迎えに来ない約束と、遅れてきた誰か
◇◇◇
「いい子でいたら迎えにくるからね。」
母さんはそう言って家を出て行った。
父さんは僕を見ないように僕に謝っていた。変なの。
親友に話したら黙って優しくしてくれたけど、突然転校しちゃった。
別に不幸だとは感じなかったかな。
だっていい子にしてれば母さんは迎えに来てくれるって信じてた。
だからいい子でいようと僕は頑張っていた。
それに、一年経たずに父さんが再婚して新しいお母さんができたんだ。
お母さんはとても美人で優しいんだ。
妹と弟ができた後、血のつながらない僕にも優しくしてくれる。
(美人すぎて母親としてみることが難しいことは秘密だ…)
腹違いの妹弟もできて家は賑やかになった。
この家に不幸な人間なんていないって僕は信じてる。
…けど、最近になってやっと気づいたんだ。
母さんが言っていた「迎えに来る」は嘘だったんだって。
僕と父さんは母さんに捨てられたんだって今になって気づいたよ。
僕ってよくまわりにバカって言われるんだけどさ、バカでよかったって初めて思った。
別に母さんを恨んでないよ。
僕には理解できない事情があったのかもしれないし。
恨んでも無意味だってことは知ってるからね。
そう思ってたけど、恨んでたのかな。
昔の僕とビート君が重なった瞬間、僕は感情的になった。
事情があったことは重々承知だけど、それでも僕は許せなかったんだ。
◇◇◇
静かな村の中。人の気配が全くない。
「瘴気人は、もういないのか。」
ローブの裾が泥で汚れないように足元に気を付けながら進む。
「村人は全員避難、今なら空き巣し放題だね。」
一足遅かったようだ。
やはり後手に回ると遭遇できない。
何人か、瘴気人に襲われたようだ。
ご冥福をお祈り申し上げます。そしてごめんなさい。
ここを曲がれば村の入り口か。
ぐるっと一周したし、そろそろ引き上げよう。
村人が戻ってきてしまう。
ああ、入り口付近にも被害者が二人。
見慣れてはいるが辛い光景だ。
被害者二人の脇を抜けようと足早になった。
すると、うめき声が聞こえた。
間違いない、男の子がうめき声をあげたのだ。
「君は運が良いね。」
そっと彼の手に触れる。
「君は、異世界から来たのかい?懐かしい服だね…」
自然と触れた手に力がこもる。
「君の旅路が良いものになることを祈っているよ。」




