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死にたがり女刑事、剣崎。

 魔弾がその敵の装甲を打ち抜いた。


 続けて二発、三発と。

 王女は、左右に差している剣を抜き放ち、他の敵を蹴散らしていた。


 ドン。

 と、銃を持った人間と、二刀流の剣を左右に広げた王女は背中合わせになり、お互いの正面の敵と対峙していた。


 そこは空間が開き、大乱戦の戦場だった。

 その戦場へ、

 元王子だった敵にここぞとばかりに、王女は鉄槌(ウオールハンマー)を叩きつけた。

 敵は四方に飛び散った。

「やっと、間に合ったわ。」

 王女は言った。


「こっちも。」

 ちらっと、銃を持った人間を見て「わだかまりがあって、自分に納得するのに時間がかかったのよ!」

 そう言うと再び二刀流の鉄槌(ウオールハンマー)を叩きつけた。


 敵は怯みつつ、いままでの経過からすると、バラバラになっていなければならないはずの二人が結束している事に驚いていた。

「なぜだ。

 なぜ、二人が。

 王女と、敵対しなくてはならないはずなのに、俺の計算がどこで狂ったのか。」


 拳銃を持った人間と王女は顔を見合わせ、

「バーカ、女の心を、男のお前が計算しようなんて百万年早いわ!」


 そう言うと、王女の二刀流と拳銃から吐き出された魔弾が。

 それぞれの、その渾身の一撃が敵の頭に叩き込まれた。




 数か月前。


 ゴン!拳が犯人の顔面を直撃した。

「////////!」

 言葉にならない悲鳴をあげる。

 立て続けに、後ろ髪を鷲掴みにし、壁に力一杯数回打ち付けた。

「先輩!やめて下さい!殺すつもりですか?」

 後輩が鷲掴みにしている手にしがみ付くように止めに入った。


 剣崎は、長い髪を荒く後ろで結わえたボサボサ頭に、煙草をくわえたまま後輩に言った。

「そうだよ、殺すんだよ。ついでに俺も殺せよ!なあ!」

 穴の開いたトレンチコートを翻し、もう一度今度は地面にその頭を捩じり込ませようとした。

「剣崎!」

 割って入ったのは唯一、彼に物が言える捜査一課の部長刑事だった。


 まだ、名残惜しそうに、ボロボロになった犯人の後ろ髪を鷲掴みにしながら、顔を近づけて「命拾いしたなぁお前。」と静に言って、ごみを捨てるように、その場に投げ捨てた。

 犯人は、強盗十件、殺人十件、放火五件に女性を暴行二十件と言う全国指名手配の凶悪犯だった。

「先輩、もっと遅く来てくれた方が、このS&W M500(ハンドキャノン)でこいつの頭バラバラに出来たんですがねえ。」

 そう言いながら、胸のそれをポンポンと叩きながら、愛車ケンメリのエンジンを掛けた。


 過ぎ去る剣崎の後姿に何人かは、聞かせることのできないほどの悪口を投げかけていた。

 が、止めた捜査一課の部長刑事だけは、「あいつは昔、あんな奴じゃなかったんだがな。あんなことが無ければ。」と過ぎ去るケンメリを見送りながらつぶやいていた。


 過ぎ去る風景が、ずっと白黒のモノトーンのままだった、剣崎は死にたがっていた。

 胸ポケットから煙草を取りだし、前を向いいたまま箱ごと咥えるように、その中の一本を器用に噛み引き出し、マッチでこれも器用に前を向いたまま、ハンドルを握りながらタバコに火を着け、深く吸い込み、それを吐き出した。

 本当に何もかもが嫌になっていた。

 今回の件以外でも、犯人はもとより自分自身も何度も死にかけていた。

 その度、自分が生きていることへの絶望が、景色をより一層モノトーンにしていった。


 あの日々を何度思い返し、何度涙し、何度死のうと思ったか。

 握っているハンドルを少し傾ければあっという間に、向こうに逝ける、そう言った衝動に駆られたのは一度や二度ではない。

 自然、ハンドルとアクセルに力が入った。


 その矢先、無線が入って来た。

 強盗が猟銃を持って立てこもっているという。

 近くだ。

 すぐその方面にハンドルを切り、ホイルスピンしながらカウンターターンをして現場に直行した。


 銀行に立てこもっているのは、別れた妻に子供を返せと喚いていたものだった。

 人質はたまたま居合わせた女子高生。

 銀行の現場の規制線を無視し、止めにはいる警官を無視し。


 歩いて行った。


 腕には百パーセント自信はある、トレンチコートを脱ぎ、スーツを脱ぎ、パンプスを脱ぎ、スカートを脱ぎブラウス、ストッキングを歩きながら器用に脱いでいった。


 こちらに武器を持っていないと言うアピールだろう。

やがてショーツ一枚と、ブラジャーだけとなった。

 猟銃を持った犯人はあっけにとられていた。

 人質の女子校生はその視線をどこに置いていいのか分からず、オロオロしていた。

 両手を上げたまま剣崎は半裸状態のまま近づいた。

 そして上げた手をそのまま背中に回し背中にガムテで張り付けていた、S&W M500(ハンドキャノン)に手を伸ばし愛銃を握り撃鉄を起こしながら引き抜き、歩きながら片手で照準を合わせた。

 像の頭をも打ち抜く大砲の様な銃。

 ガタイの大きな人間でも両手でやっと打てる代物。

 それを片手で照準を合わせ、打ち抜くのは普通出来る芸当では無い。


 犯人は半裸の女性が片手で銃というには大きすぎるその銃を、歩きながら照準を合わせ片目をつぶり今にも射撃しそうな気迫に気おされて、抱えていた女子高生を投げ捨て、猟銃を構え何やら訳の分からない言葉をさけびながら猟銃の火を噴かせた。


 と、同時に剣崎のS&W500(ハンドキャノン)が犯人の猟銃を弾いた。


 そして、剣崎の胸に猟銃の穴が空いた。


 そのまま時間がゆっくり流れるように、そのままドウ、と後ろに倒れた。


 剣崎は薄れゆく視界の中で、犯人から逃げ出した女子高生の後姿を見て、よかったと、フッと笑いながら目を閉じた。


 やっと逝くことが出来る。


 そう思いながら。


拙作に目を通していただき誠にありがとうございます。

もし、もし少しでも、あ、いいなと思って下さるようでしたら、星など頂戴できれば大変うれしゅうございます。

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