第52話 勇者、経営基盤を築き上げる
その後も客足は途絶えることなく、どんどん売り上げを伸ばしていった。オープン一ヶ月で月商が金貨千枚になった。
エデンは最初、遊び心でやってみようと思ったが、ここまで行くと若干、引いていた。
「なんか……気持ち悪いくらい人いるな」
「そうね……もう店の前も、『勇者金融』も常に大騒ぎよ」
「ね。まぁいいか。国民が満足しているなら」
「エデンよ。さっきこの国の内情を少し聞いてみたら、パチスロにハマりすぎて仕事をしなくなった人が後を絶たないらしいぞ」
「……結構、やばそ?」
「ああ……食料自給率とかも下がってるらしい。生きるために必要な物を作る人が減ってるってことだ。あと、兵隊とかもサボってパチスロしてたり」
「……さすがに最新鋭すぎたな」
「そうね。どこの国にもないでしょうねあんなの」
「……あ、あいつって」
店の前で、悪態をつきながら叫んでいる人物がいた。どこかで見た大剣を背負った人物だった。『豪剣のクアントゥス』だ。酒を飲みながら帰っていく。
「……あちゃあ」
「……あなたに負けて以来、城に居場所がないみたい……」
「それはあいつが悪いな」
「まぁそれはそうね」
「よし。じゃあ、国が破滅する前にやり方を変えようか。入場制限を設けよう。まずは『身分証の提示』どんな仕事をしているかの確認な。それと『納税証明書の提示』これがあれば普段これだけ仕事してますってわかるだろ。これなら仕事をしつつ、息抜きで遊びに来てますってわかる寸法だ」
「それめちゃくちゃいいわね!」
「確かに! それなら国自体の生産性も上がるかもしれないな!」
その方法をすぐに実施した。二枚の証明書の提示を義務付けたことで破産する人が大幅に減り食料自給率の改善にも繋がった。そして、店としても利益を出せるようになった。
「エデン。これはすごい効果が出てるわね。あなた商才があるわよ」
「国も救っちまったなぁ。国民大喜びじゃん」
「そうだよ。求人も出せるようになって、高収入で働けるってことで国のニートも働ける場所になったしな!」
「雇用の『創造』もしちゃったってわけかぁ。偉すぎるな俺」
「ちゃんと商会としても利益が安定してきたぞ」
「エデンはんさすがでんなぁ! パチスロ店も普段から魔物が店員しとるおかげでそんなにトラブルもあらへんで!」
「そうなのよぉ~! 暴れているお客さんも『ケツモチ』で私たちが出ていくとすぐおとなしくなっちゃうのよね~!」
「『豪剣のクアントゥス』もギャンブル酒浸り生活から剣士として復活したらしいぞ」
「それはどうでもいいや」
「……冷たいなお前は」
「とりあえず、これで当面、俺たちが金銭面で苦しむことはないな!」
「そうね。それはいいんだけど、私たち大事なこと忘れてないかしら?」
「そうだエデン。まおうじょ――」
「よ~し、今日はみんなでなんのゲームするぅ~?」
「そうですわねぇ……この『アソベ大全』やりましょうよ~!」
「ええですなぁ! これならみんな楽しめますわなぁ!」
三人の様子を見て、呆れるように卵王は呟いた。
「……アネス。我々だけはちゃんと忘れずに――」
「すごいわねこれ! こんなにも遊べるゲームがあるの⁉」
「みんな記憶無くなってんのかな?」
――本当に魔王城に行く気があるのか、不安しかない卵王であった。




