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さぬき製麺丸亀店、異世界ダンジョンで営業中‼  作者: 七生(なお)。


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第11話 初めてのダンジョン案内

「いや~食った食った。それにしてもこんなうまいパスタと清浄な水で2,000ギルなんて、ほんと、セトーミさんは欲が無いんだなあ」


 料理は一人前が2玉使った大盛だが、相場よりかなり安いそうだ。

 それでもさぬき製麺で出している価格に比べて、三倍近く高い。水の補給も浄水器の水とはいえ水道水。いわゆるボッタクリ価格である。


 俺は申し訳ない気持ちになって、メスカルたちにサービスすることにした。

 記念すべき最初のお客様だということに加え、仲良くなって他の冒険者たちに宣伝してもらいたいという下心もある。


「お茶をどうぞ……あ、これはサービスですから」


 うどんを短く切ってカラっと揚げ、砂糖をまぶした『うりんとう』。さぬき製麺でも人気の商品である。


「え、これも付けてくれるのか!」

「カリカリで甘いです~♪」

「……美味い」

「セトーミさん、いくら何でもお菓子までサービスなんて割に合わないだろう」

「そんなことないですよ。それよりウチの店を冒険者のみなさんに紹介していただければ助かります」

「お安い御用だ。任せとけって。……ところでロゼ」

「う、うん……」


 ロゼは真っ赤な顔をしながら慌てて立ち上がると、俺に向かってペコリと頭を下げた。


「ううう……ごめんなさい。こんな異世界の料理を出せる人は、シャーマン様しかいません。失礼なこと言ってすみませんでした」

「いや、俺は大丈夫だから。気にしないでいいよ」

「いや、セトーミさん。俺からも、パーティーメンバーが悪態ついたことを謝らせてくれ。色々サービスしてもらったし、これはお礼の気持ちだ。受け取ってくれないか」


 メスカルはそう言うと、短い靴ベラのようなものを取り出した。


「アースドラゴンの逆鱗≪さかうろこ≫と呼ばれる特別な鱗だ」

「そんな貴重な物受け取れないですよ」

「俺たちもただ逃げ回ってただけじゃないってことさ。それよりセトーミさん、困ったことがあるなら、何でも俺に言ってくれな!」

「メスカルさんありがとうございます。また来てくださいね!」

「ああ。またいつか必ず来るよ」

「お待ちしています」


 メスカルたちを見送った後、【配送ボックス】にドラゴンのうろこを入れてみると、レベルが2から8にあがった。やはりかなり貴重な物だったらしい。


「こんなにしてもらって、メスカルたちに何か悪いな」

「あ、あのセトーミ様」

「どうかしたのか?」

「私も、セトーミ様にずっとよくしていただいてて……。何かお返ししたいのですが、何も出来なくて。せめて少しでもお役に立ちたいのですが……」

「クリスは店で働いてくれているじゃないか。それで十分だよ」

「でも……」

「なら、このダンジョンを案内してくれないか? もちろん安全な範囲で」

「喜んでご案内します!」


 こうして俺は、クリスに手を引かれ、ダンジョンに足を踏み入れたのだった。


 ◆


「セトーミ様、大丈夫ですか」


 俺を気遣い手を握ってくれるクリス。正直、女の子に手を引かれながら案内されるのは不本意だが仕方ない。

 クリスの掌は柔らかく、じんわり汗ばんでいる。俺を案内するために緊張してくれているのだろう。


「ここがダンジョンか……」


 中は思ったほど湿気も少なく思いの外過ごしやすい。どこかに通気口でもあるのか空気も清浄だ。

 クリスによると、このような住みやすい環境だからこそ、強力なモンスターが生まれるのだという。


「こちらです」


 俺はクリスの小さな手に引かれるまま、通路を左手の方へ向かう。

 石壁で覆われているが、時々直接岩が露出している場所もある。そして古い坑道跡らしく、思いの外入り組んでいた。これはひとりじゃ確実に迷いそうだ。


 しばらく進むと急に視界が開けた。サッカー場が入るくらいの大きさの広場なのだが、青空が見える。


「クリス、外に出たのか?」

「いいえ、ここもダンジョンの中ですよ。どこかの空につながっているそうです」


 所々に崩れかけた壁などもあり、何組かの冒険者パーティーがたむろしていた。


「ここは『ベース』と呼ばれる所です。危険な魔物がいないので冒険者たちの休憩所になっているんです私はこの道を通ってやって来ました」


 クリスが指さす先に、俺たちが通って来たのとよく似た通路が伸びていた。他にも何本もの通路が通っている。この辺りは、多くの通路が交わる場所らしい。


 床には、たき火の跡など人の痕跡がそこかしこにみられる。多くの冒険者たちがここを利用しているのだろう。


「そういや、ダンジョンの中で火なんて使っていいのか?」

「大丈夫です。ただし火を燃やす燃料がありませんから、十階層ではあまり火を使う人はいませんね。ダンジョンでは、温かい料理はそれだけでごちそうなのです」


 クリスによると、たき火ができるのは、かなり恵まれたパーティーの証だそうだ。多くの冒険者たちは、燃料の用意まで手が回らないという。たき火の残りやゴミなどは、スライムたちがきれいにしてくれるのだとか。


「それなら、俺もスライムを飼えないかな」

「スライムは臆病なので普段は隠れていたり、石や壁に同化していたりするんです。こちらから捕まえるのは難しいですね」

「この通路の先はどうなっているんだ?」

「しばらくは狭い通路が続きますが、途中から急に通路が広くなります。大型の魔物が徘徊していますので危険です」


 俺たちは物陰に身を隠しながら、周囲の様子を伺った。何組かの冒険者パーティーを見たのだが、こちらからは接触はしなかった。どのパーティーも、クリスの【危険感知】のスキルにはひっかからなかったのだが、とにかく知らない人に対しては警戒するというのがダンジョンの心得らしい。



 その後、小一時間かけてダンジョンの10階層を歩き回った俺たちは、手をつなぎながら、というか俺がクリスに手を引かれながら、慎重に店まで帰ってきたのだった。


 何も起こってないにもかかわらず、どっと疲れた。


「ふう……。とにかく、クリスのおかげでダンジョンの様子が分かって良かったよ。ホントありがとう。しかしこれだけ冒険者がいるんだから、店を開いてもどうにかなりそうだな」


「は、はいセトーミ様。はうう……」

「どうしたんだクリス」

「す、すいません」

「え?」

「あ、あの……手が……」

「ご、ごめん!」


「……あ。」


 クリスがハッとしたように手を引こうとするが、俺はまだ握ったままだった。


 俺に対してクルリと背を向けるクリス。ひょっとして俺の厚かましい行動に怒っているのかも。


「クリス、ごめん」

「…………」


 耳まで真っ赤にしたクリスの後ろ姿は、肩が小さく震えていたのだった。

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