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第22話 結界魔法【タイキSide】

 

「きゃああああああああああああああああああ!!」


 オレは背後を見ることができない。何が起きたのかは想像するに容易いし、なにより自分の弱さで人を死なせてしまったところを見たくなかったから。今はとりあえず魔物と距離を離さなくてはならない。もしかしたら、この行動も自分の弱さを体現した自己防衛のための言い訳なのかもしれない。


 カーミラは一切暴れなくなったので、手を引いて魔物から逃げる。安全地帯というほど距離を離してはいないけど、ひとまず喫緊きっきんの危機は去った。オレは傷一つない馬小屋と森の狭い通路にカーミラを連れて身をひそめることにする。


 体育座りでカーミラと横に並んで座る。彼女のすすり泣きがオレの心を痛みつけた。


「どうして……?」


「え?」


 突然話しかけられたオレは身体をびくっと震わしてしまう。「どうして」という言葉の意味は何となく予想できるはずなのに、オレは気づいていないふりをして聞き返してしまった。


「どうして、トーマスを見殺ししたの!? どうして、私も死なせてくれなかったの!?」


「そ、それは……」


「トーマスを助けるにはあまりに時間がなかった。あのまま居続ければ、君の命も危なかっただろ!!」と、言いたくなって口ごもってしまう。いや、違うんだ。こんな綺麗事な理由を並べても違う気がする。


 だから、本心を語ることにした。自分の弱さをありのまま。自分の醜い心の内を。


「オレの、オレの……自己満足で君を助けたかったんだ!! 他の勇者は魔物討伐を成し遂げる中で、オレは何もできなかった!!!! ……だから、オレにもなにかを成し遂げることが出来るんだっておもいたかった。……ごめん、本当にごめんなさい!!」


 助けた少女カーミラはオレを睨みつけてから、オレの胸をぽかぽかと叩く。その力はかよわく、痛みは全く感じない。……はずなのに、心が痛みつけられて、卒倒そっとうしてしまいそうだ。


「どうして……、どうして!!」

「ごめん……、ごめんなさい!!」


 気づくのが遅れた。日光が当たらない狭路きょうろに隠れていて、日陰となっていたから。いや、違う気がする。自分の贖罪しょくざいで周囲に注意を向ける余裕がなかったことが関係していそうだ。


 最初に異変に気づいたのは、カーミラの表情だ。顔面が固まり、みるみる恐怖へと変貌へんぼうしていく。オレはゆっくりと背後を振り向くと、そこには魔物の一つ目がオレらを凝視していた。


 魔物は木と小屋をなぎ倒しながら、ゆっくりとこちらへと転がってくる。オレはカーミラを守るように立ちふさがる。この子だけは絶対に守りきる!!自分の命に代えても、絶対に。


 オレの魔法は攻撃には向いていない。


 けど、時間稼ぎに関しては得意だ。オレの右手の魔法陣が輝きだす。右手の紋章は、円の中心に交わるように二つの半円の弧が描かれている。この紋章を見て、オレは算数の授業を思い出した。コンパスを使って線分の端から三角形を描いたことあった、それと同じように弧の部分が対をなすように中心部のみが重なっていた。そして、円の中心部に小さい丸、一直線の縦線が引かれている。何を意味しているかはよくわかんないけど、これがオレの魔法陣だ。


はばめよ、結界ッ!!」


 オレの言葉と同時にエーテルで構成された光の壁が目の前に現れる。魔物は壁にぶつかり、バチッと音を立てる。回転数を上げながら、無理矢理突破してこようとするが、オレの元へはたどり着けない。これがオレの魔法、結界魔法だ。


 結界魔法は自身のエーテルを光の壁に変換して出力する。魔物だけでなく、物理攻撃も含めて侵入を抑止する。また、結界の中にいれば、エーテルを味方の勇者に分け与えることもできるらしい。セイシロウが倒れた際にも、とりあえずオレの魔法でエーテルを分け与えて回復させた。攻撃にはあまり向かないが、一応壁を前面に押し進めていけば、圧力で攻撃することもできる魔法だ。


 だけど、今のままではジリ貧だ!オレにはこの壁で侵入を防ぐことしかできない。


 魔物は前進を諦め、今度はギザギザした牙での攻撃を試みる。鋭い牙でもこの結界の壁を通すことは出来ないが、いつ破壊されるかわからない。だから、オレはせめて首だけを横に振って、カーミラに対して言葉をぶつけた。


「カーミラ、逆側から逃げるんだ!!」


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