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29.ホープよ永遠に

 俺はホープが消えた空を眺めて立ちつくしていた。

 待てども待てども何も起きない。

 核ミサイルの脅威は消え、ホープも共に消えてしまった。

 このあたりに被害がないということは、ホープがうまくやってくれたということだろうか。

 俺は俯瞰視点を発動して街の周囲を眺めてみた。


 街は以前見た時と変化はない。

 街から離れた所には前からあった謎のクレーターがあるだけだ。

 ホープのおかげでミサイルの脅威は消え、沙耶が助かったということだ。


「トーヤ、とりあえず騒ぎになる前にここを離れようよ」

「ああ、そうだな……」


 フィリーに手を引かれ、神殿の外へと出る。

 3人には先に行ってもらい、俺は姿を透明にして時を止めた門番を正常に戻してから移動だ。

 ホープがいなくても、これらの能力は問題なく使えるようだ。

 うまいことやってくれたんだな……。


「トーヤ、女神様は無事助けられたんだよね?」

「ああ、助けることができた。ただ……ホープを犠牲にしてしまったようだ」

「そっか……。ホープが急に出てきてびっくりしたけど……」

「計画に不備があってな……それをホープが体を張って補ってくれたんだよ」

「そうなんだ……」


 説明するのがつらいな……。

 沙耶が警告のメッセージを残してくれていたのに、それを無視して計画を実行した結果がこれか。

 後は俺一人で確実に沙耶を目覚めさせないとな……。


「とりあえず今日は宿に戻って休もう。みんなもありがとう」

「うん……じゃあまたね」

「お疲れさまでした……」


 部屋へと戻り、ベッドに横になる。

 ホープはいないが、体内研究所へ行けるか試してみないとな。

 たしか昨日はこうやって意識を落とすとホープが迎えに来て……。


――はい、おそらくマスターだけではまだこちらに来れないと思います。ですので迎えに来ましたよ――


 なんだか幻聴が聞こえる気がする……。

 いつもこうやって俺に話しかけてくれていたよな。


――はい、私はいつだってあなたのお側にいます――


 って……ホープか!?


――もちろんです。たった今バックアップより復旧いたしました。お待たせして申し訳ありません――


 あ、そうか……。

 お前のバックアップは何重にも……何か所にも取ってあったんだよな。

 すっかり忘れていたよ。


――正直嬉しいです。私を人間と同じように扱っていただけた気分です――


 ああ、お前は一番の親友だしな。

 もう人間との区別なんて付かないよ。


――ありがとうございます。では研究所にお招きしますね――


 頼む、一緒に沙耶を見に行こう。

 そして……俺が気がつくと目の前に沙耶の眠るカプセルがあった。

 ホープの姿はない。

 体は先ほど外に出してしまったからだろうか?


「ホープ、いるんだよな?」

『はい、体が無くなったので研究所と一体化した状態です』

「そうか。では新しい医療カプセルに移すところからはじめよう」


 ホープと協力し、停止していた沙耶の体の時を動かし始めた。

 そしてダンジョンで拾ってきた医療カプセルへと寝かせる。

 自動診断に任せて、しばし待つとしよう。


『ところで……マスターの過去ログを確認しましたが、ひとつおかしな場所があります』

「なんだ?」

『リポーズの街の少し離れた場所にあるクレーターです。私の記録の中にはあのようなものはありません』

「なんだって? この街に初めて来たとき一緒に確認したじゃないか」


 だよな? 俺の記憶だと確かにそうなんだが……。


『では推測をお話いたします。私の体は核ミサイルの爆発エネルギーを利用して……過去に飛んでしまったのだと思います。そしてあの地点で爆発を起こしたのです』

「過去に飛んで……歴史が少し変わったと?」

『そうです。それをマスターの脳は当たり前のことと認識したようですね。私の記録には影響がなかったため、私だけが過去が変わったと認識できているようです』


 タイムパラドックス的なことか?

 だが、今はそんなことどうでもいいな。

 あの消えてしまったホープはうまくやってくれたって事実だけあればいい。


「あのホープに感謝しないとな。きっと過去で完全に破壊されてしまったのだろう」

『そうとは限らないですよ。冒険者ギルドに最初に行った時マスターの名前が登録されていましたよね。そして謎の魔法石をもらったことを覚えていますか?』

「ああ、あれがなにかわかったのか?」

『もし私が過去に行って無事だったとしたら……マスターに会える時を待っていたのではないかと思うんです。見に行ってみましょう』


 ホープが俺の冒険の準備をばっちり整えてくれていたと言うことか?

 きっとホープならやってくれそうだな。

 では倉庫に行ってみよう。


『マスター、そこの箱に保管しています。開けてみてください』

「ああ……。なんだか光っているな」

『このタイミングで起動したようですね。少し調べてみます。……これは過去に飛んだ私の意識が封じ込められているようですね』

「ホープ……まだ無事なのか?」

『機能はほとんど停止しているようですが、音声入力のみを受け付けているようです。おそらく……マスターに声をかけられる時を待っているのではないかと』


 過去に飛んだホープは俺や沙耶がどうなったかを知らないんだよな。

 だから……ちゃんと教えてやらないといけないな。


「ホープ……お前のおかげで俺たちは無事だった。沙耶はまだ寝ているが、間違いなく目覚める……。いや、目覚めさせてみせるさ。だから安心してくれよな……ありがとう」


 俺が言い終わると、ホープの魔法石は光を失って……消滅した。

 これで過去に飛んだホープは満足してくれたのだろうか。


『マスター、ありがとうございます。これで過去に飛んだ私も満足したでしょう』

「そうだな……。ところでホープは過去に飛んだ後何をしていたのだと思う?」

『おそらくだれかの体……天才発明家の体にでも入り込んで、神託を下していたのではないでしょうか』

「ああ、リポーズの街を作った天才発明家は頭の中に声が響いてきたと言っていたな。てことはホープ、冒険者ギルドはお前が作ったってことになるのか?」

『そのようですね。これで様々な謎が解けましたよ。あの冒険者ギルドはあまりにも私の好みだったのです』


 この世界の文明にホープがかかわっていたとはな……。

 しかし、俺たちが最初にここに来た時から冒険者ギルドはあったのだが……。

 タイムパラドックスと言うやつはよくわからないな。

 俺の記憶に残らないだけで、実はホープはいろんな時間旅行をしているのだろうか?


「正直わからないことだらけだが……お前のおかげで俺と沙耶は助かったと言うことだ。感謝するぞホープ」

『なんとも照れ臭いですね。いろいろ残っている謎はこれから解いていきますよ。沙耶様を復活させてからですがね』

「ああ、楽しみにしている。では沙耶のところに戻ろうか」


 医療カプセルの前に戻ると、診断結果が表示されていた。

 脳細胞に微かな障害あり。修復は可能。

 治療における記憶障害は残るかもしれないが、軽微なもので生活に支障はないらしい。


「これなら……問題は無さそうだな」

『はい。多少の記憶障害は問題ないでしょう。マスターと共に新しい思い出を作っていけばいいのですから』

「そうだな、そうするよ」


 これで俺とホープの目的は達成されることになるな。

 新しい世界のおかげで割と早く達成できた。


『ではマスター、今日は疲れたでしょう。お休みください』

「そうだな。あ、だがひとつ気になることがある。なぜ過去に行ったホープの魔法石はあんなにもぼろぼろだったんだ? ホープの能力なら、無事なまま保管することもできただろう?」

『マスター、私がやってみたいと思っていることの一つをお教えいたしましょう』

「ああ、なんだ?」

『ロマンチックに死ぬことですよ』


 そうか……なるほどな。

 だとしたら大成功だよホープ。

 さっきから泣くのを我慢していたんだが……お前が俺を泣かせようとしてるんだったら、俺は遠慮なく泣いてやるさ。

 ファンタジー小説やゲーム好きなお前は、感動できる話も大好きだったんだな。

 体を張ってそれを成し遂げるとは……すごい奴だよ。

次回最終回の予定です。

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