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第18話 ランマット防衛線【ベルーガSide】

第1章は世界観の説明でしたが、第2章の次話から序盤の山場になります。ブクマ等で応援の程よろしくお願いします。

 

「ああ、堀の内部に魔物が侵入した原因についてだが、それは我の命令によるものだ」


「は?」


 ちょっと何言っているかわからない。つい、すっとんきょうな声を発してしまう。今は王子殿下の前だ、慌てて発言の訂正に動くことにする。


「し、失礼しました。今の発言の意図を図りかねまして……」


「再度伝えると、我が命令した。堀に滑落して動くことが出来ない魔物を一体引きあげて、魔法訓練をしていた場所に向かうように騎馬を走らせた。乗馬していた兵士数名は犠牲になったようだが、我の命令を忠実に守ってくれたお陰で作戦は成功した」


「……なぜ、そんなことを?」


「前回の勇者と共に行った大規模未開拓地調査で我々も甚大な被害を受けた。勇者が使い物にならなかったからだ。今回召喚した勇者が使える奴かを見極める必要があるだろう? なにせ我らの大事な兵の命を預けなければならないのだから」


「私の部下が一名亡くなりましたが?」


「必要な犠牲だ。一名で済んだのであれば、ベルーガの指示がよかったのだろう、よくやってくれた」


 亡くなった部下の名はコロット=クライオス。雑兵じゃない、一人一人名前があって、人生があるんだ。コロットは士官学校を卒業して、襲撃軍にて前線で死線を潜り抜け、参謀軍配下の育成部隊に配属された。気さくでうちの隊のムードメーカーだった。それが必要な犠牲か……。つくづくこの世界が嫌になりそうだぜ。


 とはいえ、殿下に怒りの矛先を向けるのも違う、殿下はこれが救国のためだと判断されたのだろう。であれば軍人である以上、方針には従うつもりだ。


「お褒めにいただき恐悦です」


「うん、それでは、引き続き勇者のことをよろしく頼むよ。彼らの協力なくして、魔王の根城ねじろは発見できないだろうからね」


「はっ!! 承りました!!」と、敬礼をきめる。俺がきびすを返そうとしたときに乱暴に扉が開いた。


「し、失礼します!!!! 伝令です。ランマット防衛線が魔物によって突破されました!!」


 王子殿下以外の軍隊長の面々が一斉に立ち上がる。誰もが驚愕、恐怖、苦悶を混ぜ合わせたような混沌の表情を浮かべていた。


 ランマット防衛線。魔物に対抗するために土属性の魔術によって建造された巨大な堀が王都を守るように三重に張り巡らされている。そのうちの一番外側の堀から、ランマット防衛線、ミドモア防衛線、ショーモート防衛線。文字通り、人類の活動範囲を示す防衛ラインとなっている。ランマット防衛線が王国からは一番遠いとはいえ農村や集落がいくつかあり、面積が広いことから小麦畑が多い。ランマット防衛線が突破されているとなると、食糧難に陥る可能性はある。


 ちなみに、堀の深さは5メートルにも及び、一度滑落すると球体である魔物は抜け出すことが出来ない。また、水属性魔術によって堀の地面は泥濘ぬかるみとなっていることで、魔物は跳躍もできずに嵌まり込む。そこに集団で魔術を叩きこみ、エーテルを枯渇させるこれが俺ら王国軍の基本戦略だった。


 この伝令を受け取った軍の総司令であるウィズダム殿下は少しばかり考えてから、まずは情報収集を優先した。


「敵の位置と数は?」


「数体と思われます。詳細の数は不明。魔物の進路から、まもなくゴビ村に到着すると推測できます!!」


 ゴビ村だと!?


 ゴビ村は勇者が滞在している村、あまりにタイミングが悪すぎる。魔法訓練は周囲に大きな被害を及ぼす可能性もあることから、ランマット防衛線の内地で行われることが多い。有事の際には勇者も駆けつけて助けられるように、という目的もあったが、今回に関しては完全に悪い方向に働いていた。


 俺ら育成部隊の魔術兵は一旦王都へ帰還してしまっている。勇者は支援を受けることができない、孤立無援の状態だ。


 情報を仕入れた王子殿下は軍令を飛ばした。


「ゴビ村は見捨てる。後方の第二防衛線であるミドモア防衛線に兵を集めよ。王都にいる国防軍の精鋭数名を急ぎピックアップしろ、我の転移魔法でミドモア防衛線まで送り届ける」


「ちょ、ちょっと待ってください!!」


 俺は私見を挟む。殿下はここで勇者を見捨てるというのか。


「勇者がゴビ村にいます! 転移魔法で数名をゴビ村に転移させ、支援したほうがよいのでは!?」


「……いや、それは無駄に兵を死なせる行為だ。転移出来て3-4名の兵士だ、堀もない状態で闘うにはいささか分が悪すぎる。ゴビ村に勇者がいるのであれば、勇者が魔物を討伐してくれることに賭けよう。どちらにしても、我々は勇者の英雄譚えいゆうたんに期待するしかないのだから。万一に勇者が敗れたときに備えて、ミドモアで防衛線を維持するのだ」


 くそっ、確かに今はそれが最善な策な気がした。今回の勇者たちなら、きっと乗り越えられるはずだ。リタは精密な射撃力、タイキは高度な支援力、ションフォンは冷静な分析力、そして、セイシロウは不屈の精神力を有している。過去の勇者とは比肩ひけんにならない実力者たちだ。


「御意に!!」


 あわよくば勇者誰一人欠けないでほしい、俺は急ぎ軍議室を後にした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 王子はドライな気もしますが、頭の回転が早すぎて彼の結論に周囲がついていけない感じがします。ベルーガは好きではないようですが、私は好きです笑 彼の犠牲を織り込んだ上での決断はセイシロウに似てい…
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