第24話 ハイタッチ
*
時は少し遡る。
僕とションフォンの協力技で魔物を討伐した後に、もう一体暴れまわっている魔物を見つけたのだ。こいつを野放しにしておくと、さらに被害が拡大するかもしれない。
「ションフォン、あいつを抑えよう!!」
「ああ、さっきと同じ作戦でいこう、俺が質量魔法で抑えるから、セイシロウが中心の破壊を!!」
「うん、わかった!」
ションフォンが片手を掲げて、質量魔法による行動の抑止を計る。だが、魔物は僕たちが近づこうとすると機敏に逃げていく。魔物が学習するというのは先生からも聞いたことないが、もしかしたら先程のションフォンの魔法から始まる連携攻撃を学習したのかもしれない。
「クソッ!! タイキやリタも心配なのに!!」
珍しくションフォンが冷静さを欠いている。タイキやリタと離れた宿屋からはかなり距離を空けてしまった。食事中の魔物の一体が、二人の近くにいたことを考えると、タイキとリタの姿を目視できないことが余計に心配に拍車をかける。
「結果、魔物に俺らのうち誰かが殺されるというのはシチュエーション的に多いにありえる可能性だ」というションフォンの言葉が思いだされる。嫌な予感を感じたが、それを掻き消すように頭をぶんぶんと横に振る。きっと、二人とも無事であることを信じて、今は目の前の魔物を討伐することに専念しなくては。
「ションフォン、なにか策ある?」
「いや、これだけ逃げられるとな。オレの質量魔法で動きを鈍くする方向で考えていたが、方針転換をした方がよいかもしれない……。セイシロウはなにか策が?」
「うん、一つ思いついたことがあるんだ」
直線でよーいどんの状態であれば、魔物のスピードにも簡単に追いつける自信はある。だが、ランダムに運動する魔物を捕らえるには、小刻みに方向転換をしなければならず非常に難しい。よって、まずは動きを止める必要がある。トラップや堀などがあれば簡単なんだろうけど、この村にはそんなものはない。
よって、自分自身が魔物の動きに合わせて瞬時に方向転換をする必要がある。
「僕に質量魔法をかけてほしい、魔法訓練でやったときみたいに」
「ッ!! なるほどな、そういうことか。質量は今の体重の半分くらいで良いか?」
「うん、大丈夫!」
ションフォンの質量魔法は重くするとは逆に軽くすることも可能だ。一度、穢れなき軍事学校で試した際には、質量が減ったことで地を蹴る力が弱まり、前進力が落ちてしまったものの、代わりに一回の跳躍距離が下がり、前後左右への小回りが利く機動性を確保することができた。
ションフォンが質量魔法で僕の質量を半分に抑える。身体が軽くなり、綿毛のようにどこにでも飛んでいけそうだ。これなら行ける!!
僕は魔物の不規則な動作に合わせるように、小刻みに地面を蹴りながら、徐々に魔物との距離を縮めていく。よし、魔物をどんどん追い詰めることに成功した。魔物は少しでも距離を離そうとしているのか、あえて家屋を破壊しながら、ジグザグに転がる。だが……。
「捕らえたッ!!」
僕の拳骨が魔物の黒い無機質な表皮を破壊した。さすがに不規則運動をしながら、さらに質量低下により拳の威力も下がっている。中心を破壊するには至らない……。魔物の単眼が破壊した表皮の真上から、急に浮かび上がり僕という敵を捕捉する。
「掛かったな」
僕はすぐにバックステップをする。いつもより軽い身体は僅かな脚力で大きな跳躍となった。次に来る攻撃は噛みつきのはず。
黒い球体が割れる。大口となり、僕の脳を食べようとしている。ビンゴだ!!
背後へと跳んだ僕と入れ替わるようにして、ションフォンが魔物に追いつく。魔物が動作を停止した時点で僕たちの勝ちだったんだ。
「動くなよ」
ションフォンの質量魔法により、動きを静止させた魔物を僕の鉄拳が中心を破壊する。魔物は機械音を立てながら、機能を完全に停止した。
僕は掌を高らかにションフォンに向ける。ションフォンもまっすぐに僕を見据えると、「よし!」と短く勝利を噛み締め、僕とハイタッチを交わした。
僕とションフォンが何とか逃げ惑っていた魔物を葬り、宿屋の正面玄関に駆け足で向かうと、リタだけがそこにいた。タイキの姿が見当たらない。僕はリタなら状況を知っているだろうと思い、リタにタイキの居場所を聞こうとすると、先にリタがこちらに話しかけてきた。
「タイキを見なかったっ!?」
「え!? リタと一緒にいたんじゃないの?」
「そ、それが……、小さい男の子を保護したから、レーベちゃんがいる部屋に預けに行っているうちに姿を消しちゃって……」
「あの魔物を倒したのか?」
僕とリタの会話にションフォンが割って入る。
「うん。生成魔法で遠距離から、こう、ずばーっって倒した」
「リタの説明はよくわからんが、とりあえずよくやったな。……あとはタイキだけだが、……そうだな……、セイシロウお前に任せて大丈夫か? セイシロウであれば迅速に行動できるし、なにより、単独で魔物とも渡り合える。……また、情けない話だが、エーテルの使用効率が分からずに大量に使いすぎた。俺のエーテルが尽きかけている状況だから逆にセイシロウの足手まといになりかねない……。本来であれば、リタもセイシロウに付いていってほしいんだが、俺の魔法では魔物の中心を破壊できない。よって、リタはこの場に残ってもらいたい」
「うん、わかった」と、僕は即答する。リタも静かに頷いた。迷うまでもない、無理をさせてしまって、勇者のうち誰かが欠けてしまう訳にはいかないんだ。これがションフォンの判断であればベストに近いはずだ。
「ただし、何か問題が生じたら、必ずここに帰ってこい。深追いだけは絶対にするな、お前は正義となると見境がなくなるからな」
「うッ!! 気を付けることにする」
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