズとアリーチェは普段こういったことをやらないので部屋に入ったことはなかった。アメリアは前に数回お菓子に釣られたりなどで、掃除をさせられたことがあってか、入ったことがあるんだとか。
それにしても、キッチンとか俺使わないと思うんだけどなぁ。食事とかは厨房から持ってきてくれるらしいし、こんなに大きな部屋1人じゃ使いきれないよなぁ。
「じゃあ、みんなでこの部屋で過ごせばいいんじゃない?」
「「「な!?」」」
アメリアの衝撃発言に、俺とアリーチェさらにはオリビアまで驚いた。いや、流石にずっと一緒に生活するってのは……違和感ないな。多分美涼たちのせいだろう。少なくともこの世界に来る前の俺だったら頭がパンクしてそう。
「アメリア、それは魔王様に失礼に値する」
「えー、いいじゃん皆でいたほうが楽しそうだし」
「魔王様と同じ部屋……うぅ一緒がいい」
オリビアが少し恥ずかしそうにしながら否定していた。けど突っ込みどころはそこじゃない気がする、3人とも自分たちのことを大切にしなさい!アメリアも特に気にしていない様子だ。アリーチェはそんな3人に呆れの視線を向けている。
「……私もみんなと一緒に生活したいからここがいいですわ」
アリーチェがそう小さく呟いたことで俺の退路は絶たれてしまった。まぁ、今更感があるので正直どうでもいいが。
「分かった、別に俺は構わないよ」
そう言うと3人は凄く喜んでいた。
「なんか無理やりな感じあるけど、本当によかった?」
先程からただ1人、ずっと黙っていた俺たちの会話を聞いていたルイズが聞いてきた。俺は別に大丈夫だと言っておいた。それよりもルイズはいいのかと聞こうとしたのだが、
「私は別に大丈夫」
と心を読まれたかのように先に言われてしまった。ルイズは普段無口な性格っぽいが、ひょっとすると勘だけは凄いのかもしれないな。
「それでこれから魔王様にやっていただきたいことがあります」
先程まで俯いた様子だったオリビアが、落ち着きを取り戻したのか元の表情に戻って話し始めた。俺すなわち魔王の仕事は、この国の政治を行うことらしい。魔王が誕生するまでは幹部中心で会議を行うのが一般的らしい。
「あたしはあの会議退屈なんだけどねー」
「アメリア、一応貴方も補佐なんだからしっかりしなさい」
「ルイズのいう通りですわ」
まぁ何となく察してはいたが、アメリアは会議みたいなものは苦手らしい。俺も会議は苦手だ。ボッチで誰とも関わろうとしていなかったからというのもあるだろうが、正直面倒くさい。
「ちなみに逃げられないですからね?」
「そーそ、逃げようとしても捕まっちゃうよー」
「アメリアはいつも逃げようとするじゃない」
先ほどから黙って話を聞いていたルイズがまたもや溜め息を吐きながら、俺たちが会議室に行く時間だということを告げてきた。
「魔王様がお入りになります」
オリビアの後に続き俺たちは入った。コイツらが魔王軍の幹部というやつだろうか?しかし、好意的な目を持っている奴は少ないな。
「オリビア様、まさかこのガキが魔王サマとはおっしゃいませんよね?」
「バンゲル、魔王様とオリビア様に失礼です」
ルイズに注意を受けたバンゲルというおじさんは、納得いかないような顔をしていた。彼だけでなく、おそらくバンゲルと手を組んでいるであろうその両隣に座っている2人組も同じように納得していない様子だ。出席しているのは19人。俺たちとバンゲルとその取り巻き2人、さらに他に11人いるというわけだ。
「バンゲルのいう通りだ。俺はその小僧に何か出来るとは思えない。国を治めるにはそれ相応の実力がいるってもんだぜ」
1人の幹部がそう言うと、バンゲルが便乗してきた。そのお陰で俺が魔王として認めない方針で進もうとしている。さらにはオリビアが俺のことを庇ったせいでオリビアの地位も危なくなっている状況だ。
「ならば今後はバンゲル様が指揮を取られてはいかがかな?」
「エルスのいう通りだ!バンゲル様が指揮を取るべきだ!」
「ふむ、エルスにセルスよ。それは名案じゃな、異論のあるものはいるか?」
バンゲルとその取り巻きであるエルスとセルスの2人が勝手に話を進めていく。どう説得するべきだろうか?下手なことを言ってもガキの遊びではないと言って突っぱねられてしまう。この3人の説得は無理だ。他の11人を動かすしかない。しかし、どう説得するべきだろうか。
「バンゲル様が政治をするということでしょうか?」
「ああ、そういうことじゃ」
「僕は反対ですね」
黄色い髪の男性が突然そう言い放った。周りの幹部は騒然となり、先ほどまで流されていた10人の幹部たちも驚いたような目で見ていた。もちろん俺も驚いた。
「魔王様がガキということだけで、政治が出来ないと決めつけているようですが?バンゲルさん」
「あたりまえじゃないか、こんなガキでひょろっとした奴に何が出来るのだ」
すると黄色い髪の男性が笑った。
「彼は化け物ですよ。貴方が育てた自慢の騎士でも倒せませんよ?それに若くても政治はできますよ。貴方はただ独裁政治がしたいだけなのではないですかね?」
「そんなわけないじゃろ!それにこんな弱いやつに負けるわけないだろう!」
バンゲルが顔を真っ赤にして怒った。
「ならば試してみますか?よろしいですか、魔王様?」
「お、おう」
急に話題が振られたので少し驚いてしまった。変な声で返事をしていないことを祈るべきだ。それにしてもこの男、あの状況を一気にひっくり返した。ただ者ではないだろう。
「それでは明日魔王様とバンゲルの騎士たちにおける決闘が行われるということでよろしいですか?」
「かまわないのじゃ」
「ああ」
こいつの騎士がどれほどの強さかは分からない。だが遠慮する必要はココではいらないだろう。光属性魔法を封印したとしても負ける気はしない。
決闘が行われることが決まると会議が終わった。幹部たちは次々と去っていった。バンゲルとその取り巻き2人組はコチラを少し向き舌打ちをしてその場を去っていった。そして、部屋には俺と一応四天王であるオリビアたちと黄色い髪の男性が残った。するとその黄色い髪の男性が俺の元へとやって来た。
「君が新しい魔王様だね。……っとその前に自己紹介がまだだったか。僕の名前はエレクだ」
「ヒカルです」
「よろしく頼むぜ、魔王様」
彼は明日の決闘を楽しみにしていると言い残し、部屋を去っていった。しかし、あいつは一体何者だったんだろうか?
〖アレは確か、6大英雄の雷の使い手だったような気がスル〗
〖そうですね、ただ何故ここにいるのかは分かりませんが〗
6大英雄と言うとガンゲさんと同じってことか。でも彼らは確か魔王を倒したハズだよな?どうして魔王の幹部なんだろうか?俺の中でのエレクという人物に対する疑問は消えたのだが、さらに深い疑問が生まれてしまったようだ。
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