第10話 「魔術」と「魔法」と「タイキの苦難」
僕は即座に絶望からカムバックした!
「次に魔術と魔法について説明するぞ」
さっきまで、手持ち無沙汰だったタイキが、急に前のめりで先生の話に耳を傾けた。
「おっ、キタキタ!! 魔術は知識としてあるけど、魔法は初めて聞くから、楽しみだぜ!!」
「まず、魔術だ。魔術はエーテルを属性に変換をする学術のことを指している。その属性は火、水、風、土の四属性だ。体系化がすでにされていて、使えないのは、あー、幼児くらいかな。生活にも必需の知識となっている、例えば夜に火を出して灯りとしたり、金属を加工した際に水で冷やしたり、使い方はいろいろだな」
ここは魔術が当たり前に存在する世界、僕たちの世界は科学が発展してきてけど、その代わりに魔術で文明が発展してきたのかもしれない。
「……次に、魔法だ。魔法は魔術同様にエーテルを魔法陣と呼ばれる身体に刻まれた魔術式を通して特殊な力に変換する。特殊な力の種類は魔法陣ひいては魔術式に依存する。……例えば、お前らがこの世界に召喚されたのは王家に代々伝わる転移魔法による力で、この魔術式は王家に一族継承されている。また、魔術と大きく異なる点は、魔法は奇跡の力ということだ。魔術と違い仕組みが全く分かっておらず、なぜ発動するのかの仕組みも不明だ。そして……、お前ら全員の右手に刻まれているのが、その奇跡の力、魔法陣だ。」
僕を含めた勇者四人は自分たちに刻まれた右手の魔法陣に目をやる。僕の魔法陣は五芒星で、他の人とは異なる。僕の魔法はどんな魔法だろうか?この魔法を使いこなして、初めて魔王討伐に繋がる気がする。
「じゃあ、一人ずつその魔法の力を試していくか、じゃあ、まずはセイシロウ」
「はい、先生!!」
「そうだな……、比較対象がいた方がいいか。ションフォン、タイキお前らも教壇に来い」
僕たち三人は並んで教壇に立つ。
「まずは、ションフォン、お前がタイキに殴ってくれるか?」
「いいぜ、ションフォンどんと来い!! 今日はちょっと小さい火を出しただけだから、たっぷりエーテルもあるし、殴られても余裕だぜ!!」
「わかった」とションフォンは短く伝えると、右手で振りかぶって、タイキの頭を殴った。だが、タイキはびくともしない。痛みも感じてないようだ。
「まあ、こうなるのが普通だな。次、セイシロウお前が力を込めて殴ってみろ、あ、多少は手加減しろよ」
ん?オーダーが難しいぞ。優しく殴ってもいけないし、だからと言って強すぎてもいけない。うーん、どのくらいだろう。僕は右拳を強く握りしめる。バチバチと火花が散るような音が鳴り右手の魔法陣が輝き始めた。
力加減については、空手の部活で準備運動として、流してやるような正拳付きを繰り出すことにする。
「ちょ、ちょまって、なんかヤな予感が……」
タイキが何か言っているが、僕はもう止められない。僕の拳がタイキの頬にクリーンヒットした。「あべしっ」といいながら、後転六回転をしながら、入ってきた大扉も突き抜け壁にタイキが突き刺さった。
改めて、平然とベルーガ先生が教えてくれた。僕の魔法は強化魔法、威力は見ての通り。タイキは僕の魔法の犠牲になったのだった。
*
「……と、まあ、さっき実践してみせたように、お前らはそれぞれ異なる魔法が使える。例を出すと、セイシロウに刻まれた強化魔法に関しては、エーテルを自分の身体内を巡らせて爆発的な身体強化を得ることが可能となる魔法だ。……まあ、細かい仕組みはわからんが、おそらく生成されるエーテルを拳に集めたり、脚に集めたりすることで相手の身体を纏っているエーテルを凌駕することで、圧倒的な貫通力を得られることが出来るのでは、と魔法研究者は言っていたな」
「せんせーい、ちょっといいっすか?」
タイキが不満そうに口を開く。
「ん、なんだ?」
「なんだ、じゃないっすよ!? 何でションフォンの魔法もリタの魔法もオレに向けて試させるんですか!?」
「ああ、すまん、すまん。魔法の凄さを伝えるうえで一番反応がよさそうだったから、つい、な」
「ついってなんですか、ついって!?」
タイキは怒っているが、僕たち三人はうんうんと頷いていた。リタは女の子だし、さすがに殴ったりできない。ションフォンはそもそも殴られることをヨシとしなそうだ。なんかしら理由をつけてタイキに殴られ役を回しただろう。
「ハハハ、まあ、許せって、今度良い大人の店つれてってやるから!」
「はいっ! 一生付いていきます、先生!!」
現金な奴だった。
「さて、次に魔物についてだ」
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