第44話 勇者、討伐パーティーを催す
「おかえりなさぁい! よく倒せたわねぇ! さすがエデン様だわぁ!」
「ギョロ美ちゃん! 私も頑張ったのよ! そそくさと逃亡して全く……」
「どうせみんなで食べるだろうなって思って準備しといたわよぉ! 食べましょう!」
「トモミチのグールもいっぱい連れてこいよ。この辺の住民(債務者)も呼んでパーティーしようぜ!」
「いやっほぉお! それは最高でんがな! いっぱい呼んできまっせぇ!」
ビーチには周辺の人々やグール、半魚人などもマンティコアに驚きながら集まり、最高のパーティー会場と化した。勇者の栄光は下々の人々に讃えられた。マンティコアの肉はほどほどに美味かった。
しかし、ヘンドリクス王子は気になっていることがあった。
「アネスよ。少しいいか」
「はい王子。なにかありましたか?」
「あのマンティコア。なぜあそこにいたのか、未だに気になるのだ」
「確かに……あんな伝説級の魔物。この辺にいたらもっと早く気付かれるものですが」
「マンティコアも最初、我々と会ったときに『こんなに人肉を用意してくれていい国だ』とか『大人しくついてきて良かったですわねぇ』とか言ってたのを聞いたか?」
「確かに……よく考えればおかしいですね。最初からあそこに誰かが来るとわかっていた」
「これは……仕組まれたものかもしれない」
「……まさか兄上様が……」
「まだ北方の最前線で力を尽くしていると聞いていたが、俺が討伐依頼を勇者に託すことを知ってマンティコアをあそこに誘導したとか……」
「まさか……そんなことができるのですか?」
「わからない。だが、あまりにも怪しすぎる。マンティコアを討伐したことを王に報告しなかったのは逆に功を奏したかもしれないな」
「なるほど……第一王子『ランドレスディアム・ゴードン』様は……その、悪い噂が絶えませんからね」
「俺からも調べを進めておく。引き続き、アネスも警戒してくれ。まだなにか起きそうだ」
「はい。承知いたしました」
「ねぇねぇ」
横を見るといつの間にかエデンがいた。
「うわぁ! お前、一声かけろよ! びっくりするだろ!」
「王子様よぉ。事前に言ってたこと忘れてないよな?」
「え? なんか言ってたっけ?」
「討伐依頼。確か増額するって話」
「……あぁ確かに言ったな」
「Sランクだからとんでもなく高い討伐金なんだろうなぁ! な、王子!」
「……金貨五十枚でどうだ?」
「……えっ? 毎月の給料、金貨三十枚なのにたったそんだけ? なんかおかしいなぁ。あーちゃん相場ってどのくらい?」
「……Sランク討伐は過去に数回しかないが、金貨二百枚ほどはあったと思う……」
「えっ⁉︎ えっ⁉︎ 嘘じゃん! この王子嘘ついちゃってんじゃん! 四分の一にしようとしてるじゃん! これは勇者差別だよなぁ……ひでぇなぁ」
「あんさんそれはひどいでっせ……あんな大変な思いしたっちゅうのに……」
「そうよおぉ! 死に物狂いで倒したのにそれは酷いわぁ!」
「あんちゃんお偉いさんなのにひでぇやつだなぁ」
「それは男じゃねぇぜぇ!」
周りの債務者からも声が上がって罵詈雑言の嵐。さすがに耐えきれなくなったら王子は諦めたようにこう呟いた。
「……わかったよ金貨二百枚だ……」
「よしきたぁあ! そうでなくっちゃなぁ! それでこそ王子っちゅうもんだぜぇ!」
「分割払いで頼む……」
「まぁしょうがないなぁ。じゃあそろそろあだ名も決めようか。王子って呼び続けるわけにもいかないし」
「……いやヘンドリクスでいい。怖いあだ名つけるし」
「う〜ん……今んとこは『ギョロ男くん』『卵王』『たま男っち』のどれかになるなぁ……」
「おい。なんですべてギョロ美ちゃんに関連しそうなあだ名ばかりなんだ?」
「えっ? 将来、ギョロ美ちゃんと結婚とかあるかもしれないしなぁ」
「なぁに〜⁉︎ 私をそんな目で見てたのぅ? やだわエデン様もいるっていうのにモテモテで困っちゃう!」
「……するわけないだろ。なにをほざいてる?」
「じゃあ、ギョロ美ちゃんも賛成ってことで、『ギョロ男君』だな!」
「ちょっと待て! 勝手に決めるな! それならまだ『卵王』の方がいいわ!」
「しょうがないなぁ……じゃあ『卵王』に決定だ!」
「王子……本当にそれでよろしいのですか?」
「しょうがないよ……もう俺には選択権はないみたいだし……」
「よろしくの! 卵王!」
「卵王ちゃんよろしくねぇ! その名前を選んだってことは私たち運命よぉ!」
「王z……うぅん! 卵王。これからよろしくお願いします」
「……はい、よろしくね」
「じゃあ、これからは索敵とか、王へのスパイみたいな感じでよろしこ~」
「……わかったよ。この国で暗躍しているやつがいるみたいだしな。俺が適任だろう」
――こうして、勇者エデンの元に斥候『卵王』が加入することとなった。




