第53話 勇者、海からの敵と出会う
無事に安定した経営基盤を築きあげた私たちは、お金に困ることはなくなり、国にも貢献できる仕事を創出することができた。
もはや、国民の遊戯だけに留まることはなくなり、とうとうあのゴードン王さえ『パチスロ店』に招致して楽しんでもらうこととなった。
しかし、エデンの個人的ないたずら心で、王の台は当たらない設定に変えられていて、大負け。王の側近たちは当たるように仕向け、『口コミはこいつらに広めてもらえればいい』とエデンは言っていた。王は憤慨していた。その顔をみてエデンは大爆笑していた。
こうして私たちの事業は瞬く間に成長を遂げ、国にも認可される遊技場となった。この『勇楽』と『勇者金融』合わせて月商が金貨二千万枚を超える事態になった。
そういった経緯を鑑みて、この二社を合併し、新たに『勇者商会』として名を持つことにした。二つを合併することで、情報や人材の共有。そして、会計士を雇い、詳細な財務状況の把握も行うようになった。盤石な経営体制を整えた。もはや、エデンの『サボり』を止められるものはもういない。
そうなった私たちが次にすることといえば。
「エデン。この次の巻ある?」
「あ~、今あっしが読んでるでげす」
「なによ……あんたが読んだ後、臭いのよねぇ……」
「わかる。まぁ生ごみの寄せ集めみたいもんだからさしょうがないよ」
「いや、さすがに言いすぎやあらへんか……」
「あっら~、こんな大恋愛してみたいわねぇ~。ね、卵王様ぁ?」
「知らないよ。第一、お前男じゃん」
「あぁん? あんちゃん舐めとったらほんまにいてまうでごらぁ?」
「なんで事実なのにこんなにキレるんだよ」
結局、私たちはいつも通りの生活に戻った。エデンが用意した創作物は無限に湧き
出てくる。この無意味な時間は、もはや私たちにとって必要不可欠なものになっていた。なんだかんだ、この五人で集まれる時間は大切なものだった。
――そんな生活を揺るがす危機が迫っているなんて思いもしなかった。
いつも通り、この日もすることがなかった。女子メンバー(といっても私とギョロ美ちゃん)と温水プールでダラダラ過ごしていた。
「ねぇ、あーちゃんはさぁ~エデン様のことどう思ってるのぉ?」
「えぇ! どうって言われてもなぁ。なまけすぎじゃないって思うぐらいかなぁ」
「でもぉ~。いざという時はめちゃくちゃ強いし助けてくれるじゃなぁい!」
「まぁ……確かに」
「それでもなんとも思わないわけぇ~?」
「おも……うわけないじゃん! どんだけ私があいつに振り回されてんのよ!」
「そっか。よかったわぁ! もし、好きって言ってたら顔を引き裂いてたわ~」
「怖すぎるよギョロ美ちゃん……」
そんな恋愛? トークをしている最中、ふいにギョロ美が異変に気づく。
「……あーちゃん。この辺、魚臭くないかしら?」
「えぇ。ギョロ美ちゃんかと思ったんだけど数が多いわ」
「えっ私ってちょっと魚臭いの?」
「……まぁそうね……少しだけね」
「まって……どのくらい臭いのかしら?」
「う~ん……鮮魚扱ってる露店の床ぐらいかなぁ……」
「もはや臭いとか通り越してないかしら……?」
「お前らいつまでしょうもない会話しとるんじゃあ!」
とうとうしびれを切らした敵が襲い掛かってきた。勢いよく、海の方から勇者宅へ飛び込んできたその瞬間、家を取り囲むように設置された網状に設置した魔法障壁が全員を捕らえる。そして、電流が流れた。
「あああああああああああああ! なんじゃこれはあああああああ!」
トラップが発動した。私が最初、勇者宅に入った際、空から侵入できてしまったため、念のために電撃が発動する魔法障壁を張っておいた。それが、見事に功を奏した。
――敵は海からの侵略者のようだった。




