カフェへ
「しゅきぴ」
笑ったあと、私は尊さんに抱きつく。
「…………この島の女神さま達に嫉妬されるぞ」
クスクス笑った尊さんに言われ、私はハッとして顔を上げると、彼の脚に自分の脚を掛けて転ばそうとする。
「おいっ」
「女神さま! 今の、抱きついてませんから! 技です! 技! この色男をとっちめますから! ……きゃうっ!」
私はどこで見ているか分からない女神さまに言い訳し、逆に尊さんに脚を引っかけられて空を仰ぐ。
すると視界に緑で生い茂った木々の葉が映り、その合間から木漏れ日がチラついて私は目を瞬かせた。
「……きれー……」
私は尊さんに背中を支えられたまま、空に向かって手を伸ばす。
「……光を浴びると、産毛が金色に見えるな」
呟いた尊さんの声を聞き、私はハッとして姿勢を戻す。
「産毛! 生えてきた! お手入れ行かないと!」
「産毛ぐらいなんだよ。生やしておけばいいだろ」
「駄目なの! 産毛許さん! ファンデのりが悪くなる!」
「俺なんて髭生えるよ……」
「生まれたままのミコでいいんですよ……」
「なんかその言い方やらしいな。でけぇ貝殻の中に立って、胸と股間を隠さないと」
「ヴィーナスミコ!」
私はケラケラ笑い、帽子を被り直すとまた彼と手を繋いで歩き出す。
「尊さんだったら、隠さないで堂々と仁王立ちしてそう。両手は腰に」
「神話になった変態かよ……」
「ゼウスとかに星にされてそうですね」
「ヤメロ……」
そんな会話をして歩いていたら、すれ違った女性二人組に「美男美女」とボソッと言われてしまった。
「……んふふ……」
「喜ぶな」
少し俯いて帽子の陰でニヤついていると、尊さんがクスクス笑う。
「手厳しいミコですね。私の事、可愛くないんですか?」
「可愛いに決まってんだろ」
「にゅっ」
からかうように言うと、尊さんは片手で私の頬を掴んできてタコの口になってしまう。
「にゅー」
私は頬を掴まれたまま、ハンディファンの風を尊さんに送る。
「コラコラ。いいから、自分に風送っとけ。暑いだろ。俺は自分の持ってるから」
尊さんは手を放すと私に風を向け、また手を握って歩き出す。
やがて私たちは目的のカフェに着き、木製の歴史深そうな店構えを写真に撮る。
内装は白とウッド調で整えられている印象で、スッキリナチュラルな感じだ。
「いい匂い」
私はお店の中に充満するコーヒーのいい香りに鼻をヒクつかせる。
オーダーはカウンターで注文してから、できあがった物を席に持っていくスタイルだ。
尊さんが気にしていたコーヒー豆は一番と二番があり、それぞれブラジルとタンザニア、コロンビアとブラジルとグァテマラのブレンドらしい。
どうやら大手ECサイトでも売っているみたいだけど、尊さんは旅のお供に買いたいらしい。
尊さんはアイスコーヒーを頼み、私はコーヒーサンデーを頼んだ。
商品を小さな木製のトレーに載せた私たちは、空いている席に座っていざ実食する。
オリジナルロゴの入ったプラスチックカップには、底にエスプレッソの入ったコーヒーゼリーがあり、その上にソフトクリーム、上に載っているトッピングはわらび餅だ。
「んー!」
ソフトクリームはあっさりしているけれど濃厚だ。
ちなみにソフトクリーム単体も売っていて、搾り口の形は丸形だ。最近のソフトクリームは色んな形があるけれど、丸形のほうが角がなくて溶けにくいらしい。
あと、丸っこくてお洒落とか可愛いとかで、女子人気の高いイメージがある。
でもオーソドックスな星形のほうが、綺麗に巻けるみたいだ。
待っているお客さんもいるのであっという間に完食し、コーヒー豆も買ってお店を出たあと、本腰を入れてお土産探しを始めた。
先ほどはまだ用事があったので買い食いに控えておいたけど、さっきのお店で揚げもみじの揚げたてキットを買う事にした。




