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第15話 叛乱か?勇者か?

「そうか、ありがとう、辛い質問をしてしまったな、わるい。……そうだな、先にそこから話してしまった方がよかったか。この残酷な世界からおさらばして、元の世界に帰還する方法について、俺は大きく二つあると考えている」


 「「「二つ!?」」」と、僕たちは異口同音いくどうおんに発言する。一つは魔王を倒すとして、もう一つはなんだ??


「一つは皆が想像しているように、正攻法で魔王を倒すことだ。極力魔物との戦闘を回避しながら、魔王城に辿り着き、魔王を打倒すればよい。魔王を倒せば、あの王と言えど、俺らを元に戻すしかないだろう。とはいえ、魔物はの向こうには大量にウロウロしているらしいから、な。これから何度も命が危険に晒される可能性はある。いくら命があっても足りないだろうが、“人間性”は失わなくて済む」


 人間性?ちょっと、ションフォンの言葉の意図が汲み取りきれないが、一旦は話を最後まで聞こう。


「もう一つは、……叛乱はんらんだ。この王国の国民を全員見捨て、王国に反旗はんきひるがえす」


「えー、でも、魔王を討伐しないと、元の世界に戻ることが出来ないって、国王陛下様がいっていなかったか?」


「いや、タイキの指摘は間違っている。正しくは『今はできん』だ。今はということは、機を待てば、やり方が他に存在するということを言及しているに等しい。そもそも、転移魔法で呼びよせたのであれば、逆に、俺らを元の世界に送りかえすことは出来るはずなんだ。それを奴らの目的である、魔王討伐に意識を向かせるために話をすり替えた、と俺はみている」


「ご、ごめん、僕がちょっとついていけなくなった。叛乱を選択することと人間性を失うことはどう関係するの?」


「ああ……。セイシロウの質問に対してだが、まずはこの世界の国民を見捨てることになる。この状況を打破してくれるはずだと、俺らにかかる期待している人たちを見捨てるという意味。……そして、もう一つはこの国は絶対王政を施いていることになる、つまり国王の命令次第では、俺らは奴らと闘わなくてはならない。最悪、人を殺めることになるかもしれないだろう」


「そ、そんなことできるわけがない!!」


 僕は大声で否定をする。国民の中には僕の命を救ってくれたベルーガ先生や一緒に学んだ士官学校の学生や歓迎会に参加してくれた兵士もいるんだ。彼らを自らの手で殺めることなんてできるはずがない。


「ああ、俺も現状では取るべき内容ではないとは思っている。ただ、採ることが出来る選択肢を正しく理解しておくは重要なことだ。俺らが故郷に帰るためには、現時点で二つに道が分岐しているんだ。俺ら四人は同じ境遇のいわば、運命共同体だ、どちらを選択するかを真剣に考える必要がある。それに……」


 ションフォンが、またしても言い淀む。ションフォンの眼光がより鋭くなった気がする。


「俺は王族を信用していない。歴史についての講義を覚えているか?」


「あーしはまったく、頭に入ってこなかったよ、なんか重要な話していたっけー?」


「勇者を派遣した歴史だ。過去数回にかけて魔王討伐に派遣している、何回失敗しているのかは、ベルーガもついぞ教えてはくれなかったが、講義の中で、そのうち敵前逃亡した勇者が、魔物に食べられて死んだという話があったろ? ここからは俺の推測だが……」


 ごくり。静寂の中で僕が唾を飲み込む音が辺りに響く。


「……国王に抹殺されたと見ている」


「え!? 僕の聞き違いかもしれない、もう一回いい?」


 僕の耳に入ってきた情報が信用できない。念のため、再度ションフォンに聞き返すことにする。


「ああ、国王に抹殺されたんじゃないかと言っている」


「そんな……馬鹿なことが……」


 いや、確かに怪しい仕草はあった。あのとき、確か国王は……。考えを巡らせていると、タイキが我慢できずに口を開く。


「なんで、そんなことわかるんだよ!?」


「国王に謁見えっけんをしたとき、衛兵が話をしている中で、王が言葉を制して、自らの言葉で言い直したことがあっただろ? あのときは単純に失敗が繰り返されていることを隠そうとしたと考えたんだが、ベルーガはいとも簡単に俺らに授業という名で正式に公表した。つまり、それ以外の隠しごとがある可能性が高いと見ている。……つまり、抹殺だ。敵前逃亡をした兵士を後ろから射殺するなんて戦争ではよくあることだ、おそらくアイツらはそこまで平気でやると考えている」


「ま、まさか……そんなこと……」


 タイキは口ごもってしまう。国王陛下とションフォンとの会話の中で、最後に国王陛下がとった態度を見る限り、絶対にないとは言い切れないかもしれない。タイキもありえる話だと想像しているのだろう、次の言葉が出てこないようだ。リタが重苦しい空気を吹き飛ばそうと口を開く。


「そうだ! ベルーガ先生に相談するっていうのは、どうかなっ? 一か月授業を聞いている中で信頼できる大人だとは思ったんだけど」


 僕もベルーガ先生は信頼している。良さそうな案だとは思ったが……、ションフォンは浮かない顔のままだ。


「いや、却下だ。というよりは、ベルーガはこの情報を知らされていないと考えている。そもそも知っているのであれば、敵前逃亡は死刑だと伝えて、講義の中に織り込めばよかったんだ。国王寄りの立ち位置なら、伝えておくことで事前に防げるし、俺ら寄りの立ち位置ならば、絶対に敵前逃亡をやるなと伝えればよい、どちらにしても伝えるはずなんだ。ただ、それをしなかったということは、そもそもその情報を知らない可能性もある、国王にとっては信用していない部下の一人。つまり……」


「下手をすると、ベルーガ先生も巻き込んで殺される可能性もでてくるってこと?」


「ああ、セイシロウの言う通りだ」


「じゃあ、ベルーガ先生は頼れない。頼れるのは自分とここにいる仲間だけ……だね。……まとめると、僕たちが取りうる道は“勇者”か“叛乱”か。“勇者”を採るならば、王国民を助ける道だが、命がいくつあっても足りないほど過酷な環境に立たされる。それに、敵前逃亡は即、死につながる。“叛乱”を採るならば、王国民を文字通り殺す修羅の道、この状態で元の世界に戻って、人間のままでいられるかは怪しいで理解あう?」


「ああ、これに関してもセイシロウの言う通りだ。……長々と俺から話してしまったからな、そろそろ現段階での決断を出したい。ちなみにこのタイミングで意見が一致しない可能性もあるだろう、その場合は申し訳ないが多数決とさせてもらう。……また、考えの相違はありえるため、少数派を批判するのは無しとする。どちらを選択しても、頷くのみとしてくれ。少数派に関しては、不服として、個人で動くのも勝手だが、あまりお勧めはしない。……いや、この言い方は少しちがうな。俺は皆と一緒に過ごしていく事が本当の仲間だと思っている。世界線も、国家も、魔法も、個性も、すべて違うが、勇者という立場は変わらない、協力してほしいと思っている」


「うん、僕たちは仲間だ、同じ勇者だ」

「ああ、そうだぜ!!」

「うん。あーしもそう思う!!」


 この一か月間で訓練に励む中で僕たちにはすでに仲間意識が芽生えていた。僕たちであれば、どちらの選択であっても乗り越えられはずだ。ただ、“叛乱”の場合、僕は殺せるのだろうか、人を。いや、今は考えるのはやめよう。僕にとって選択肢はあってないに等しいのだから。


「状況が変わる可能性も出てくるかもしれないが、まずは現時点での思いを聞きたい、まずはセイシロウ」


 僕からか。僅かばかり、ションフォンから意図的なものを感じる。


「僕は“勇者”だ、正義を遂行することが僕の使命だ」


「了解だ、次、タイキ」


「そうだな……、さすがに人を殺す覚悟はねーよ、“勇者”で」


「了解した、次にリタ」


「うーん、あーしも“勇者”かな……。先生と戦うことは想像したくないし……」


 良かった、ひとまずは多数決では魔物を協力して倒す方向で落ち着きそうだ。最後の意見、これまで僕たちに複数の選択肢を与えてくれたションフォンの意見に皆の注目が集まる。


「そうか、皆の意見は分かった。最後に俺の意見だが……、そうだな」


 ションフォンは顎に触れて考えを巡らせている素振りだ。間を置いてから回答した。


「俺は“叛乱”だ。魔物よりも人間の方がくみしやすい。なにより、国王がいけ好かないからな。……とはいえ、多数決では“勇者”が選ばれた。俺はその方針に従おうと思う。魔王討伐を最優先としてこれからは行動しよう。また、意見が変わったら教えてくれ。再度勇者同士で話し合おう」


 僕たちは頷き、勇者四人での会議はお開きとなる。少数派であっても批判はしない、ションフォンが決めたルールだ。否定をするつもりはないが、ションフォンは先ほどの口ぶりからすると現時点では“勇者”を選択すると思っていた。


 予想もしていなかった「俺は“叛乱”だ」というションフォンの言葉が僕の頭の中で何度も何度も反芻はんすうしていた。



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