FILE:35 γ離島到着
「・・・これが魔法。」
魔法の恩恵を受けた西以外の面々は確かに驚いた表情を見せている。
―なるほど、厳重だな。
木や動物に見えたそれらもあの島では兵士。その数は西たちを凌駕させるほどだった。
「ですけど、すごい数ですね。」
ざっと片方の岸だけで30は超える魂の数。
「あれだけ見ると潜入は大分と難しそうですね。」
「ふっ。だから米軍が開発した’あれ’を使うんだろう?」
西はバックパックから何やらスーツを取り出す。
「あ、ステルススーツですか。」
ステルススーツとは米軍が近年開発した、背景を前に投影させるスーツ。要は見えなくなるスーツと言った方が分かりやすい。
「なるほど。面白い。」
ウィニーはスーツを興味津々に見ている。
「よし、さっさと着替えてγ離島へ向かうぞ。」
翌晩。γ離島付近。
「おい。ありゃ何だ?」
一匹の恐竜らしき生物が洋上を漂う一隻のボートに気がつく。
「さぁな?だが、人間なんざ一人もいねぇぞ?」
別の恐竜はボートを見たが、敵らしき影は無い。
「報告はするか?」
「・・・。どうせフォースノーツのゴミだろう?放っておけ。」
獣達はもうそのボートには見向きもしなかった。
γ離島 岸。
「くっくっく。うまくいったようだな。」
獣の声など筒抜けだった西たちは獣たちが自分たちに気がついていないと知り、安堵と共に「してやったり」の感覚におぼれていた。
こっちに来て、事が思い通りに進まないことが多すぎるのも要因の一つと言えたのだが。
「取り合えず、魔方陣の解除はどうなんだ?」
魔法に関しての知識は一切持ち合わせていない西たちはウィニーに魔方陣の行方を聞く。
「・・・。中央の建物がヘル・エリア。あれを中心に蜘蛛の巣状に張り巡らされてます。ですが、実際には全てを解除すると逆にバレます。一本一本丁寧に解除していきます。」
「ん?だが、それじゃ、気づかれるのでは?」
切れたら見つかると考えるのが普通であったのか。西はそう問いかける。
「魔方陣は地面に埋め込まれてます。ですんで、事故なんかで切れることはちょくちょくありますよ?ですんで大丈夫です。」
すると、ウィニーは地面に何かの文字を書き、上から手をかざす。微かに光が放たれると地面一斉に紫の蜘蛛の巣の様なものが現れる。
「これが島の警備魔方陣です。踏むと、能力者が察知。直ぐに見つかります。」
「こんな簡単に見えるのか?」
いとも簡単にやってのけたウィニーの解除は逆に誰でも出来るものだと勘違いする西。
「違います。正確には術者の考案した専用の文字を脳で唱えないと駄目です。」
「んー。パスワードみたいなものなんですかね?」
科学の人間たちにはこれが手っ取り早いといわんばかりに白田が一瞬の訂正を加える。
しかしながらウィニーにはパスワードの意味が分からず、苦笑いをするのみだった。
数分後。
「さて、解除は完了しました。」
手を翳し暫し光を魔方陣に当てること数分。一本の陣に縦線が入り連動する付近の陣も活動を停止する。
「ヘル・エリアまで最低五回。ですけど、直ぐに修正する術者が来ると思います。急ぎましょう。」
森の内部に獣たちの姿は無い。恐らく、配備しすぎると魔方陣を踏みつけ逆に意味を成さなくなるからだろう。
ウィニーの後を付けつつ、解除を待ち、それが大よそ五回ほど繰り返された。
ヘル・エリア付近。
「・・・これがヘル・エリア。」
とは言えども囚人を投獄しておく場所。さらにヘル・エリアは実際には地下にあり、目の前にあるのは小さな入り口のみ。
「さて・・・。あのクソ野郎に話を聞きに行きますか・・・。」
ガチャリと扉を開けると薄暗い螺旋階段。下は暗くて見えない。恐らくそれだけでは無く相当数深いのだろう。
ところどころに松明があるが、それも着いたり消えたり区々であまり意味のあるものとはいえない。
「リヒト。」
ウィニーがそう呟くとポワっと小さな光が全員の目の前に現れる。
「お、おぉ・・・済まない。」
思わず礼の言葉が出る西。他の隊員たちも同じく敬礼をする。
「・・・ですけど深そうですね。」
沢木が手すり越しに下を眺め、少し恐怖染みつつ呟く。
「それだけ、厄介な奴らがいるってことだろう?」
同僚に当たる滝はごく当たり前だと言う様な返しをする。
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ヘル・エリア。最深部。
「・・・来た。」
大和は静かに頭上を見上げた・・・。




