二人のロマンシス、シスターフッド。
戦いは小康状態に陥り一進一退の状況だった。
隣国の王子の部隊が劣勢と見ると、
「王子、大丈夫ですか?」
剣崎と、王女テヨが駆け寄った。
「私たちがお守りいたします、さがっていてください」
「・・・・・・・。」
王子は何もしゃべらなかった。
ただ黙って二人を上目遣いで見ていた。
「失敗したか。」
その声は今までの声のトーンと全く違っていた。
「いいアイデアだったのだがな。」
その声は地より唸るような声だった。
「王子?」
剣崎とテヨは今までにない違和感に後ずさりした。
王子の体はその人間の皮膚を裂き、この世の物で無い、異形の者になり、その大きさも山のようにその全容を全く違うものとなった。
「敵?」
「お前たちの仲を裂くのに、いいアイデアだったのだがな、もう我々の勝利は確実だ。お前たちも我々の軍門に下れ。さすれば、一生安泰の地位を約束してもらえるように、おれが口添えしてやるぞ。」
そこまで言うと元王子の体は敵のボスのそれ、眼球は無数にあり、体中から生えている角がその禍々しさを増幅させ、口と言うのだろうか、牙が生えているからそうなのだろうそこから止めどなく零れ落ちる体液がその異臭を放っていた。
あの王子とは似ても似つかない、婚約者とも全く違うその物体は続けて言った。
「お前たちの仲を裂いて、どちらかがこちらに付けば成功だったのだが、フン、つまらぬものにこだわりおって。」
そこまで言うと。
「今からでも遅くはないぞ、我らが・・・・・。」
言い終わらぬうちに、剣崎のS&W M500が火を噴いた。
下着の上から、穴の開いたトレンチコートを着ただけの剣崎が。
片手で、続けざまに、元王子であった敵の頭と思われる所にその弾痕が撃ち込まれていない所がないほど隙間なく、そして弾痕の上からまた重ねて撃ち込んだ。
その銃撃音が、まるでそこの空間でしか響いていないのではないかと思うほどの周りに御響く音がこだましていた。
やがて元、婚約者もどき、元王女テヨの想い人だった、元隣国の王子だった敵のなれの果てが命の尽きる直前に震えながら言った。
「なぜ、なぜ手を貸さん?」
「バーカ、女の心を、男のお前が計算しようなんて百万年早いわ!」
二人は声を合わせて言った。
ガチンと撃鉄が空の薬莢を弾くのを確認すると、瞬時に空の薬莢を弾き出し、次の弾をスピードローダーで装填し立て続けに頭の形が無くなるまで打ち続けた。
「これを、」
王女はそう言って、今撃っている拳銃と全く同じものを放り投げた。
「これは?」
全く同型だが、感触が違っていた。
「魔弾S&W M500改。あなたがこのセカイに来た時に渡そうと思って。」
王女は。
「傷の舐め合いでもいい、生きていて、このセカイで。」
元王子は形が崩れ、断末魔のが響き渡っていた。
それを見逃さず王女テヨは空高く舞い、左右に広げた刀を同時に元王子に打ち下ろした。
ほぼ大勢は喫した。
敵の大群は地平の向こうに、霞のように引き上げていった。
戦地のそこ、ここで勝鬨をあげる部隊があった。
取り敢えず勝った。
だが、敵を殲滅していない限り、また再びやってくるのは明らかだ。
今回は剣崎と王女テヨの牙城を崩すのが目的だったのだろう。
剣崎はトレンチコートのポケットに拳銃をおさめ、代わりにタバコを取りだした。
タバコの底を小突き、二、三本顔を出したそれを二本つまみ、一本を王女テヨ、彼女に渡した。
なんの事かわからなかったが、剣崎が一本くわえると、その意味がわかったのか、同じようにフィルターを噛んだ。
王女テヨはライターを探し、剣崎がからだのあちこちをまさぐっているのをみると、やがて、小さく詠唱を唱え王女テヨの指先から小さな炎が生き物のように発生させ、タバコの先端に着けた。
深く息を吸い込み、吐き出す煙の多さに目を丸くする王女。
真似るがひどくせきこむ。
それをみて、大笑いする剣崎、王女テヨは少しムッとするが、笑顔をみていると、なんだか、自分も笑いが込み上げて来る。
二人背中合わせでその場に座り込み煙をふかした。
「ありがとう、そしてゴメン」
二人は同時に言い合った。
「何が?」
また二人はまたハモッた。
それを聞いて、言って。
顔を見合わせ笑った。
その笑い声は戦場に響いていた。
「まあ、こういうのも悪くねえか。」
と、剣崎はいっぱいに吸った、タバコの煙を吐き出しながら王女テヨと、夕日と、このセカイを眺めながら、つぶやいた。 了
後書き
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