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【全年齢版】部長と私の秘め事  作者: 臣 桜
第三回女子会

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バカラ

 ブラックジャックは、カードの合計が二十一に近い人が勝つシンプルなゲームだ。


 最初にディーラーさんからトランプを二枚配られ、足りないと思ったら一枚さらにもらう事ができる。


 ディーラーさんは合計点数が十七以上になるまでカードを引き、プレイヤーと勝負する。


 なお、二十二以上になると負けで、同点は引き分けだ。


 エースは1、2から9はそのまま、10以上の絵札は10として数える。


 二十一ぴったりを〝ブラックジャック〟と言って無条件で勝ちになるけれど、ディーラーさんも二十一だった場合は引き分けだ。


「神通力よ、きたまえ……」


 私はうんうんと唸っていいカードがくるよう祈り、欲張って三枚目をもらっては、二十二以上になってしまう……を繰り返していた。


 尊さんと涼さんは慣れているからか、追加のカードをもらわない引き際を弁えている。


 私と恵がおっかなびっくりプレイしている横で、彼らは楽しそうに遊んでいた。






「ちょっと……、頭使わない奴やりたいです」


 期待と不安、そして安堵と落胆を繰り返し、頭の中はショート寸前だ。


「んじゃ、スロットでもやるか」


「スロットって、パチンコ屋さんにもある奴ですか?」


 私はテレビに出ていた芸人さんの真似をして、親指でボタンを三つ押す真似をする。


「パチスロは、基本的に同じ機種ならどの台でも確率は同じなんだ。多少、出やすい台もあると思うけどね。あと、現金をメダルに変えて、それで遊ぶ感じ。それに対してカジノのスロットは小さな当たりが沢山出る台と、当たる確率は低いけど大当たりの出る台とがあって、現金を入れるのが主流だね。あと、ボタンを押して自分のタイミングで止める事はできない。機械がリールを止めるのを待つだけ」


 涼さんに説明され、私と恵は「ふーん」と頷く。


「プログレッシブジャックスポットっていうのが、大当たりのマシーンなんだが、他のプレイヤーのゲームで勝率が積み上げられて、ネットワークで繋がった結果、どこかで大当たりが出る仕組みだ。勝った時は数十億とかだな」


「うぇー!」


 私たちはあまりの金額にビビり、手を握り合って後ずさる。


「地道にコツコツ……だよね?」


「んだ」


 そのあと、何回かルーレットで遊んだけれど、私も恵も徐々に疲れてきてしまっていた。


 普段賭け事はしないし、リスクの高い事と思っているので、慣れない世界に身を置いて気疲れを感じている。


 勝った時は勿論嬉しいけれど、当たりかハズレかでドキドキするのと、ガクッとした時の落差に、心がついていかない。


 普段、なるべく感情をフラットにして生きようとしている分、気持ちが上下するのに疲れてしまったようだ。


「残ってるチップ、尊さんにあげるので遊んでください」


「私も、涼さんにあげます」


 私たちからチップを受け取った尊さんと涼さんは、顔を見合わせる。


「疲れたなら帰るか?」


「や、見てます! 格好良く勝ってくださいよ!」


「自分がプレイするのは慣れなくて疲れましたが、人がやってるのを見る分には大丈夫です」


 恵に言われ、涼さんはニコッと笑った。


「じゃあ、最後に有り金全部はたいてバカラやってくか!」


「だな」


「バカラって聞いた事あります。……お決まりの奴をやりますが、ガラスアートじゃないですよね?」


 そう言うと、尊さんはクスクス笑ってバカラのテーブルを示す。


「ま、カードゲームだな。動く金が大きいから〝カジノの王様〟とも呼ばれてる。ブラックジャックは21に手札を近づけるゲームだが、バカラは9に近い人が勝ち。加えて実際に俺らが参加するんじゃなくて、ディーラーが一人でカードを配り、プレイヤーとバンカーのどちらが勝つか、または引き分けかのどれかに賭けるゲームだ」


「予想ゲーム?」


「そう」


「恵ちゃんはどっちだと思う?」


 涼さんが尋ねたけれど、恵はポンポンと彼の腕を叩いた。


「私のお小遣いは全額涼さんに託しました。勝ったら肩揉んであげます」


「よし! 勝つぞ!」


 恵、上手く回答を避けたな。


 ……というか、なんだかこのニコニコ涼さんを見ていると、どこが〝凍土の帝王〟なのかな、と思ってしまう。


 でも涼さんが私のツンツンしていた時代を知らないように、私が彼の他の面を知らなくてもおかしくない。むしろ当たり前だ。


 多分、こうやって接している涼さんが、本当の彼なんだと思う。


 親友と笑い合って、嬉々として変わった物を食べて、恵の言葉で一喜一憂する三十二歳の男性。


 きっと彼は、上等なスーツを着てパーティー会場で笑っているより、楽な格好をして自分の足で色んな所を歩くほうが好きなのだと思う。

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