23.経験値稼ぎ
「どうしようか。まだここで弱いアリを倒す? もう楽勝だから修行の意味もないけど」
「そうだな……」
ここで戦いたい本当の理由は話しておくべきだろうな。
その方がお互いのためになりそうだ。
フィリーはもちろん、リズとディルも信用できそうだしな。
「実はモンスターをたくさん倒したい理由はもうひとつあるんだ。俺は倒したモンスターから魔力を回収できる。それを使っていろいろできるようになるんだ。さっきの魔力回復薬もモンスターを倒したおかげで作れた」
「わあ……そうなんだ。トーヤってすごいんだね」
「ああ、でも黙っていてすまないな。俺の魔力集めにみんなを利用したみたいで」
「いいのいいの。そんな秘密を話してくれるなんて嬉しいよ」
「わたしも全然かまいません。だって危ないところを助けてくれたんですもん。恩返しができて良かったです。ね、ディル?」
「うん。僕も同じ気持ちです、トーヤさん」
「そうか、そう思ってくれるならありがたい」
なんとも素直ないい子たちじゃないか。
ホープ、沙耶を助けたらドラゴン退治と村の復興に手を貸そうな。
――もちろんです。早くその日が来てほしいですね。冒険です。ファンタジーです――
ホープも楽しそうでなにより。
「それでだ、まだここでモンスターを倒すのを手伝ってほしいんだ。戦利品はたいしたものがないわけだけど、代わりに俺の作る魔力回復薬を提供するよ」
「だったら喜んでお手伝いします。ああいった薬ってすごく高いんですよ」
「じゃあ決まりだ。フィリーもいいか?」
「もちろんだよー」
「ありがとう」
「わたしたち組んでるんだよ。お礼なんていらないの」
「そ、そうか……」
よし、これで心置きなく経験値稼ぎができそうだ。
――マスター、魔法を色々見せてもらえるよう頼んでください。魔法を作りだすためにデータ収集をしたいんです――
そうだな、わかった。
「3人ともにもうひとつお願いがあるんだ。見せても問題ない魔法があれば見せてくれないか? 研究のためにいろいろ見たいんだ。そのための魔力回復薬は俺が準備する」
「いいよー」
「わたしも大丈夫です」
「僕もです。魔法はもったいなくてあまり使えないので、むしろありがたいです」
よし、研究は頼んだぞホープ。
――はい。それと魔力の回復についてなのですが、食事や薬に混ぜる形だと余剰分が出てしまうかもしれません――
それもそうだな。
ゲームで言うと、最大MP が100なのに120回復する薬を飲むと損するってことか。
ではどうしたらいい?
――おそらくマスターから直に供給できます。それなら無駄もありませんし、各自の魔力量が大体わかります。その際ついでに解析もさせていただきましょう――
ついでに解析って何か悪いことをしている気分だが……。
――これも研究のためです。それに私達の研究が早く進むのは彼女らにとってもいいことですよ――
まあそうか……。
ではやってみよう。
「そうだ、魔力は直に回復させることができるかもしれない。ちょっとだれか試させてくれるか」
「じゃあわたしやるよ、どうしたらいい?」
「俺の左手を握ってくれるか」
「うん、えへへー」
嬉しそうに俺の左手を両手で握るフィリー。
なんだか俺も意識してしまって照れるのだが……。
――マスター……――
まあ、お目付役がいるので間違いは起きない。
さて……簡易工作と同じ感じで魔力をフィリーに注げばいいのかな。
「わ……魔力が増えていくよ。なんだかすごいかも。錬金術師ってこういうこともできるんだね」
「どうやら成功のようだな」
「うん! さすがトーヤだよー」
魔力を分けることができるのはいいな。
リズとディルにも同じようにして魔力を分け与えた。
「すごいですトーヤさん、なんだか力がみなぎってきた気分です」
「僕もです。ここまで魔力が回復したのは初めてかもしれません」
「そうか、ではそれで戦ってみてくれ」
ふむ、自然と回復するだけでは魔力はそんな回復しないんだろうな。
魔法とやらもそこまで使い勝手がいいわけではないようだ。
――マスター、魔力の許容量も個人差があるようですね。リズさんは少なめでディルさんは多め。フィリーさんはその中間です――
そうか、なんとなく戦闘方法のイメージ通りではあるな。
前衛向きのリズはMPが低くて後衛向きのディルはMPが多いというわけか。
――MPとはマスターもわかってきましたね――
ああ、ファンタジーゲームっぽく考えるのも楽しいものだ。
「トーヤ、またこっちにアリが少しずつ接近してきてるかも」
「わかった。戦闘開始しよう」
ホープ、魔法の研究をしっかりと頼んだぞ。
――お任せください、マスター――
やがてアリがちらほら現れるが、数が少ないので3人の戦いっぷりを見せてもらおう。
お、フィリーが例の研究所で手に入れた麻酔銃を構えているぞ。
「よーし、トーヤと一緒に手に入れたこれを使ってみるね」
「わあ、なにそれ?」
「えっとね……これで遠くから攻撃できて、さらに眠らせることができるらしいの。試してみるね」
「おおー、すごいもの拾ったんだね。やってみてー」
「うん、じゃあ今来たあいつらを……」
パシュンッ! ビシィッ!
なんとも小気味のよい音が3連続で響いた。
そして動きを止めるアリ3匹。
「お、動かないってことは眠ったのかな?」
「そうみたいだね、便利だなーこれ」
「いいなあ、わたしもほしいよー」
「でも扱いが難しそうだよ。リズには難しいんじゃないかな」
「えー」
麻酔銃の効果を見て3人で盛り上がっている。
あの麻酔銃は即効性が高く、かなり使えるもののようだな。
なによりフィリーの腕が素晴らしい。
昨日少し練習しただけなのに、連射できるほど使いこなしているとはね。
「上手いもんだな。やはりフィリーに使ってもらって正解だった」
「えへへー、いいもの譲ってくれてありがとうね。それであのアリはそのままとどめさせばいいのかな?」
「いや、少し調べてみたいんだ。その間他のアリを倒していてくれるか?」
「うん、まかせてー」
ではホープ、ようやくモンスターを調べる機会が訪れたようだ。
――はい、これでこの世界についての研究も進みそうですね――
そうだな、沙耶を助けるヒントも見つかればいいんだが……。
ではさっそく左手をアリの体に当ててと……。
触り心地は、子供のころに触れたカブトムシのようだな。
――なるほど……。以前ネズミの時にたてた仮説がほぼ正解のようです。アリが時空粒子によって進化し、巨大化したようですね。もっとよく調べたいので体内倉庫に送っていただけますか――
それは構わないのだが、モンスターを体内に取り込んで大丈夫か?
――はい、ちゃんとゲージに入れておきます。それにこの研究所に私がいる限り、何も問題は起こしませんよ――
それもそうだろうな。
では任せたぞ。
――はい、それではみなさんの戦いをまた見せていただくとしましょう――
「よし、アリの調査は終わった。次はリズが魔法を見せてくれるか」
「わかりました。さっきもお見せしましたが、こんなことができます。……はああああっ!」
リズは人間ではありえない動きでアリに突進して殴りつける。
ジェットエンジンが封じられた魔法石だろうとホープが言っていたな。
燃料はやはり時空粒子か?
――そのようですね。ジェットとは言ってもなにかを燃焼させているわけではないようです。時空粒子を収縮させた状態で集め、それを一気に膨張させているようです――
なるほど……モンスターを巨大化させているのもだが、時空粒子は大きさを変化させることができるってことだな。
――そうですね。このダンジョンに入ると体が小さくなることにも説明をつけることができそうです――
そうだな……不思議なことだらけではあるが、少しずつ時空粒子の仕組みがわかってきたようだ。
あと、さっきリズは魔力の消費が激しいと言っていたな。
時空粒子をあのように使うと消費が激しいってことだろうか?
「リズ、ありがとう。魔力を補充するからこっちへ来てくれるか」
「え? もうしてくれるんですか? まだ何回かは使えますよ」
「今の魔法でどれだけ魔力を消費したか確認しておきたいんだ」
「わかりました」
リズの体に魔力を供給し、消費量を確認だ。
おっと……比較用にフィリーにも魔力補充をしなくてはな。
こうやってデータを集めていけば、魔法と時空粒子の研究が進むだろう。
――それと、みなさんのステータス画面も作れますよ。ゲーム要素としてだけではなく、みなさんを生き延びさせるための手助けになるはずです――
そうだな、味方のことを把握しておけば事故も減るはずだ。
たのんだぞホープ。
さて、次はディルの魔法を見せてもらおうか。
魔力量が一番多いらしいのでちょっと期待だ。




