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時間があったので投稿します!
西たちが逃げるのは容易であった。
丁度、西達がγ離島を離れようとした頃朝日が上がってくるのが見えた。
「ははっ・・・もう朝か・・・。」
朝日が目に染み込み、少し目を細める兵士達。
と、同時刻 北部軍最北基地。
「・・・飛行隊は全滅か・・・。」
第二基地と最北基地との間で起こった深夜の戦闘は北部軍の大敗に終わった。しかし、新たに入った一報は北部軍の騎士団が南部軍の軍艦を一隻沈没させていたこと。
「・・・一段と今日は冷え込むな・・・。」
寒いのには慣れっこだったここ数日。だが、今日は特に全てが冷たい。
地上、空気。
そこへ一羽のペンギンが近づく。
「・・・?何故、こんなところにペンギン・・が?」
最北基地の兵士達の頭の上にはクエスチョンマークのみが並べられた。
「私は氷の女王の使いにして氷の女王から伝言を授かっている「我、ここに復活せんとする」」
えらく短文な伝言だった。しかし、兵士達にとってそれがどれほどの朗報だったかは表情を見れば一瞬で理解出来た。
「・・・遂に復活したか。」
「そうですね!隊長。これで北部軍にも反撃の光が見えてきました。」
□■
早乙女基地 管制室。
「氷の女王・・・?」
インセントより入電した、電報には氷の女王たる存在が復活したという文字。しかし、飯島達にとってはどういった存在なのか分からなかったため、直ぐにイノセントに連絡をとっていた。
氷の女王とは日本海北部に居城である氷の城に住む女王。冬以外の季節は常にその息を潜めているのだが、冬と成ればその姿を現せる。
神にも近い存在と比喩されているが、人間と同じ感性に会話まで出来る。最も近い神として北部では親しまれている。
武神としても有名で、過去に島国であるセルノーツはサウスアンゴルに侵攻を受けた。その時も丁度真冬でサウスアンゴルは歴史的な大敗をしているほど。
「なるほど・・・。こりゃまたすごいものが復活したわけだ。」
しかし、この世界には神ですら凌駕させるであろう存在がいる。
それがどう影響してくるのか・・・飯島たちにも皆目見当がつかない状態だった。
「西司令始め隊員全員が帰還しました。」
「司令。作戦を提示します。」
帰還に続き、飯島は直ぐに話を始めた。さすがの西も少し渋った顔をし始める。
「・・・我々、早乙女軍基地はイーストテンプル救助作戦、通称IT作戦を実行したい。」
ゴクリと生唾の飲んで周りはそれを見守る。
「・・・認めない。」
ガッ!
西のその発言と共に銃口がまず頭に。そして、周りの隊員たちも多くがそれを向ける。
「何のつもりだ?ヒデキ。」
ここで冷静さをなくすわけにはいかない。西はその意思をもとに静かに飯島に聞く。
「・・・今、銃口を向けていないやつは敵だ・・・。食堂に軟禁しろッ!」
西を始め、滝、白田、川田、斉木、もう一人女性隊員であった橋井ケイコも手錠をかけられ、食堂に移動させられる。
「イイんですか!?司令ッ!」
白田が西に向かって、少し怒り混じりに問いかける。
「・・・。」
しかし、西は無言で移送を受け入れる。
白田はそれ以上、何も言わなかった。
数時間後 食堂。
「司令。いい加減何かおっしゃたら如何ですか?」
川田が呆れ顔で黙りこくっている西に話しかける。どうも、彼が気にしているのは見張りに兵士。
「・・・私は、数日後。この基地を出ようと思う。」
「「「「「!?」」」」」
五人の背後に一斉に稲妻が走る。
「え!?いやいや・・・。」
斉木が慌てふためいた様子で西の顔を伺い始める。
「私は・・・自分が間違っていると思わない。確かに人命は大切である。だが、目的を失えば延命出来ても私たちは一生このままだ。死ぬまで。」
―我々の守る場所は此処では無い。愛する人のいる、日本国である。
今、ここでIT作戦などと展開するのも良いだろう。しかし、我々は目的を見失っていいわけでは無い。
西はそう静かに語る。そして、周りもそれに賛同し翌日。彼らは早乙女基地を後にする準備を始めた。




