FILE:73 ゼロアワー
FILE:73 ゼロアワー
北部軍 最大戦艦デアトイフェル 管制室。
「カーネル長官。お話が。」
管制室内はやたらと慌しかった。
「それどころじゃない!」
「いえ、デアトイフェル始め司令部を後方に回すことを進言します。」
ピタリと全員の動きが止まる。そして、視線を大和に移し変える。
「何を言っている・・・?我々に引け・・・とお前は言っているのか?」
最終決戦と銘打ってこの様では彼らのプライド、信用問題に関わる。
大和とてそれを重々承知に上だった。しかし、それでも大和は言う。
「ここで引くことが勝利への近道ともいえます。」
「だが、しかし・・・。」
その頃、デアトイフェルの兵士達は皆力を奪われていた。
朝食に睡眠薬が盛られていたのだ。
動力に必要な人員以外は既に食堂や持ち場で居眠りをしている。
その事実は決起の意思を持っているものだけが把握していた。
そして、そのうちの一人―グレン・ライトは剣を抜いた。
一斉に場に静寂と緊張が訪れる。
「こちらに来てもらいます。長官。」
「大和通信長。君は必ず後悔するッ!!」
「本望です。」
大和の表情は非常に柔和な様子。しかし、その目は確実に何かを見据えた鋭いもの。
ランスはそれに気がついたが渋々決起派の人間と共に多くの兵士が眠っている食堂に軟禁された。
通信室。
「デアトイフェル級戦艦二隻に通信だ。」
「はっ。」
【これより後方に司令部を移譲する。】
【・・・了解。】
大和はそれだけを残すと再び通信室を後にした。
□■
早乙女空母 作戦会議室。
「デアトイフェルの機関停止を進言します。」
そう述べたのは隊員は隊員でも空母のパイロットの男だった。
飛行船のエキスパートとも言えるエデンポリ・オウディンは西たちと共に作戦会議室に入っていた。
「機関停止・・・。つまり、動力源を叩けと。」
「ですけど、ありゃどう見ても空海両用タイプです。飛行石を叩いただけでは・・・。」
西は少し思案した様子で付けたしをする。
「ワ爆の処理は海上で行うほうが良いだろう。」
「・・・機関停止は俺がやりましょう。」
元々陸軍出身の吉岡がそう述べた時には他の者の顔は大層驚いた表情となった。
「だが、しかし。」
「俺も行きます。」
突然、場に今まで無かった声が無線越しに放たれる。
いつから聞いていたのか声の持ち主は斉木。
【作戦に覚悟は必要です。司令。判断を!】
「分かった。承認する。」
早乙女空母 滑走路。
遂に国防軍が介入する瞬間―。
「ゼロアワーです。」
作戦開始時刻を示す言葉が流れ、CH-53に数名の男達が乗り込む。
発艦の合図が下され、CH-53は空に舞い始める。
デアトイフェル付近上空。
【こちら。CH-53。目標を確認。これより任務に入る。】
【こちら。空母。エデンポリによれば、飛行石は飛行船の後方部にあるらしい。スティンガーミサイルで落としてくれッ!】
【了解。】
「聞いたな!後方部に飛ばしてくれ。」
吉岡の指示の下、ヘリが大きく旋回を開始する。
「熱源探知しました!」
「PSAM発射ッ!」
毒針を意味するスティンガーが熱源に向かって放たれる。
「シースタリオン。スティンガー発射しました。」
西もその声を管制室で聞き、少しばかり祈る。
奇妙な飛行物体を北部軍もまた感知していた。
「接近してます。接触まで10。」
10からのカウントは早く、接触してもダメージは無い。
CH-53 シースタリオン。
「駄目かッ!」
「・・・あれだけのデカイ船だ。無理も無い。」
矢を放った斉木はショックを隠しきれて居ない。
「次だ。次を用意しろ!」
吉岡はそれに気づきつつ催促に出る。
斉木は直ぐに我に返り、スティンガーの準備に取り掛かる。
一方の西としては確実に飛行石を叩かなければ意味が無いと理解していた。
「・・・このままでは所在をバラすだけだ・・・。」




