第75話 勇者、リヴァイアサンパーティーを開催する
「これだけあれば朝まで大騒ぎだぞ! よっしゃ~! みんな食え~!」
掛け声とともに一斉にリヴァイアサンへとかぶりつく一同。だが。
「……うわっ。生臭」
「なにこれ……ちょっと骨もくさい」
「ここキモなのかな……すっごい紫でアニサキスめちゃくちゃ動いてる……」
あれほど高かったテンションが皆下がっていく。あれほど苦労したリヴァイアサンがこんなにもまずいとは思ってもみなかった。
と、そこへ発端となる人物が舞い降りてきた。
「嘘だろ……まさか本当に全魔物がやられたのか……」
「おお。いいところに来たな。クソ天使。さぁどうしてくれようか」
「え……エデン。私が悪かった。許してくれ」
「みんな~。こいつが今回この国を滅ぼそうとした元凶なんだ! どう料理する~?」
「いやいやちょっと待ってくれ! 私がすべて悪かったんだ! 許してくれ!」
「うちの魚人たちは多数のすり傷を負ってしまった」
深海国王ギョロ凱がつぶやく。乗っかるように多数の被害者が名乗りを上げた。
「俺の家はリヴァイアサンの高波で流されそうになったよ! 流されなかったけど!」
「地下のヒュドラの毒のせいで作物がちょっと枯れたぞ! 虫のせいかもだけど」
「わてなんか死にそうやったでぇ! 死なんだけど」
「そこは本当であってほしかったな」
「えっ今エデンはんなんて言いました?」
「ちょっと待て! そんなにみんな被害被ってなくないか⁉」
「俺が助けてなかったらみんなどうなっていたことか! ぜんぶ本当になるところだぞ!」
顔面蒼白となっていくハマエル。被害者の声を聞いてエデンが口を開く。
「みんな怖い思いしたんだよ……しょうがない。ここはシンプル暴力で解決しよう」
「おい……なにをする気なんだ……」
「恨み辛みがある人は並んで~。みんなで一発ずつビンタしてこっか~」
「おいおいおい! 何人いるんだよこれ! ほっぺた死ぬぞ!」
「しょうがないだろ。お前が悪いんだから。それかどうする? 一ヶ月、トモミチと生活入れ替えの刑でもいいぞ」
「わての生活って刑やったんどすか?」
「まだ………ゴミのようなそっちの生活がいい」
「えっわてのことゴミ呼ばわり?」
「よし決定だ! 今からハマエルのことは一ヶ月トモミチとして扱うように!」
「了解~!」
言葉通り、縄で括りつけハマエルはトモミチがいた檻に入れられた。
そして、リヴァイアサンも邪魔だったので、小さくして魔王城の近海に返しておいた。
その後、国民たちが持参してくれていた料理で盛大なパーティーを行った。身分、種族。なに一つ関係ないこの場所だけは唯一、自由な国になったような気がした。私たちはこの国を救ったが、そのことを知るものは少ないだろう。
しかし、これほど楽しいパーティーをしたのは初めてだった。偉業を成し遂げた後の酒は格別に旨かった。
――私たちは、この国でずっと幸せにやっていけるとこの時はまだ信じていた。




